貯蓄

純金投資、どれくらい買うべき?

「貨幣は自由に印刷できるけれど、ゴールドは流通量に限りがあるから価値が薄れない」と言います。最近はインフレも激しく、日に日に貨幣の価値が薄れています。インフレ対策として純金投資が注目されていますが、どれくらい買うのがベストなのでしょうか?

中原 良太

執筆者:中原 良太

エビデンスに基づく資産活用&マネープランガイド

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先日、読者から以下の質問が届きました。

「ゴールドの割合をどこまで高めるのがよいか?」

ゴールド(純金)の値段がうなぎ上りですね。純金上場信託<1540>は5年で2倍以上に値上がりしています。

「貨幣は自由に印刷できる紙屑だけれど、ゴールドは流通量に限りがあるから価値が薄れない」と言います。

最近はインフレも激しく、日に日に貨幣の価値が薄れています。インフレ対策として純金投資が注目されていますが、どれくらい買うのがベストなのでしょうか?

ゴールドの価値

ゴールドの価値は、なんといっても「流通量が増えないこと」と「化学的に安定している」、それと「美しいこと」の3つでしょう。

まず、純金の埋蔵量には限りがあります。

純金の総採掘量(これまで使用してきた量)は19万トンといわれます。また、埋蔵量(これから採掘できる量)は7万トンだそうで、合わせて26万トンです。

これを大きさに換算すると、高さ約24m(だいたい野球のスクエアくらいの大きさ)の金の立方体に相当するそうです。

世界中から純金をかき集めても、野球場のホームベース~一塁~二塁~三塁の正方形にすっぽりおさまる量しかありません。紙幣のように自由に印刷もできないので、それだけ希少といえます。

次に、純金は化学的に安定しています。

エジプトのツタンカーメンのマスクが黄金の輝きを見せていることからも分かるように、食べ物のように腐らないし、鉄のように錆びることもありません。硫酸をかけても溶けません。

最後に、純金は宝飾品に使われるくらい美しいです。

つまり「見た目が美しく、誰もが認める価値がある」のと、「自由に作れないから希少性が高い」こと、「劣化もしないため、価値が薄れにくい」ことが、純金の価値だと思います。

ゴールドの算出コスト

では、純金を算出するにはどれくらいのお金がかかるのでしょうか。

世界黄金協会(WGC)が公表する年間維持コストであるAISC(All-in Sustaining Cost、操業維持、資本保全、閉山準備などを含む包括的コスト)は、2024年第3四半期時点で1オンスあたり1456ドルなのだそうです。単位を円/gに直すと、6800円/gくらいに相当します。

10年前までは算出コストが1オンスあたり900ドルだったのですが、10年で1.6倍に増えました。

純金の値上がりペースは、算出コストよりも早いです。コストだけでは説明がつかず、「高値でもいいから買っている誰かがいる」のだと思われます。

2025年5月16日時点の店頭小売価格は1gあたり1万6707円なので、算出コストの2倍以上の値付けで、これは過去10年から見ると高めの水準です。

貨幣供給量とゴールド価格の関係

ここで、アメリカの貨幣供給量(M2)とゴールド価格の関係を見てみましょう。次のグラフをご覧ください。
 
M2÷純金のチャート(画像元:TradingView)

M2÷純金のチャート(画像元:TradingView)

これは、M2をゴールド価格で割ったものをグラフにしたものです。

「貨幣供給量とゴールド価格が比例する」場合、このグラフはずっと横ばいになるはずです。

とは言え、ゴールドが人気になったり不人気になったりするので、現実には違った動きになります。

貨幣供給量が多い割にゴールド価格が安くなるとグラフが高値をつけ、逆に、貨幣供給量が少ない割にゴールド価格が高くなると、グラフは安値をつけます。

1970年以降、このグラフは2 Billion ~ 20 Billionの間をいったりきたりしています。純金の価値そのものは安定していますが、投資家心理は「移り気」なことが分かります。最近の底が6 Billionで、リーマン危機の直後に純金投資がブームになったのがこの辺りでした。

前回の純金ブームは2012年に終わり、それから10年ほど低迷期が続きました。今のM2/ゴールド比は当時と同じくらいの水準なので、アメリカが巨額の財政出動でもしない限り、そろそろピークアウトしそうだな、とも読み取れます。

純金投資、どれくらい買うべき?

つらつらと書きましたが、ここまでを踏まえた上で、「じゃあ、純金投資、どれくらい買うべきか?」を考えてみます。

ゴールドを保有することのメリットとしては、
  • 貨幣より価値が薄れにくい
  • 値上がりする可能性がある
という2点があります。一方で、デメリットとしては、
  • 純金の価値は一定でも投資家は移り気
  • 高値をつかむリスクがある
この2点がある点も見逃せません。

言うまでもなく「デメリットの方がメリットより大きい」のならば、1円だろうが持つ意味はありません。

一方、「メリットの方がデメリットよりも大きい」と感じる場合は、
  • 純金以外の投資先はどれだけ魅力的か?
を比較・検討した上で、どれくらい買うかを考えるとよいと思います。

株がバブル、不動産がバブル、債券もバブル、でも純金が安い!みたいな状況だったら、全財産の3分の1くらいを純金に当ててもよいかもしれません。

一方、株が割安、不動産も割安、債券も割安、でも純金は普通、みたいな状況だったら、わざわざ純金を買うメリットも薄い気がするので、資産の1割でも多すぎる気がします。

純金は一種の「インフレ連動債(インフレに連動する債券)」みたいな投資商品ですから、ガツガツ儲けるようなものではないでしょう。だから、足元の純金ブームのような値上がりは続かないと思います。

とはいえ、価値を保存に役立つので、「貨幣を持つリスク」を分散したい場合は、自分なりに「これくらい持っておくのがよさそうかな」と匙加減を決めて投資するとよいかと思います。
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