両方のパッケージを見て、間違える可能性がどれだけあるか
具体的には不正競争防止法の2条1項1号が問題になるのですが、「周知の他人の商品と著しく類似するデザイン等を使用することで、混同が生じている」かどうかが肝となります。端的に言うと、「カール」のパッケージデザインと、「パックル」のパッケージデザインが、消費者が間違えてしまうほどに似ているかどうかということです。
両者のパッケージを一見すると、正直似ている印象は否めないので、これが一番の争点になるでしょう。
この問題を考える上で参考になるのが、あるドリンクが、「サントリー黒烏龍茶」のパッケージデザインに似ているかどうかが問題となった事件です(平成19年(ワ)第11899号 不正競争行為差止等請求事件)。
この事件は、「黒烏龍茶」を販売するサントリーが、健康食品を製造販売するオールライフサービス社など2社の販売する「黒濃烏龍茶」「黒(ブラック)烏龍茶」のパッケージなどが自社製品に類似しているとして、製造販売の停止などを求めて提訴したものです。

【画像3】黒烏龍茶と類似と判断されたケース ※画像出典:立正大学法学部 競争法と知財法のゼミナール

【画像4】黒烏龍茶と似ていないと判断されたケース ※画像出典:立正大学法学部 競争法と知財法のゼミナール
こうした事件をもとに「カール」と「パックル」について考えると、不正競争防止法上の類似・非類似のどちらの可能性もあると言えます。ただ、東ハトがこうした不正競争防止法の観点を踏まえていないとは思えません。
今のところ東ハトは、「カール」が販売されていない東日本地域に限定する形で「パックル」を販売しているので、現時点では誤認は生じづらく、不正競争防止法上も問題はないと考えられます。
ただし、今後「パックル」を西日本地域でも販売するとなった場合、「パックル」を「カール」と間違えて買う人が出てくる可能性もないとは言えないため、そのようなときに不正競争防止法上の問題が生じる可能性も出てきます。
先述した通り、「パックル」はかなり際どいラインを攻めてきているので、不正競争防止法に違反するかどうか非常に判断が難しいところです。どちらの可能性もあるため、今後どのように判断されるのか予断を許さないと言えます。
なお、筆者は「カール」と「パックル」の両方を実際に食べてみましたが、「パックル」のほうが軽い感じというか、食べやすい感じなので、食べた印象としては意外と違うと思いました。
<参考>
東ハト ニュースリリース「『パックル・まろやかチーズ味』『パックル・コク旨カレー味』新発売」
明治 カールおらが村 Webサイト
裁判所 裁判例 「平成19年(ワ)第11899号 不正競争行為差止等請求事件」
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