元教師であるすぎやまさんの著書『教師の本音 生徒には言えない先生の裏側』では、学校現場でまかり通る驚くべき「ブラック校則」の実態について、元教師ならではの視点で鋭く切り込んでいます。
今回は本書から一部抜粋し、ポニーテール禁止や下着の色指定、さらには体育時の下着着用禁止といった、信じがたいブラック校則の実態と、なぜそのようなルールが存在し続けるのか、その背景について紹介します。
うなじに欲情するから「ポニテ禁止」
『ポニーテール禁止』も、意味不明なブラック校則のひとつです。鹿児島市の女子生徒が「校則でポニーテールが禁止されているのはなぜか?」と担任に尋ねたところ、「男子がうなじに興奮するから」と返答されたという南日本新聞の記事がYahoo!ニュースにも掲載され、瞬く間に大きな話題となりました。
その波紋は海外にまでおよび、私のところにも、海外メディアから取材が来ました。
まったく意味のわからない謎ルールですが、教師からすると「あるある」なのです。さすがに「うなじに欲情する」などとは言いませんが、私が勤務したほとんどの学校でもポニーテールは禁止でした。
こういう社会の常識からかけ離れたヘンなルールが、地域限定ではなく、全国規模で存在しているのです。
たとえば生徒が髪を真っ赤にして就職試験に行くとしたら、「それはちょっとマイナスになるんじゃないかな。あなたはどう見られたいの?」という指導をするかもしれません。
もちろん、グローバル化が進む社会の中で、髪色や髪形、そもそも外見的な要素で人を判断するのはよくないという考えもあるでしょう。
でも少なくとも今の日本社会では、一般論として、そういう奇抜な髪色は良い印象を与えないことはたしかだと思います。
では、ツーブロックやポニーテールはどうでしょう?
ツーブロックなんて、むしろ爽やかで、好印象だと私は感じます。くるぶしソックスも、ポニーテールもそうです。誰がどんな靴下を履いていようが、誰も何も思わないでしょう。
学校の謎のルールは世間一般の感覚と乖離しているのです。
服をめくってチェックする「下着は白」
「下着は白! 靴下は白! 靴も白!」とかいう校則もそうです。逆に、一般的には白い靴下はビジネスマナー的にNGとされています。スーツに白い運動靴というのも変でしょう。
ところが学校では制服に、白い靴下、白い運動靴じゃないと「身だしなみがおかしい」と言われます。
下着もそうです。特に女性の場合は、白いブラウスに白い下着だと透けてしまうため、あまり好まれないことが多いです。男性でもベージュやグレーの肌着を着用する人も多くなっています。
ところが学校現場では、わざわざ服をめくって調べるほど、なぜか白の下着に異常に執着をしています。
白=清潔感がある、という認識なのだと思うのですが、社会で通用しないようなルールをわざわざ押し付ける必要があるのか疑問です。
思春期の女子に関していうと、『体育で下着の着用禁止』という異常なルールが話題になったこともあります。
「汗をかくので、体操着の下に下着(ブラジャー)を着用してはいけない」というルールが川崎市の多くの小学校で存在するということで、2021年に話題になったのです。
でも、高学年の女子ともなると、当然、胸が成長してきます。場合によっては、ブラジャーなしで運動したら胸が揺れたり、運動しづらいこともあるでしょう。
ブラジャーまで目視で確認?
なので、ブラジャーの着用を認めるかどうかを、教員がその子の胸を『目視』して判断するというのです。しかも、男性教員がチェックすることもあったそう。もう完全に人権感覚が狂っています。チェックする本人も、周りの教員も、なぜその異常性に気づかないのでしょうか? 誰かが止めることはできなかったのでしょうか?
ここまで異常な校則を放置した先生方はさすがに罪深いと思いますが、通常の学校に見られるようなブラック校則については、実は多くの先生が「ヘンだな」と思っています。
でも、それを変えるには、一部の声のデカい、押しの強い先生と戦わなくてはなりません。
先生にはそんな余力もないし、正直そこまで徹底抗戦するメリットが先生個人にあるわけでもありません。
ブラック校則がそのままになってしまうのは、そのためです。
静岡の元教師すぎやま プロフィール
YouTuber、TikToker、LGBTQ、教育評論家。静岡県掛川市出身。10年以上中学校教諭として勤務したのちに、2018年に退職。現在は先生のホンネ、学校のウラ側を解説するインフルエンサーとして活動中。現在総フォロワー数70万人超。フォロワーの多くは中高生で、若者心理やSNS文化に詳しい教育者として、自己啓発、SNSなどのテーマで、執筆・講演を行っている。2021年には『ゲイ』であることをカミングアウト。LGBTQの啓発活動として、講演会や企業向け研修会なども行っている。2024年に不登校生徒向けのオンラインのフリースクール『新時代スクール』を創設。クラウドファンディングで応援を募り、支援総額780万円超を達成。