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乱高下相場の今こそ考えたい、米国債投資の魅力

新NISAの主役である「投資信託」よりも値動きを抑えながら、安定して定期的な収入がほしいならば「米国債」に投資をするのも1つの手。世界一安全な債券でありながら、金利が高い米国債の魅力を解説。

頼藤 太希

執筆者:頼藤 太希

資産運用・節税ガイド

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乱高下相場の今こそ考えたい、米国債投資の魅力

乱高下相場の今こそ考えたい、米国債投資の魅力

新NISAの主役は投資信託だが、米国債投資も併用しよう

新NISAで多くの人が投資する商品に「投資信託」があります。中身にもよりますが、手軽に、複数の地域・資産・銘柄・通貨に分散投資できる便利な商品です。

しかし、世の中に完璧な商品はありません。投資信託であっても元本割れはします。

2025年は「トランプ関税」による先行き不透明感から、株式相場が下落基調となっています。ドル円の為替レートも円高基調となっていて、「オルカン」や「S&P500」に投資信託を通じて投資している人は、資産を減らしている状況となっています。

「NISA損切り」なんて言葉もSNS上で飛び交いました。現在も株式相場は乱高下が続いています。

より値動きを抑えながら、安定して定期的な収入がほしいという目的であれば、投資信託よりもベターな商品があります。その1つが、「米国債」です。

例えば、年金で生活する人にとっては、年金以外に定期的に収入があれば、生活が豊かになります。現役世代であっても有益な投資先です。

将来のために資産形成することが全てではありません。勤労収入とは別に定期的な収入があれば、今の生活の充実度を高めるために使えます。

ところで、米国債も保有中に、金利変動や為替変動によって価格変動はします。

しかし、米国株など株と比べて値動きがマイルドであり、保有中に購入時点の利率に基づいた利子が定期的に受け取れます。償還日(満期)が来たら、額面金額が戻ってきます。世界一安全な国の債券であるにもかかわらず、ドルベースで高水準の利回りが得られるのです。ドルを円に戻すタイミングは自分で選べますので、ある程度為替リスクをコントロールすることもできます。

いわゆる「トランプショック」の影響は、株式市場だけでなく、為替や米国債にも影響が出ています。

ドル円は、3月28日時点1ドル149.81円から、4月22日時点で1ドル142.70円と7円程度円高になっています。

米国債10年利回りは、3月28日時点で4.251%から、4月22日時点で4.400%(+0.149%)。米国債30年利回りは、3月28日時点で4.63%から、4月22日時点で4.88%(+0.25%)と上昇しています。

株・債券・通貨と全体を通じて、「米国売り」になっている状況であることが分かります。

しかし、米国債に投資をする絶好のタイミングが来たとも言えます。

世界一安全な債券でありながら、金利が高く、そんな中で円高となった今、魅力度がアップしているからです。

そもそも米国債って何?

米国債は、米国政府(米国財務省)が発行する債券です。日本が国の資金不足を補うために日本国債を発行するのと同様に、米国も米国債を発行しています。

米国債は発行額もケタ外れです。2024年の発行額は過去最高となる約28.3兆ドル。

1ドル=150円と考えても約4245兆円です。日本国債の発行額は2024年で約182兆円ですから、その規模の違いがよく分かります。

米国債は、世界経済の中心である米国政府が元本や利子の支払いを保証しているため、高い信用力を誇っています。また、取引のしやすさも非常に高いのが特徴です。

米国債は、日本国債よりも高い金利が期待できる投資先です。米国債の利回りは、米国の政策金利の見通しなどによって決まります。近年、米国では続くインフレを解消するために政策金利を引き上げたこともあり、とても高い水準になっています。対する日本では、マイナス金利政策が解除されたとはいえ、まだ金利が低い状況です。

<米国債と日本国債の利回りの推移(2015年~2024年)>
米国債と日本国債の利回りの推移(2015年~2024年)

著書「マンガと図解でよくわかる 最高の米国債投資術」(ソシム)より抜粋

2015年から2024年の利回りの推移を見ると、10年債券・30年債券とも日本国債より総じて米国債の方が高くなっています。

米国債がおすすめの理由①米国の国力の強さ!

米国のGDPは約29兆ドル。2位の中国(約18兆ドル)を引き離して世界一です。かつて世界2位だった日本は4位で約4兆ドルです(以上全て2024年時点)。

日本は人口減少が進んでいますが、国連の推計によると今後中国やインドでも人口が減少します。しかし、米国は主要先進国の中で唯一人口が増加。2024年時点で約3.4億人の人口は、2050年に約3.8億人、2100年には約4.2億人になると予想されています。

人口が増えると、経済活動が行われ、経済成長が続くことが見込まれます。

<名目GDP上位5カ国の推移・見通し(1980年~2029年)>
名目GDP上位5カ国の推移・見通し(1980年~2029年)

著書「マンガと図解でよくわかる 最高の米国債投資術」(ソシム)より抜粋

名目GDP上位5カ国の推移・見通しを見てみると、米国は右肩上がりで、力強さが際立っています。

実際、米国には世界的な企業がたくさんあります。マグニフィセント・セブン(アルファベット(グーグルの親会社)・アマゾン・フェイスブック(現メタ)・アップル・マイクロソフト・テスラ・エヌビディア)をはじめ、身近なところにも米国生まれの商品・サービスがたくさんあります。

世界的に使われる商品・サービスを生み出し続けられる限り、米国は、世界トップであり続けるでしょう。

米国債がおすすめの理由②世界中で利用される「ドル」の力

ドルといえば米国のお金ですが、世界中で使われているお金でもあります。ドルは基軸通貨といって、貿易や金融取引などで幅広く使用されています。それだけ、信用されている通貨だということを表します。

BIS(国際決済銀行)の3年に1度の調査によると、2022年4月の世界の外国為替市場の取引の44.2%がドルの取引となっています。2位のユーロ(15.3%)、3位の日本円(8.3%)などと比べても、その規模の大きさは抜きん出ています。取引量の多さに加えて、流動性も高いので、変動も比較的少なめです。

インフレとは、物価が継続的に上がり、お金の価値が目減りすることです。日本は、食料をはじめ多くのものを海外から輸入しているため、為替レートが円安に進むと、円の価値が目減りし、ものを輸入するコストが上がり、物価も上昇するのです。

米国債の利回りとインフレ率はおおむね連動しています。インフレ率が上がると、それを抑えるために政策金利が上昇し、米国債の金利も上昇します。すると、米国債をほしい人が増え、ドルを買う(両替する)動きが増えるため、為替レートはますます円安(=ドル高)に進みます。

<米国債の利回りとインフレ率の推移>
国債の利回りとインフレ率の推移

著書「マンガと図解でよくわかる 最高の米国債投資術」(ソシム)より抜粋

米国債がおすすめの理由③ドルベースの元本保証

米国債は、米国が破綻したら損をする「信用リスク」がないわけではありません。

しかし、今の経済規模やこれからの人口増加を踏まえると、米国の破綻は考えにくいですし、米国より前に他の国が破綻する可能性の方が高いでしょう。また、社債なども同様で、米国より前に企業が破綻するはずです。つまり、米国債は他の債券と比べてリスクが低いと言えます。

市場金利が上昇することで債券価格が下落する「金利リスク」はあります。債券価格が安いときに中途売却すると、元本割れする可能性があります。とはいえ、償還日まで保有していれば、額面の金額が戻ってくるという点では、ほぼ元本保証です。

「為替リスク」もあります。米国債の元本保証はドルベース。したがって、もしも為替レートが円高になっていたら、元本割れする可能性があることは押さえておきましょう。

例えば、米国債を1万ドル、1ドル=150円のときに購入したとします。この米国債から10年間で3000ドルの利子を受け取って償還したときに、1ドル=100円になっていたら、差し引き20万円の損を抱えることになります。

米国債がおすすめの理由④流動性が高く換金しやすい

流動性とは、金融商品の取引のしやすさを表す言葉です。取引がしやすいことを「流動性が高い」、反対に取引しにくいことを「流動性が低い」などと表現します。

米国債は、流動性がとても高い商品です。米国債は信用度が高くて市場規模も大きく、売買高もとても多いのが特徴。流動性が高いため、投資家は市場が開いている時間であればいつでも現金化できるなど、売買に対する制約が少ないのがメリットです。

もちろん、短期的に売買することもできますし、償還日まで長期にわたって米国債を保有し続けることもできます。

流動性の高さは、価格にも影響を及ぼします。流動性が低いと、買いたいときに買えない・売りたいときに売れないという可能性が生じます。

流動性が低いために売買できるタイミングや数量が限られている場合は、自分が望まないような価格で売買せざるを得ない可能性があります。

その点、米国債は流動性が高いため、望む価格で売買しやすいのがメリットです。

近年、国内の証券会社でも多くの米国債を取り扱うようになっています。

米国債がおすすめの理由⑤商品の選択肢が多い

米国債には、大きく分けて利付債とストリップス債があります。

<利付債とストリップス債の違い>
利付債とストリップス債の違い

著書「マンガと図解でよくわかる 最高の米国債投資術」(ソシム)より抜粋

利付債は、保有期間中に定期的に利子が受け取れ、償還日になると投資した元本が戻ってくる債券です。

米国債の売買はもちろん、利子や元本のやりとりも全てドルで行います。米国債の利付債の場合、保有していると年2回、利子をドルで受け取れます。この利子は、そのままでは再投資されません。したがって、利付債は単利の商品です。利子は生活などのために使うこともできますし、次の投資に回すこともできます。

ストリップス債は、あらかじめ割引された価格で販売され、満期になると額面金額が受け取れる債券。米国財務省が開発した債券で、利付債の元本と利子を切り離し、それぞれをストリップス債の形で取引できるようにしています。

ストリップス債は、利子が元本に組み込まれ、償還日には額面の金額が戻ってきます。したがって、購入金額との差額が利益になります。

利付債のように保有中に利子をもらうことはできませんが、複利効果が得られるのがメリットです。

損益分岐点為替レートを把握しておこう

米国債には為替変動リスクがあります。米国債を持っていることでもらえる利子や、米国債が償還したことでもらえる償還金は、いずれもドルで受け取ります。

そのドルを円にする際に、為替レートが円高になっていると、円での受け取り金額が減ってしまいます。反対に、為替レートが円安になった場合には、円での受け取り金額が増えます。

将来の為替レートがどうなるかは分かりませんが、仮に円高になっても、ドルを円に変えるタイミングは自分で決められます。また、ドルで受け取った償還金や利子を、米国債に再度投資することもできます。

米国債の利子は日本国債よりもたくさんもらえます。そのため、償還したときに為替レートが多少円高に進んでいても、利子+償還金の金額が投資元本を上回ることがあります。つまり、利子が為替変動リスクをカバーする期待ができるのです。

米国債が償還したときに、利益と損失の境目となる為替レートを損益分岐点為替レートと言います。損益分岐点為替レートを把握しておけば、為替レートがある程度円高になっても安心して保有できます。証券会社によっては、取り扱いのある米国債の損益分岐点為替レートが計算できます。

<損益分岐点為替レートの計算例>
損益分岐点為替レートの計算例

著書「マンガと図解でよくわかる 最高の米国債投資術」(ソシム)より抜粋

ただし、為替レートは気にしすぎると、円に戻しづらくなります。

ライフイベントでお金を使う際は、損益分岐点為替レートを上回っていればよしとするくらいのスタンスがいいかもしれません。

『マンガと図解でよくわかる 最高の米国債投資術』 頼藤太希/高山一恵 著

「マンガと図解でよくわかる 最高の米国債投資術」(ソシム)

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