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<目次>
異端の奇才――ビアズリー展
2025年5月11日(日)まで三菱一号館美術館 25年という短い生涯の間に、代表作『サロメ』をはじめ1000点以上もの作品を残したオーブリー・ビアズリー(1872~1898)。昼間もカーテンを閉め、ロウソクの光の下で制作を行っていたというその作品は白と黒だけで表現され、当時の印刷技術では表現できなかったという驚愕(きょうがく)するほど細密なものばかり。日本で活躍する現代のマンガ家たちにも大きな影響を与えてきました。 印刷でも再現できるよう白と黒を大胆に使った作風に変化するにしたがい、洗練さも加速。今回は世界有数のビアズリーコレクションを誇るヴィクトリア・アンド・アルバート博物館との共同企画展で、約220点の作品がお目見え。
初期から晩年までの変化が伝わってきますが、レースや羽、服のひだ、髪の毛などなど、人間業と思えない超絶技巧を前に言葉を失います。絵の前で立ち止まってしまう人多数。その細かさを堪能したい方はメガネをお忘れなく。
【今回ココがすごい!】
・過去最大級の約50点もの直筆作品が展示
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異端の奇才――ビアズリー展
西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館
2025年6月8日(日)まで国立西洋美術館 古典絵画の収集を精力的に行ってきたサンディエゴ美術館のコレクションの中から、世界的にも注目の集まるジョルジョーネの数少ない真筆とされる『男性の肖像』や、スペインの静物画・ボデゴンの有名作品が来日。 国立西洋美術館所蔵作品と組み合わせ、「作品をどのように見ると楽しめるか」という鑑賞のヒントを88点の美術品が教えてくれる、美術鑑賞初心者にもうれしい展覧会です。
【今回ココがすごい!】
・サンディエゴ美術館から日本初公開の作品49点が来日。
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西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで
サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館
ヒルマ・アフ・クリント展
2025年6月15日(日)まで東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
今世紀その存在が広く知られることとなり、「これまでの美術史を書き換えてしまう」と美術界をざわつかせているスウェーデンの女性画家、ヒルマ・アフ・クリント(1862~1944)。抽象絵画の祖・カンディンスキーが初めて抽象画を描いたとされる1910年より前から抽象表現を用いて制作活動をしていて、存命中そして死後も長らく展示されることがほぼなかった作品に今世界中の美術館から注目が集まり、回顧展が次々と開催されています。今回の展覧会はアジア初の大回顧展です。 17歳ごろからスピリチュアルな世界に傾倒し、交霊術などで受け取ったメッセージを表現したアフ・クリント。その作品群が全193点からなる「神殿のための絵画」です。 中でも高さが3メートルを超える巨大な作品〈10の最大物〉は、人生の4つの段階 (幼年期、青年期、成人期、老年期) を描いた10点組の大作。
照明を落とした空間に浮かびあがるような形で展示されていますが、「何色」と一言で表現できない個性的なパステルカラーが流れ出てくるようで、じっと見ていると絵の中に自分が取り込まれていくような感覚におちいります。作品の周りにはベンチもあり、長い時間見入っている鑑賞者が多いのも印象的でした。
【今回ココがすごい!】
・展示される全てが初来日
・アジア初の大回顧展
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ヒルマ・アフ・クリント展
PARALLEL MODE : オディロン・ルドン―光の夢、影の輝き
2025年6月22日(日)までパナソニック汐留美術館

オディロン・ルドン 《『起源』IV.セイレーンは無数の針をつけて波間から現れた》 1883年 リトグラフ/紙 30×23.4cm 岐阜県美術館

オディロン・ルドン 《窓》 1906年頃 油彩/画布 69×50.3cm 岐阜県美術館
【今回ココがすごい!】
・ルドンの晩年の主要な画題の1つであるステンドグラスを描いた『窓』が初公開
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PARALLEL MODE : オディロン・ルドン―光の夢、影の輝き
ミロ展
2025年7月6日(日)まで東京都美術館
無意識や夢、偶然といった、人がコントロールできないモノを表現しようとした「超現実主義=シュルレアリスム」。その代表作家として名前があがるジュアン・ミロ(1893~1983)は、太陽や星、月といった自然の中にある形を象徴的な記号に変えて描いた作品など、一度見たら忘れられない独特な画風で日本でも高い人気を誇ります。 そんなミロの没後40年となる今、「シュルレアリスムの画家」という評価だけでは片付けられないのではないか? という動きが現れ、欧米などでは大回顧展が相次いで開催。今回の展覧会では、90歳まで精力的に新たな挑戦を続けたミロの、生涯を見渡すことができます。
【今回ココがすごい!】
・過去最大規模の回顧展
・東京で初期から晩年までの作品が集結するのは約60年ぶり
・世界中に散らばり、まとめて見るのが難しい星座シリーズ全23点のうち3点が来日
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ミロ展
以上、2025年の春~初秋にかけて見逃せない「大人の感性を刺激する都内の美術展5選」をご紹介しました。並べてみると、精神世界と対峙(たいじ)して活動した芸術家の展覧会が多く、またビアズリー、アフ・クリント、ルドン、ミロは同じ時代を生きています。いくつかの展覧会を「見比べる」のも楽しそうなアートシーンです。