『コンサル時代に教わった 仕事ができる人の当たり前』(西原亮著)では、コンサルで超優秀な上司から著者が叩き込まれたという、時間や労力を無駄にせず成果を出せる仕事のコツをお伝えしています。
今回は本書から一部抜粋し、仕事ができる人の「コミュニケーション」の当たり前から「『形容詞と副詞』を使わない」というコツを紹介します。
「形容詞と副詞」を使わない
「あいまい」な言葉を排除する簡単な原則を紹介します。■大原則→形容詞と副詞を使わない
次のような言葉を使った瞬間、「あいまい」という悪魔が現れ、仕事の生産性が下がってしまいます。
すごい、たくさん、非常に、とても、もっと、かなり、極めて、ずいぶん、大変、よほど、はるかに、すぐに、ときどき、たまに、しばらく、まあまあ、そこそこ、新しい、古い、大きい、小さい、高い、安い、低い、長い、短い、早い、遅い、広い、狭い……など、これらの言葉を会議や日々の仕事で使うことはたくさんあると思います。
形容詞や副詞は「程度」を示すにはもってこいの言葉です。しかし、人と人の認識の齟齬(そご)を最も生む言葉でもあります。
「できる限り早く見積もりを出して」
「なるべく低い価格設定にしよう」
このような発言が、認識の齟齬をもたらします。
「できる限り早く」は、上司にとって「今日中」でも、部下にとっては「今週末」かもしれません。
「なるべく低い価格設定」は、上司にとって「自社の既存商品の最安値」で、部下にとっては「量販店の最安値」かもしれません。
その場では会話が成立しているように見えても、形容詞や副詞を使ってしまったら、実は「何も決まっていない」と心得るべきです。
上司に大激怒された理由は……?
もし、あなたの上司が形容詞や副詞を使ったら「具体的にはどういったことですか?」と質問する必要があります。私もコンサル時代に、上司から教育のために、積極的に罠を仕掛けられたことがあります。
「明日のX社の提案資料は、普段より多めに用意しておいて」と上司に言われ、私は間髪を容れずに「わかりました!」と返答しました。
しかし、すぐに「何がわかったの?」と大激怒されました。
「多め」と言われても「15部でいいのか? それとも20部必要なのか?」と、実際に用意すべき部数はわかりません。
この時点で認識の齟齬(そご)が生まれていることを、見落としてしまったのです。
私は「多めとは、普段の倍の20部の用意でよろしいでしょうか?」と具体的な数を提案し、確認しなければいけなかったのです。
このとき、上司から胸に刺さる言葉を言われたのを今でも覚えています。
「おまえは人の話を聞いていない」
私はそれまで「コミュニケーションは得意」だと自負がありました。しかし、仕事をするうえで「人の話を聞く」とは「認識の齟齬をなくす」ことなのです。
そこからスタートしなければ、コミュニケーションは成立しないと教えられました。
もちろん、「具体的な数字をいちいち確認しなければならない」となると、人との関係値(例:上司や部下、取引先、パワーバランスなど)によっては「怒られるかもしれない」「聞きづらい」という感情が芽生えることもあります。
そんなとき、私は上司から「私たちは対価をもらい仕事をしているプロフェッショナルだ」と滔々(とうとう)と説かれたことを思い出します。
プロとして当たり前の仕事をするためには、自分の感情をコントロールして「あいまいさの排除」を徹底することが必要なのです。
ぜひあなたも「あいまいな言葉を一切排除する」というマインドセットでコミュニケーションに臨んでみてください。どれほどあいまいな言葉があふれているかに気づき、仕事の世界観が変わります。
西原亮 プロフィール
株式会社明治クッカー代表取締役|慶應義塾大学卒業後、アメリカ・ニューヨークに拠点を置く投資ファンドと大手総合商社の合弁にて設立された経営コンサルティング会社に入社。同社で5年の勤務を経て30歳を迎えた2013年、父親の跡を継ぐために明治クッカーに参画、同年8月より代表取締役に就任。 2019年より「にっしー社長」としてYouTube、およびTikTokにてビジネススキルの情報発信を開始。