亀山早苗の恋愛コラム

70歳義母の孤独とシニア恋愛の「落とし穴」。定期預金300万円が消えた理由に義母は泣き崩れ

女手一つで子育てをしてきた義母に彼氏ができた。以前より若々しくなった義母を見て安心していたが、だんだん様子がおかしくなってきた。心配し夫と相談して家の中を調べると、とんでもないことが分かった。そこで義母を問い詰めると……。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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義母に恋人ができたというが……

義母に恋人ができたというが……

嫁姑の関係が必ずしも悪いとは限らない。実母以上に仲がいいという関係ももちろん存在する。だからこそ、義母の生き方が心配になることもある。

義母が恋をしたらしい

1年ほど前のある日、夫が妙に落ち込んでいることに気づいたカナコさん(42歳)。どうしたのかと尋ねると、「母さんに付き合っている男がいるらしい」とのことだった。

「義母は早くに夫に死なれて、夫とその妹を女手1つで育ててきた人。しっかりしていて優しくて、実母との関係が悪かった私には憧れの女性でもありました。結婚するとき、『絶対に仕事をやめちゃだめよ。私が助けるから仕事を続けて』と言ってくれ、実際に子どもたちが小さいころは本当に世話になったんです。かといって土足で踏み込んでくるようなことは決してしなかった。だからそんな義母が久しぶりに恋をしたなら、ゆるく見守っていこうと夫には言ったんです」

義母は70代半ば。定年後も働き続け、70歳になってようやく仕事を週3日ほどにして自分の時間がもてるようになっていた。同居をもちかけたこともあるが、義母は「動けるうちは一人で大丈夫」と、カナコさんの自宅から車で10分程度の距離で元気に暮らしていた。時間ができたのを機に地域のカルチャースクールのようなところに通い出して、仲よくなった男性ができたらしい。

若々しく輝く義母に接して

「でも相手は既婚者かもしれないと夫は心配していました。もめごとになったら困ると。ただ、お義母さんはしっかりしているし大丈夫でしょ、相談されるまではあまり突っ込まないようにしようよと言ったんです。それでもなんだか気になって、平日に代休がとれたとき、義母をお茶に誘ってみました」

新しくできたカフェで待ち合わせると、義母はきれいなスカーフをたなびかせながらやってきた。以前より若々しく、輝いていた。

「お義母さん、なんだかきれい。恋しているのではと水を向けると、『ちょっと仲よくなった男性がいてね』とあれこれしゃべってくれました。どうやら相手は妻を亡くし、今はバツイチになった娘さんと暮らしているようでした。夫が言うような不倫ではなかったことに私もちょっとホッとしたんです」

恋する義母の華やかな雰囲気に触れて、カナコさんはホッとしたという。

だまされていた義母

ところがそれから半年後、義母の様子がおかしくなった。義母の恋に介入しないと決めていたカナコさんだが、恒例の孫の誕生日会にも来ないので義母の家を訪ねてみた。

「うちは子ども達の誕生日には必ず義母も呼んでパーティーをしていたんです。なのに義母から当日になって、行かれないと連絡があって。翌日、義母のところに行ってみたら留守でした。LINEすると既読になるけど返事はない。何か困っているんじゃないかと夫と一緒に週末、また行ってみたんです」

義母は家にはいたが、なんとも暗い雰囲気だった。どうしたのと聞いてもはっきりしたことを言わない。カナコさんが義母をランチに連れ出し、その間、夫が家の中を調べ銀行通帳を見つけ出した。つましく暮らしているはずだったのに、2週間ほど前に定期預金300万円が解約、引き出されていた。

「夫が通帳をもってランチをしている店に来ました。『これ、どういうこと』と聞くと、義母が泣き崩れて……。どうやら仲よくなった男性に渡したらしいんですが、その男性は、そのまま行方が分からなくなってしまった。近くに住んでいるはずだと思っていたものの、家には行ったことがないし、娘と同居というのも本当かどうか分からない。カルチャースクールで知り合ったというのも、スクールそのもので知り合ったわけではなく、スクール近くでナンパされたみたいです。義母は都合が悪いことは言わなかったんでしょうね」

息子夫婦を避けるように

事態が分かると、夫は「いい年してなにやってんだよ、バカじゃないの」と激怒した。カナコさんは義母を責める気にはなれなかったが、かといって安易に慰めることもできずにいた。

「お義母さんほどの人が、そんなふうにだまされるなんて思ってもいなかったけど、やはりどこか孤独だったのかなとかいろいろ考えちゃいましたね。お義母さん、ぜいたくしなければ年金で暮らせるとは言っていたから、貯金はそれほどなかったみたいなんです。定期預金にはあと300万ほどありましたが、それが資産の全てらしい。お金を貸してと言われた時点で、怪しいと気づかなかったのかなとは思いました」

だが、年齢を問わず、好きになった男性を助けたいと思う気持ちも理解できるだけに、カナコさんにはせつない思いだけが残った。

「それ以来、義母は私たちを避けるようになりました。私も夫も、義母を孤立させてはいけないと思っているんですが、義母は負い目があるんでしょう。夕飯を食べに来ないかと誘っても行けないとにべもない。でもここで追いつめてはいけないから、断られても誘い続けるつもりですし、時々様子を見には行っていたんです」

つい先日、ふらっと義母宅に寄ってみると、義母はお茶を出してくれながら「私ってバカよね」とぽつりと言った。「人間、生きていればそういうこともありますよ」とカナコさんは明るく言ってみた。義母がペロリと舌を出したので、「もう大丈夫」と確信したとカナコさんはホッとしたように話してくれた。
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