お菓子の形はそっくりだけれど……
次に「お菓子の形」について検討します。東ハトの「パックル」も明治の「カール」も、お菓子の形は非常によく似ています。正直お菓子の形だけ見たら区別するのは困難でしょう。
これだけお菓子の形がそっくりな場合に何か問題になることがあるのでしょうか。見た目に関することなので、まず著作権を検討してみます。
お菓子の形に創作性があれば著作権が問題になりますが、明治の「カール」のお菓子の形は、東ハトが以前から販売している「キャラメルコーン」などのほかのお菓子の形と似ているとも言えますし、創作性があると言えるほどの表現はされていないと考えますので、著作権が認められるほどの創作性はないでしょう。
よって、「カール」のお菓子の形に著作権は発生しない可能性が高いであろうと言えます。
なお、東ハトは今回の「パックル」以前から、「カール」のお菓子の形と非常によく似た商品「サクサクか~るいチーズスナック」(画像2)を、「カール」が東日本地域での販売から撤退したあたりからファミリーマートを通じて販売していますが、今日まで著作権法違反等で問題にはされていません。 また、見た目の権利に関することでは「意匠権」というのも考えられますが、特許庁のデータベースで確認する限り、明治が「カール」のお菓子の形で意匠登録はしていないように見受けられます。
以上のことから、「パックル」と「カール」のお菓子の形がそっくりであっても、これも法的には問題にならないのではと考えます。
最後に、「パッケージ」について検討します。
パッケージが似ているかどうか、非常に判断が難しい
パッケージが似ているかどうかを検討するに当たって、改めてそれぞれのパッケージを見比べてみましょう。
【画像1】左:東ハト「パックル」、右:明治「カール」 ※画像出典:東ハト Webサイト、明治 Webサイト
商品パッケージのデザインも、美的鑑賞の対象となり得るのであれば、美術の著作物として著作権が発生します。「カール」のパッケージデザインでは、カールおじさんというキャラクターや、中央の商品名の文字デザインなどに創作性を感じられる部分があるため、全体として美術の著作物として認められる可能性はゼロではないと考えます(とはいえ、美術の著作物として認められるのは割とハードルが高いのですが)。
しかし、仮に美術の著作物として認められたとしても、「パックル」のパッケージデザインが「カール」のパッケージデザインの著作権を侵害しているかというと、そうではない可能性が高いと考えます。
著作権侵害を検討する場合、「表現上の本質的な特徴」、すなわち創作性のある部分が似ているか否かが問題になりますが、「カール」のパッケージデザインにおいて重要なカールおじさんは「パックル」のパッケージデザインにはありませんし、印象的な「カール」の中央の文字デザインも「パックル」のそれとは異なります。
よって、全体的には、「パックル」の商品パッケージは、「カール」の商品パッケージの創作性のある部分と似ていないと言えるので、「パックル」のパッケージデザインは著作権としては問題にならない可能性が高いと考えます。
ただし、このように著作権は問題ないとしても、最も問題になり得るのが「不正競争防止法」です。おそらく、両商品が似ているかどうかを検討する上で、一番争点になるのが不正競争防止法になるのではと考えます。
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