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4月に入社してすぐ「会社選びに失敗した」と感じた新卒社員は、すぐ辞めるべき? しばらく続けるべき?

新卒で入社して早々に「思っていた会社と違った」とギャップを感じ、退社するケースが話題になっている。今回は新卒入社で会社選びに失敗してしまったと感じた際にどのような考え方や行動をすべきかについて紹介していく。

小寺 良二

執筆者:小寺 良二

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会社選びに失敗したと感じたときは、すぐに辞めるべき? それともしばらく続けるべき?

会社選びに失敗したと感じたときは、すぐに辞めるべき? それともしばらく続けるべき?

4月に新卒で入社した会社で「想像していた会社と違った」という理由で、退職代行サービスを使った新卒者のスピード退社が話題となった。

理由はさまざまで「服装や休日など、説明会で聞いていた内容と違った」「入社後の研修でミスをしつこく説教された」など、新入社員にとって入社前と入社後の会社像へのギャップにショックを受けて退社を決断するケースが多いようだ。

筆者も毎年大手から中小まで幅広い企業の新入社員研修を担当しているが、配属など含めて入社後のギャップに悩む新入社員は毎年少なからずいる。しかし就職活動がこれだけ売り手市場の中で、数ある内定先の中から選んだ1社が「思っていた会社と違った」というのは、ショックも大きいのかもしれない。

世間からは「最近の若者は自分に甘く、耐えるということを知らない」という意見も多いが、実際に「会社選びに間違った」と感じた際には「すぐに辞めたほうが良い」のか、もしくは「しばらく続けたほうが良い」のか。

今回はあえてこの両者の意見を比較しながら、それぞれのキャリア形成におけるメリット・デメリットを解説していく。
<目次>

自分が働きたい会社や仕事に気付いたら、早めに動いたほうが良い

まずは「違うと思ったらすぐに辞めたほうが良い」という意見である。

入社早々に退職を考える新入社員に対して、世間からは「忍耐力が足りない」など厳しい意見があることは事実だが、あえて今の新入社員を取り巻く状況を踏まえて原因を解説すると「就職活動における自分と会社への探求が浅くなっている」と言える。

就職活動・採用活動の早期化により、以前は大学4年生になってから始まっていた本選考も、現在は事実上3年生の夏から秋に始まってしまい、人材獲得に急ぐ企業は学生に早々の内定承諾を迫ることになる。

企業からの情報提供も入社動機を高めるため、自然とポジティブな情報が中心になりやすく、会社の負の側面を入社後に初めて知るということが起こるのも当然と言える。コロナ禍以降、オンラインでの面接や会社説明も多くなり、会社の雰囲気などを直接感じることができる機会も以前より減っている会社も少なくない。

そういった状況の中で、自分が本当に働きたい会社像ややりたい仕事について、しっかりと考えることのないまま内定を得て、気付いたら4月を迎えた新入社員は一定数存在する。以前はそのような曖昧な状態では内定は出なかったが、今は出てしまうからだ。

深く自分の将来を考えずに浅い就職活動をしてしまったという点は反省はしつつ、もし入社後に自分の働きたい会社ややりたい仕事が見つかったのであれば、それに向かって早めに動くというのもキャリアの意志決定という選択肢としては「あり」である。自分の働きたい環境や仕事内容を最短距離で得られるかもしれない。

当然入社した会社には多大な迷惑をかけることになるが、できればいきなり退職代行サービスを使って安易に退職手続きを進めるのではなく、まず自分の考えや意思をしっかりと企業側に伝えたい。しっかりと向き合うことで、応援してくれる会社や人事担当者もいるはずだ。

与えられた環境でまず「基礎力」を鍛えることが次のキャリアにつながる

もう1つの意見は「多少ギャップを感じてもしばらく続けてみる」というものである。

筆者も個人的にはこちらの考えに賛成派だ。ただそれは「忍耐力で耐えろ!」という根性論ではなく、キャリア形成上のファーストキャリアの特性からの意見である。

採用時に専門性を求めない日本の新卒採用の場合、どの業界や会社に所属しても最初に求められるのはコミュニケーション力や計画力など、ビジネスで必要な「基礎力」である。まずはそれらを一定水準まで磨くことが自分の市場価値を高める上で重要である。

そして実はその基礎力を高める上では、スポーツと同様である程度の「負荷」が必要である。ある意味、理想的な職場や仕事内容を得て満たされた状態よりも、多少自分のやりたいと思わない業務や、厳しい上司のもとで経験を積んだほうが伸びることもある。

筆者はこれまで多くの転職希望者と面談もしてきたが、どの会社に勤務していたか以上に、どんな環境や業務でどれくらいの負荷を乗り越えてきたか、という点のほうがその人の価値が決まる要素としては大きいと感じる。

そういった点で、入社後に多少ギャップを感じたり、思っていた会社像や仕事内容と違っていたりしたとしても、まず2~3年は与えられた環境で「基礎力」を高めることに意識を置いて、働いてみるのも選択肢としては良い。もちろんやりたい仕事や理想の職場環境ではないかもしれないが、それらを乗り越えた経験の価値は意外と大きい。

そしてもし3年後に本当に自分の働きたい会社や仕事が見つかったならば、その頑張って粘った経験や基礎力を武器にして次なるキャリアを築くと良いだろう。

最初に入った会社で早期に退職する前に考えてほしいこと

さて、2つの意見をそれぞれ比較してきたが、共通して大事なことは自分自身と向き合った上で中長期的に楽しく働いていくために自分にとって大切なことが何かを深く考えてみることだろう。

例えばどうしてもやりたい仕事があって、それが入社した会社ではできない、できる会社が他にあるというのであれば、そのやりたいことを重視して転職することも1つだが、多少やりたい仕事ができなくても、いろいろな経験を積めそうな環境でそれに重きを置けるのであれば続けてみるのも良い。

就職活動・採用活動の早期化で、自分や将来と向き合うことのないまま意思決定をしなければいけない若者が増えている。実際に自分が働く職場や仕事を得たときに、初めて考えるきっかけになったのであれば、良い機会と捉えて自分のキャリアにとって何が大切なのかをよく考えてほしい。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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