水、海、空を連想させる青
しかし、海や空の青は国や地域によって異なります。世界中の人々が連想する青は、微妙に異なる色をしているようです。今回は水や空にちなんだ色名から、青のバリエーションとその魅力を探ってみましょう。
水や空に関連する青の色名
水や空にちなんだ日本語の色名
水色(みずいろ)は、澄んだ水の色を模した淡い青色のこと。平安時代から使われてきたとされる古い色名の1つです。空色(そらいろ)は、昼間の晴れた空を思わせる紫みの薄い明るい青色のこと。空色も平安時代からある古い色名ですが、明治時代以降に広く使われるようになりました。
紅掛空色(べにかけそらいろ)とは、かすかに紅がかった淡い空色のことです。青い空が夕日の赤で薄紫に染まった色を表現するために、藍で空色に下染した上に紅花で染め重ねる染色法から生まれた色名で、紅碧(べにみどり)と呼ばれることも。染色技術が発達した江戸時代には染色者が色名を発案することが多かったと言われます。
水浅葱(みずあさぎ)は、藍染めの中でもかなり薄く淡い青色のことで、浅葱色(あさぎいろ)のバリエーションの1つです。藍で染めた時の薄い藍色のことを浅葱色と呼び、薄い葱(ねぎ)の葉の色に似ていることから名付けられました。
このように、日本の色名は染色に由来するものが多いのが特徴です。
水や空にちなんだ英語の色名
スカイブルー(sky blue)は、晴れ渡った大空のような明るい青色のこと。英語にはさまざまな空の色名(=スカイカラー)があり、微妙な違いを呼び分けています。ホリゾン(horizon)は地平線や水平線のこと。地平線近くの空は水蒸気などの浮遊粒子が多いので、青みが薄められます。ホリゾンブルーは地平線や水平線近くの空のような淡い青色を指し、スカイブルーよりもわずかに青みが薄いイメージです。
ゼニス(zenith)は、英語で「天頂、頂点、絶頂」を意味する言葉。ゼニスブルーは明るく紫みがかった青色で、空を見上げた時に見えるような色です。
マリンブルー(marine blue)は、やや緑みがかった濃い青色のこと。19世紀の海洋を象徴する色で、海軍の制服に見られる藍染めに由来する色でもあります。
水や空にちなんだフランス語の色名
ブルー・シエル(bleu ciel)は、フランス語で青い空の意味。フランス南東部の澄み渡る青空をイメージした爽やかな水色を指します。南フランスの西側に位置するコート・ダジュール(Côte d'Azur)地方は、地中海とアルプス山脈に囲まれた海岸リゾート地。コート(Côte)は海岸、アジュール(Azur)は青を指すことから、日本では紺碧海岸と呼ばれていたこともあります。ブルー・ドゥ・コート・ダジュール(Bleu de Côte d’Azur)は、地中海のような青色。地中海リゾートの美しく陽気なムードを連想させます。
メール・ドゥ・シュド(mer du sud)は、南の海を表した色。フランス人にとって夏の長期休暇(バカンス)は重要な行事で、ビーチで日光浴をしたり本を読んだり、ゆっくりと過ごすのが一般的です。メール・ドゥ・シュドはバカンスを連想させる色なのかもしれません。
ブルー・ニュイ(bleu nuit)は、青い夜を表した色。昔からある色名ですが、エルメスやルイ・ヴィトンなどのブランドが商品に取り入れたことで広く知られるようになりました。エルメスのブルー・ニュイは黒に近い濃い青色で、フランスの真夜中を想起させる優雅な色。ルイ・ヴィトンのブルー・ニュイは、ぼんやりと浮かぶ月に照らされた街並みと包み込まれるような深い夜空を想像させる色です。
青の魅力とは?
青空を見上げると、背筋が伸び、胸が開いて呼吸が深くなることで酸素や血液の巡りが良くなります。さらに、青には鎮静効果があり、副交感神経を優位にして心を落ち着かせる効果も。青を好む人が多いのは、そうした経験が無意識のうちに積み重なっているからかもしれません。日本の青は見慣れた色が多いかもしれませんが、英語圏やフランス語圏の青は新鮮に映ります。青には無数のバリエーションがあり、私たちを飽きさせない魅力があるのです。
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