韓国

実は“日本ならでは”? 韓国でも話題になったドキュメンタリー映画に見る「日韓の小学校文化の違い」(3ページ目)

第97回アカデミー賞短編ドキュメンタリー賞にノミネートされた山崎エマ監督の映画『小学校 ~それは小さな社会~』。韓国でも映画賞を受賞している。韓国の人はこの作品のどんなところが印象的だったのだろうか。そしてそれはなぜだろうか。

松田 カノン

執筆者:松田 カノン

韓国ガイド

もっと知りたい、韓国の小学校

プールがある小学校は韓国にはほとんどない

プールがある小学校は韓国にはほとんどない

以下はドキュメンタリーでは登場しない学校関連のトピックだが、興味深い(かもしれない!)韓国事情でもあるので引き続き5つ紹介しよう。

学校に携帯電話、財布を持参
校内では基本的に使用不可だが、携帯電話を持参して登校するのが一般的。下校後そのまま塾に行く子どもが多く、財布も持参可。デビッドカードを所有している子どもが多い。

先行学習するのが当たり前
就学前から学習塾に通う子どもが多く、学校の授業はほぼ復習という生徒も多数。特に数学と英語(3年生から履修)は1学年分以上の先行学習を済ませている生徒がいても珍しくない。塾に通っていない子どものほうが少ないので、下校後毎日友達と遊べる、という子どもは少なめ。

部活の種類は少ない。有料の放課後授業あり
学校が強化・支援する運動部が1~2つほどあるが、各学校で種目は決まっている。活動は週2~3回ほど。複数の選択肢の中から生徒が選んで参加できるものに「放課後授業」がある。外部から講師を呼んで開催する有料の講座だ。なわとび、バドミントン、コンピューター、歴史、美術、漢字、バイオリン、フルート、ロボット科学、囲碁など、種類もさまざま。参加は自由。

保護者同伴の旅行および生理痛による欠席は出席扱いとなる
「保護者同伴体験学習」という名目で、事前申請と事後報告書を提出すれば、年間15~20日まで(自治体による異なる)出席扱いとなる休暇の取得が可能。また、小学校でも月1回まで生理休暇が認められており、申請書を出すことで出席扱いとなる。

プールはなく、エレベーターはある
施設に関する大きな違いといえば、プールの有無。プールがある小学校は韓国にはほとんどない。2014年のセウォル号沈没事件以降、水難事故の対処法を学ぶ必要性が提起されたことで、2019年から水泳の授業が必修となった。実技の授業時間は7時間ほど。学校の近くにある市民プールや水泳塾を利用して授業が行われる。

また、2008年に施工された「障害者差別禁止法」施行後、エレベーターを設置する小学校が増加しており、主に体調不良や骨折、車椅子の使用など、階段の利用が困難な子どもたちに都度利用が許可されている。

先生と生徒の関係性に関しては日韓で共通する点が多い印象だが、韓国ならではの事情も多くあるので、またいずれ機会があれば執筆したい。本稿では特に日本とは違いが大きい部分を紹介したので、韓国の人が『小学校 ~それは小さな社会~』を興味深く鑑賞していることに「なるほど」と思っていただけたのではないだろうか。

ずいぶん長くなってしまったので、最後に個人的な感想を一言だけ。筆者も、子どもたちも、日本の学校を経験したからこその“気付き”があったわけで、そのことは普段意識せずとも日々の生活に生きているのだと、『小学校 ~それは小さな社会~』に出会い、そのことに気付くことができてよかった。最近しみじみとそう思っている。

<参考>
映画『小学校 ~それは小さな社会~』 公式Webサイト
※EBS(韓国教育放送公社)は韓国の教育専門の公営放送局
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