こうした感情が生まれる背景には、親自身の捉え方のクセがあります。本記事では、教育やコーチングの専門家から見た、子どもにスポーツをさせるときに親が持つべき捉え方や行動のポイントを解説します。
経験者の親が忘れがちな「子どもは自分ではない別の個体」ということ
子どもにスポーツをさせたいと思う親もいるでしょう。その際に、「自分がサッカークラブで活躍していたから、子どもにも同じようにサッカーをしてほしい」などと考えるのは、親のエゴと言えます。ただし、親が子どもと一緒に経験していたスポーツに取り組んでいたら、子どもが興味を持ったというパターンも多くあります。前者と後者では全く違う点があります。親がやっていたスポーツに子どもが取り組むことは同じでも、後者は子どもが「やらされた」のではなく、自分が「やりたい」と思ってやっているのです。親が仕向ける場合でも、後者のように行うのがいいでしょう。
子どものスポーツへの関わり方としてとても重要なのが、子どもの活躍度合いや結果については、親がコントロールできるものではないことを自覚することです。
ここで有効になるのがスポーツでの結果や成長は子どもの課題であり、親の課題は子どもをサポートすることという、アドラー心理学の「課題の分離」の考え方です。この2つの課題を混同してしまうと、親の期待が過剰になり、結果的に子どもにプレッシャーを与えてしまいます。
重要なのは、「親と子は別の個体である」という視点を持つことです。親の経験や価値観を子どもに押し付けるのではなく、子どもの意思やペースを尊重する姿勢が求められます。
子どもがスポーツで結果を出すかどうかは子どもの課題であり、親がコントロールすべきことではありません。ただ、それに気付くのは難しいので、イライラ、モヤモヤを感じたときに「これは誰の課題なのか」と親は自問自答してみるといいでしょう。
親にできるのは「子どもの可能性を信じ、見守ること」だけ
子どもがスポーツ活動でどのような結果を出したとしても、その過程を信じて見守ることが親の役割です。「イライラ」や「モヤモヤ」は、親が子どもに期待する結果に執着していることから生まれる感情です。子どもを信じ、「子どもには無限の可能性がある」という前提に立ち、結果ではなく努力やプロセスを承認することを意識しましょう。「子どもが活躍できないとイライラする」という感情の背後には、親自身のエゴが隠れていることが少なくありません。
エゴとは、「自分の願望を満たしたい」という気持ちです。例えば、子どもが活躍することで親自身の価値が高まるように感じるのは、典型的なエゴの一例です。その場合は、「活躍すること」=「いいこと」という考え方が前提にあるのでしょう。
活躍しても活躍しなくても、どちらであっても子どもは学んでいきますし、成長スピードも人それぞれです。また、「勝ち負けよりも楽しければそれでいい」という子どももいるでしょう。親の価値観と子どもの価値観には違いがあるということを認識し、子どもの価値観を否定しないことが親子の信頼関係構築につながります。
「辞める」選択肢も勝手に排除せず、子どもの選択肢の1つに
また、子どもが「サッカーを辞めたい」と言ったとき、親としては「なんで?」「せっかくここまで頑張ってきたのに」と追及したくなる人が多いのではないでしょうか。そんなときは、まず「何でそう思うの?」とフラットな姿勢で聞くことが重要です。親の固定観念や期待にとらわれず、子どもの気持ちや状況に耳を傾けることで、子どもが本音を言えるようになります。子どもの本音を聞いたうえで、親としての気持ちを冷静に伝え、そのうえで子どもに選択させるのがいいでしょう。
一方で、「辞めるな」と強制することは、親が子どもの課題に立ち入る行為であり、コントロールにつながります。親は子どもを信じ切り、サポートを求められたときに必要な助けを提供するというスタンスを持ちましょう。親が権力を持つ存在である以上、このような干渉が虐待につながる可能性もあることを忘れてはいけません。
今回はスポーツを例に出しましたが、勉強や習い事などいろんな点で言えることです。親としてもいろんな感情が湧いてくるのは子どもを応援しているからであり、子どもを愛するが故のことです。
ただ、ぜひ「自分の人生を充実させて」ということは、お伝えさせてください。親が趣味や仕事、自分の目標など自分の人生に注力することで、子どもの課題に過剰に干渉することを防ぎ、子どもの成長を自然な形で見守る余裕が生まれます。
土日は子どものスポーツ少年団に全ての時間を費やしていると「こんなに私は頑張っているのに!」という感情が湧き上がってきやすいでしょう。そんな方こそ、たまにはご自身のための休日を設定し、それを実現する手段を整えていくことをしてみましょう。
子どもの人生を背負うのではなく、親自身が自分の人生を楽しむ姿を見せることで、子どもも自立した考え方を学ぶことができます。