昨今はSNSの影響もあって、より幅広い世代で楽しまれるようになっているコンビニスイーツ。
2024年はどのような商品が話題になったのかを振り返りつつ、2025年に各社が注力していくジャンルや最新の春スイーツについて、ファミリーマート、セブン‐イレブン、ローソンの3社に取材しました。
【ファミマ】スイーツのファミマを象徴するイベントになった「チョコレートフェア」
ファミリーマートでは2024年10月、「スイーツのファミマ」第1弾と位置付けて開催した「ファミマがチョコだらけ!」キャンペーンが大好評。チョコレートで表現できる多彩な「食感」に焦点を当てたスイーツ13種類をカテゴリ横断で展開し、反響を得ました。
「いちごや抹茶など、季節の素材を扱った横断企画は過去にもありましたが、チョコレートは初の試み。なかでも『濃厚ショコラロール』は、レトロな見ためのかわいらしさもあって、好評でした」(ファミリーマート FF・スイーツ部 杉本さん)。
2025年も1月の「ファミマのいちご狩り」、2月の「ファミリ~にゃ~ト大作戦!」と、続々キャンペーンが開催。この3月は昨年に続き、チョコレート菓子「ブラックサンダー」とのコラボ商品が展開されています。
今後も月1回ほどのペースで、何かしらのキャンペーンが開催されるそうなので楽しみですね!
育成カテゴリーとして「ネオ和菓子」を強化
2024年10月に発売した「ネオ和菓子」も、ファミリーマートが2025年に注力していくジャンルの1つ。「ネオ和菓子」とは、伝統的な和菓子の製法や素材を踏襲しながら、現代風のアレンジや洋菓子の要素を取り入れた新たな和菓子のこと。新感覚の味わいと写真映えする見た目が人気で、トレンドとなっています。
「第1弾では、定番のどら焼きと大福をアレンジした商品を開発。若い方にもカジュアルに食べていただけるよう、見た目のインパクトや食感のギミックを工夫しました。2025年も話題にしていただけるようなネオ和菓子を開発していく予定です」(杉本さん)。
パンもスイーツ化! 「コンビニスイーツ」のジャンルが拡大傾向に
また、筆者が個人的に注目していたのが「感動!スイーツパン」。「パンより贅沢。スイーツより満足。」をコンセプトに、実力派パティシエの安食雄二シェフが監修した商品で、「ティラミスメロンパン ヘーゼルナッツコーヒークリーム」(税込185円)、「塩キャラメル生フランスパン」(税込185円)、「焼きチョコクロワッサン クイニーアマン仕立て」(税込185円)の全3種類。発売から7日間で270万食を突破するなど、話題を呼んでいました。
昨今は「スイーツ」という言葉に含まれる範囲が多様化し、甘いパンはスイーツと表現されることも増えています。
コンビニでもさまざまな商品が「スイーツ」としてカテゴライズされてきており、「コンビニスイーツ」の定義もより広がりを見せていくのではと感じています。
「節約」と「ご褒美」。二極化するニーズに対応
物価の高騰が続き、嗜好品であるコンビニスイーツにとっては厳しい一年だったかもしれません。ただそうしたなかでも、「普段は節約しているけど、たまには甘いものを食べたい」というメリハリ需要も見られ、高価格帯のスイーツでよく売れた商品もありました。
ファミリーマートでは、手軽に購入できるチルドスイーツとして、「むにほっぺ」など150円以下の商品も品揃えしており、2025年も継続していくといいます。
一方で、2025年1月には高付加価値メニューとして「ピエール・エルメ アンソロジー」監修のスイーツを新たに発売。古き良き時代のパティスリーのお菓子を現代風に再構築したシリーズで、売れ行きも好調だといいます。
「300円を超えるようなスイーツには、お客さまに納得してもらえる明確な理由が必要だと感じています。今後もさまざまな消費シーンに合わせた商品を展開していく予定です」(杉本さん)。
【セブン‐イレブン】「ながら食べ」に応えるワンハンドスイーツを強化
セブン‐イレブンでは、2024年9月に発売した「かじるケーキシリーズ」が好調だそう。「かじるチーズケーキ」「かじるガトーショコラ」の2種類をラインアップしており、9月のみの実績で2品の累計販売数は約300万個を突破しています。
人気の背景には、「スマホを操作しながら、仕事をしながら、などスイーツの『ながら食べ』の消費者ニーズが高まっている」(同社広報担当)傾向があるといいます。
ワンハンドで食べやすいサイズ感と、幅広い世代に人気の定番フレーバーである「チーズ」と「チョコ」を揃えることで、そうしたニーズに応えているそうです。
フェアやSNS配信の効果で、スイーツの売上は昨年比増!
またセブン‐イレブンでは、スイーツを主軸にしたフェア(イベント)も好評でした。特に好評だった例として、10月開催の「モノクロスイーツ(まっしろスイーツ・まっくろスイーツ)」「秋の味覚祭」、11月開催のチョコレートブランドとのコラボスイーツ、12月開催の「ホイップだけシリーズ」などが挙げられます。
こうしたイベントの効果やSNSでの積極的な配信もあって、セブン‐イレブンでは新規顧客、とりわけ若年層の購入が増え、2024年のスイーツカテゴリーの売上は昨年以上の実績を上げたそう。2025年は引き続き定番商品の品質磨き込みと、新しい提案に力を入れていくとのこと。
定番商品の磨き込みでは、「カスタード&ホイップのダブルシュー」や「北海道十勝産小豆使用 粒あん&ホイップどら焼き」などをリニューアル。また季節に合わせたワクワク感のある提案として、3月のさくらスイーツ、5月の抹茶スイーツなどの展開を予定しています。
価格高騰や物流コストの上昇などの影響もあるなか、セブン‐イレブンでは一部商品について商品規格の見直しを行い、幅広いニーズに応えられる種類と価格帯のバランスを工夫していくそうです。日常のさまざまなシーンで、セブン‐イレブンのスイーツが便利に楽しめそうですね。
【ローソン】食感にこだわったチーズケーキや冷凍スイーツが好調!
ローソンで2024年に売れたスイーツは3月発売の「むぎゅ濃チーズケーキ」と「ふわ濃チーズケーキ」。「むぎゅ」と「ふわ」、対照的ともいえる食感にこだわったチーズスイーツで、発売から10日間で2種合計300万個を販売。10月にはリニューアルして再登場しました。
秋には、9月発売「ほろふわ栗粉の栗堪能モンブラン」が話題に。原料に限りがあったため数量限定で展開したところ反響が大きく、予定していた販売期間よりも前倒して販売終了となりました。
またローソンでは近年、面倒な解凍の手間なく食べられる「冷凍スイーツ」を展開しており、2021年の発売以来、これまでに25種類以上、累計1200万個以上を販売。30~50代の女性を中心に好評だといいます。
2024年10月に発売された「生チーズケーキ」は、冷凍・半解凍・全解凍の3種類の状態で、異なる食感や味わいを楽しめるのが魅力です。ほかにもカヌレやマカロン、クリーム大福など和洋のスイーツが手軽に楽しめるので、筆者も重宝しています。
季節感のある商品や、付加価値を高めた商品で変化のある売り場に
フェアでは、11月に開催した「モノクロスイーツフェア」が好評だったそう。竹炭パウダーやブラックココアなどの黒い食材と、生クリームやホワイトチョコレートなどの白い食材を組み合わせた「モノクロスイーツ」10品を発売。白と黒の商品を買い合わせ、コントラストを楽しむ投稿などがSNSで多く見られました。
ローソンでは2025年、季節感のある食材を使ったデザートを取り入れて、売り場に変化を演出するほか、食感にこだわるなど付加価値を高めたスイーツにも力を入れていくといいます。2月には、食感を打ち出した商品として「とろサク食感」が楽しめるタルト2品が発売になりました。
価格高騰に対しては、「価格競争力は重要だが、商品に対してお客さまが期待する価値を提供し続けることが大事である」(同社広報担当者)との考えから、日常的に買い求めやすい商品と、高品質で価値のある商品の両軸で多様化するニーズに対応していくといいます。
コンビニ大手3社の今後
各社に共通した回答として、「価格高騰が長引くなかで、消費者の『失敗したくない』という心理が大きくなってきている」という内容が見られました。
スイーツに対して保守的になり、わかりやすさや安心感が求められている昨今は、新たなヒット商品を生み出すのが難しい時代かもしれません。
一方で、食に対して体験価値や情緒的な価値が求められているように、コンビニスイーツにおいてもおいしさプラスアルファの付加価値をつけた商品が増えていると感じます。日常のなかでコンビニスイーツを楽しむシチュエーションも多様化しているので、今年も面白い商品が出てくるのだろうと期待しています。
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