資産運用

資産1億円を目指すにはどのような運用ポートフォリオが考えられる?

「資産1億円を目指す」ことを目標にするとはいえ、あまり大きなリスクを取り過ぎることは避けたい場合、どのようなポートフォリオで運用するのがいいのでしょうか。引き続き、家計の見直し相談センターの代表で、ファイナンシャル・プランナーの藤川太さんにアドバイスしてもらいましょう。

All About 編集部

「資産1億円を目指す」ことを目標にするとはいえ、あまり大きなリスクを取り過ぎることは避けたい場合、どのようなポートフォリオで運用するのがいいのでしょうか。引き続き、家計の見直し相談センターの代表で、ファイナンシャル・プランナーの藤川太さんにアドバイスしてもらいましょう。

外国株式一択でなくても1億円を目指せる!

もし定期預金や個人向け国債などの安全資産だけで1億円を目指すには、かなりまとまった金額を投資することに加えて、ある程度の期間も必要です。

ですが、なかには「月数十万円程度の積み立てで、20年くらいで1億円を目指したい」と考える人もいるかもしれません。藤川さんは「リスクを取り過ぎず、でも増やすことも考えながら1億円を目指すのも無理なことではありません」と話します。

ここ数年、米国を代表する株価指数であるS&P500指数に連動する投資成果を目指すインデックス・ファンドや、世界の47の国と地域(先進国23カ国、新興国24カ国)に分散して投資する「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(オルカン)」に連動する投資成果を目指すインデックス・ファンドが個人投資家の人気を集めていました。その背景には、S&P500指数やオルカンの値動きが好調だったことがあります(図表1)。
(図表1)S&P500指数の推移

(図表1)S&P500指数の推移

このうちS&P500指数の過去20年間の年率平均リターンは約8%、オルカンは6%強とされます。(配当を考慮するとそれぞれ10%を超えています)

ちなみに、資産が2倍になる期間が簡単に分かる「72の法則」(72÷金利≒お金が2倍になる期間)を使って考えると、年率期待リターンが8%ならば9年、6%なら12年で資産が2倍になる計算です。S&P500やオルカンに連動するインデックス・ファンドが人気を集めていたのも頷けるでしょう。

トランプ関税でスタグフレーションが起きるリスクも……

ですが、ここへ来て状況が少し変わりつつあります。

「2025年1月に米国でトランプ氏が大統領に就任しました。そのトランプ大統領は4月2日に、貿易相手国の関税率や非関税障壁を踏まえて米国の関税を引き上げる『相互関税』として、日本には24%の関税を課すことを発表し大騒ぎになりました。その後、柔軟に交渉する姿勢を見せたことで落ち着きを取り戻しつつありますが、いつ再び混乱に陥るか分からない情勢です。貿易相手国・地域ごとに設定した上乗せ関税分を中国を除いて90日間停止しましたが、 一律10%の関税は維持されるため、世界経済はもちろん米国経済への影響も心配されています。最近では、トランプ氏が2025年8月から日本に対して25%の関税をプラスする、という方針が報道されています」(藤川さん)

それだけではありません。米国では新型コロナウイルスの感染拡大から経済活動が急回復したことによって、2021年からインフレが加速していました。物価上昇が続くと家計が圧迫され、消費者が買い控えをし、結果として景気が悪化する可能性もあります。米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)はインフレを沈静化させるべく、2022年4月以降に大幅な利上げを行いました。その後、インフレが落ち着きを見せたことから、2024年9月からは3会合連続で利下げを行っています。

「関税が引き上げられて輸入する原材料や製品の価格が上昇すると、それが商品の価格に転嫁されて物価が上昇する可能性もあります。また、関税引き上げの影響によって成長率が鈍化し、景気が後退することも心配されています。そのため、インフレと景気後退が同時に起きるスタグフレーションが懸念されているのです※2025年7月17日時点」(同)

国債の金利が株式益回りを上回る逆転現象が起きた

「通常の場合、投資家はリスクの高い資産である株式に対しては、安全資産である国債よりも高いリターンを求めます」(藤川さん)

ですが、コロナ禍からの景気回復の過程で株式に多くのお金が集まったことで、企業の利益の伸び以上に株価が上昇して「株式益回り」が低下しました。ちなみに、「株式益回り」は、1株当たりの純利益を株価で割って計算され、株価が割安か割高かを判断する指標とされます。

一方で、物価上昇の勢いが衰えないことで国債利回りが上昇しました。

「その結果、国債の利回りが、株式の益回りを上回る逆転現象が起きました(図表2)」
(図表2)米国では債券(安全資産)の利回りが株式の益回りを上回る「逆転現象」が起きた 出所:FRB、S&P

(図表2)米国では債券(安全資産)の利回りが株式の益回りを上回る「逆転現象」が起きた

国内外の株式と債券に均等投資し、リスクを抑えながらリターンを狙う

長い目で見れば、米国経済は成長軌道に戻り、S&P500やオルカンに連動するインデックス・ファンドも上向くことが期待されます。ですが、しばらくは不安定な値動きが続く可能性もあります。

「リスクを取り過ぎないためには、この数年注目されていた外国株式だけに投資するポートフォリオではなく、国内外の株式と債券に均等に投資してリスクを抑えながらリターンを狙うことを考えるのがよさそうです」と藤川さんはアドバイスします。

こう聞くと、「国内外の株式と債券に分散投資したら、リターンが低くて、なかなか資産が増えないのでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし、日本の公的年金制度における年金積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、国内外の株式と債券に均等投資するポートフォリオで、過去24年で年率4.2%のリターンをあげています(図表3)。
GPIFの基本となるポートフォリオ

(図表3)GPIFの基本となるポートフォリオ

図表4は、月々20万円ずつ積み立てて、年率4%で運用できた場合の資産の推移を表したものです。この場合、25年目に資産1億円を達成できます。図表5は、この積み立てを行いつつ、手元資金のうち500万円を年率4%で運用した場合のシミュレーションです。こちらでは23年目に資産が1億円を超えています。
(図表4)積立投資シミュレーション

(図表4)積立投資シミュレーション


「計画的に資産形成すれば、リスクを取り過ぎなくても資産1億円を目指すことは無理ではありません」(藤川さん)
(図表5)積立+貯蓄(500万円)運用

(図表5)積立+貯蓄(500万円)運用

なお、図表4、図表5のシミュレーションは、あくまで仮定の話です。必ずこうなるとは限らないことにも留意してください。

教えてくれたのは……
藤川太さん
 
 

 

「家計の見直し相談センター」代表、CFP認定者、宅地建物取引士。All About「資産運用」ガイド。「家計の見直し相談センター」で10年以上にわたり3万世帯を超える家計の見直しを行ってきたFP。資産運用、家計管理、マイホーム購入、不動産投資などに詳しく初心者でもお金を貯める・増やせるようになる方法をアドバイスしています。

主な著書に『やっぱりサラリーマンは2度破産する』(朝日新聞出版)
『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』(プレジデント社)
『1億円貯める人のお金の習慣』(PHP研究所)ほか多数

取材・文/大山弘子
 
【編集部おすすめの購入サイト】
Amazonで資産運用の書籍をチェック!楽天市場で資産運用関連の書籍をチェック!
【編集部からのお知らせ】
・「家計」について、アンケート(2025/7/31まで)を実施中です!

※抽選で20名にAmazonギフト券1000円分プレゼント
※謝礼付きの限定アンケートやモニター企画に参加が可能になります
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

カテゴリー一覧

All Aboutサービス・メディア

All About公式SNS
日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
公式SNS一覧
© All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます