心理カウンセラー・大嶋信頼さんの著書『最低限の人間関係で生きていく』では、職場の厄介な人間関係に悩む人に向けて、ストレスを溜めずに自分らしく働くための処世術を提案しています。
その中から一部抜粋し、職場にはびこる「マウンティング」の心理的背景と、意外なほど効果的な対処法を紹介します。
あの人はなぜマウントを取るのか?
あなたの職場に、マウントを取ってくる先輩や同僚はいませんか?職場のマウントとは、威圧的な言動によって、自分の優位性を相手に認識させようとする無分別な行為です。
その多くは、承認欲求が強い、自分に自信がない、負けず嫌い、劣等感を感じている……などの心理的要因が関係しています。
適当に相槌を打って、聞き流すこともできるでしょうが、それではこちらのストレスが蓄積するだけでなく、相手は何度も同じことを繰り返すことになります。
そんな人に対しては、「完全無視」が有効な対策となります。
相手が職場の上司や先輩であれば、下手に反論したり、反撃をすると、後で面倒なことになります。
見ないフリや、聞こえないフリをするのではなく、何も反応せず、完全スルーすることが有効な対抗手段となります。
無言で相手にダメージを与える「受動攻撃」
相手を完全無視することは、「受動攻撃」を意味しています。受動攻撃とは、自分の意志をハッキリと伝えずに、相手にダメージを与えるような無抵抗な攻撃を指します。
嫌いな人からのメールを既読スルーして、無言のまま相手に不快な思いをさせるとか、苦手な相手との約束をわざとすっぽかして、遠回しに相手を困らせるなど、自分の手を汚さずに、人を欺く……という手口です。
見方によっては、陰険な攻撃ともいえますが、上司や先輩とムダなトラブルを起こさないためには、無抵抗主義を貫くことが最良の選択といえます。
マウントを取るという行為の裏側には、嫉妬の感情が隠れています。
相手が「自分よりも優れている」と感じているから、マウントを仕掛けるわけで、下に見ているのであれば、見向きもしないはずです。
そんな相手から完全無視されると、マウントを仕掛けた側は、動揺して、脅威を感じるようになります。
相手が急に多弁になったら、効果が出ている証拠です。
この状態になったら、相手はシッポを巻いて退散しますから、自動的に適切な距離を取ることができます。
上司や先輩を完全無視するためには、相当な勇気と覚悟が必要だろう……と思うかもしれませんが、怒りの感情があれば、意外と簡単に実行できます。
相手が下手に出てきたら、きちんと対応すればいいだけのことですから、期間限定の対処療法と考えれば、ムダなストレスを感じなくて済みます。
面倒な人との関係を最適化するためには、自分から積極的に動かなくても、相手が勝手に距離を置いてくれる方法もあるのです。 大嶋信頼(おおしま のぶより)プロフィール
心理カウンセラー、株式会社インサイト・カウンセリング代表取締役。米国・私立アズベリー大学心理学部心理学科卒業。FAP療法(Free from Anxiety Program 不安からの解放プログラム)を開発し、トラウマのみならず幅広い症例のカウンセリングを行っている。アルコール依存症専門病院、東京都精神医学総合研究所等で、依存症に関する対応を学ぶ。人間関係のしがらみから解放され自由に生きるための方法を追究し、多くの症例を治療している。カウンセリング歴31年、臨床経験のべ10万件以上。著書にベストセラー『「いつも誰かに振り回される」が一瞬で変わる方法』(すばる舎)のほか、『無意識さん、催眠を教えて』(光文社)など多数。