備蓄食としても使える「ご当地おでん缶」で温まりませんか?
ここ数年は暖冬続きで筆者の住む新潟市はあまり雪が降らないのですが、2025年は久々の大雪。除雪に通勤にと、大変な日々が続きました。3月になっても急に寒さが戻る日があったりして、そういうときにはやはり温かい食べ物が欲しくなります。
手軽に食べられる温かい食べ物といえば、コンビニグルメ的にはカップ麺、レトルトカレー、中華まんなどが挙げられますが、筆者が最近気になっているのが「缶入りおでん」です。
おでん缶といえば、一般的には「天狗缶詰」の製品が有名ですが、調べてみると各地で「ご当地おでん缶」を製造販売していることが分かりました。そこで今回、ネットでご当地おでん缶を入手してみましたので、早速、北から南に向かって実食リポートをしたいと思います。
【青森】生姜味噌だれおでん 2種(三浦醸造)
青森おでんは、「青森おでんの会」公式Webサイトによりますと、第2次世界大戦後に青森駅周辺にできた闇市の屋台で提供されたおでんが由来といわれています。冬の厳しい寒さの中、青函連絡船に乗り込もうとする船客の体を少しでも暖めようと、ある1軒の屋台のおかみさんが味噌に生姜をすりおろして入れたのが喜ばれ、広まったもの
このことから「青森おでん=生姜味噌だれおでん」というイメージが定着し、現在に至っています。
缶入りの青森おでんは、シャモロック団子入りの「生姜味噌だれおでん(シャモロックスープ味)」と、ほたて団子入りの「生姜味噌だれおでん(屋台の味)」の2種類があります。筆者購入時は、ほたて団子入り2缶とシャモロック団子入り1缶の計3缶セットが3140円(税込)でした。
■シャモロック団子入りの 「生姜味噌だれおでん(シャモロックスープ味)」
1缶目は、シャモロック団子入りをご紹介します。シャモロックとは、青森県畜産試験場が長い歳月をかけて交配した地鶏。広いエリアで平飼いして長い期間生育した種類で、奥深い味わいで濃厚なだしが出るそうです。このおでん缶では、青森シャモロックのガラスープとシャモロックの肉団子を使用しています。
具材は大根、鶏卵、焼ちくわ、大角天(青森名物の薄い薩摩揚げ)、こんにゃく、シャモロック団子です。
うずら卵ではなく鶏卵が入っていること、大根やちくわのサイズも大きく、飲食店で提供される1人前のボリュームなので食べ応えがあります。青森シャモロックのガラを使ったスープは舌触りはあっさりしていますが、前述のとおり、口に含むと奥深いうまみを感じます。
生姜味噌は舌に触れた瞬間、少し生姜の爽快さを感じます。砂糖も入っており、甘じょっぱい味噌だれになっています。とても柔らかいので、おでんに直接塗るよりも、別の皿に入れてディップしながら食べたほうがよいかもしれません。
■ほたて団子入りの 「生姜味噌だれおでん(屋台の味)」
2缶目は、ほたて団子入りを紹介します。スープは、かつお節や昆布などのだしと青森産のしょうゆを用いたコクの深いスープを使っています。ほたて団子以外は、シャモロック団子入りのおでん缶と同じ具材です。具材も青森おでん会厳選の製品あるいは取り扱い品とのこと。
ほたて団子は練り物になっているので、ホタテ貝の食感はありませんが、ホタテエキスがスープにもにじみ出ているようで、小さな団子ながら、おでん全体に魚介っぽさを感じさせる大きな要素になっています。
これら2種類の青森おでんは、1缶約1000円となかなか高価なおでん缶ですが、具材のボリュームと深い味わいで満足感は非常に高いです。
【宮城】塩竈おでん(阿部善商店)
3缶目は、宮城県塩竈市の水産練り製品メーカー「阿部善商店」のおでん缶です。1980年(昭和55年)におでん種セットを考案・販売しましたが、その後、塩釜湾や松島名産のカキのうまみにヒントを得て、おでんスープにカキエキスを取り入れました。
缶入りおでんは、東日本大震災で電気やガスなどのライフラインが止まったときでも、「器を使わずに常温でそのまま食べられるおいしい非常食を」という従業員からの声により開発されたそうです。今回の購入価格は、1缶574円(税込)でした。
具材はこんにゃく(糸こんにゃく)、大根、うずら卵、焼ちくわ、小判さつま揚げ、豆腐小判さつま揚げという一般的なおでん具材ですが、この品の売りはやはりカキのうまみだしだと思います。
深みがあり、喉越しにカキの味がふわっときます。おでんの具材を買ってきて、余ったスープでおでんをもう一度煮込みたいほどです。
【宮城】仙臺塩おでん(阿部善商店)
4缶目は塩竈おでんの姉妹品「仙臺塩おでん」です。塩竈のおでん種に仙台名物の牛タンさがり(牛の舌の根元)を入れ、牛テールスープ風のだしで煮込んだおでんです。今回の購入価格は1缶719円(税込)でした。
牛タンさがり以外の具材は、塩竈おでんと同じく、こんにゃく、大根、うずら卵、焼ちくわ、小判さつま揚げ、豆腐小判さつま揚げが入っています。牛タンはよく煮込まれており、口に含むとあっという間に肉がほぐれます。肉のサイズは小さいですが歯応えがあるので、満腹感があります。
スープも牛テールスープ風ですので、あっさりしていますが牛肉の味をしっかり感じます。1缶約700円の価値は十分あります。
【静岡】静岡おでん 2品
静岡おでん(「しぞーかおでん」と地元では呼ばれる)は「静岡おでんの会」の定義によりますと、「黒はんぺん入り・黒いスープ・串刺し・青のりやだし粉(サバやイワシなどの削り節)をかける・駄菓子屋にもある」おでんを言うのだそうです。
海産物の水揚げで有名な静岡ならではのおでんといえます。静岡おでん缶も数社から販売されていますが、今回はネット通販で入手できた2品を紹介します。
■駒越食品の「静岡おでん」
ドライパック製法(中の空気を抜いて高真空状態にした後、高温の蒸気で容器ごと蒸し上げる製法)で製造した「汁なしおでん」です。粉末ドライアイスで缶内の酸素を除去し、できたての風味を実現しています。購入時は1缶346円(税込)でした。
具材はこんにゃく、黒はんぺん、ちくわ、スジ風練り製品、豚モツ、昆布、うずら卵です。黒はんぺんはサバとイワシを使った練り物で、骨も皮も取り除かないので色が黒くなっています。食べればイワシの風味をしっかり感じます。
製法も関係するのでしょうか、汁もしっかり染みており、具材の歯応えもあります。汁なしなので、キャンプなどに持ち運ぶ際にも安心だと思います。
■カネセイ食品の「静岡おでん」
カネセイ食品は、藤枝市にあるうずら卵加工・魚肉練り製品製造のメーカーです。パッケージには「静岡おでんの会推薦」の記載があります。購入時は1缶787円(税込)でした。
こちらは一般的なおでん缶で、静岡おでんの特徴である「黒はんぺん入り・黒いスープ・串刺し」になっています。具材はうずら卵、黒はんぺん、さつま揚げ、なると巻き、糸こんにゃく、牛すじです。うずら卵加工メーカーということもあるのか、うずら卵が3個入っており、お得感があります。
スープは静岡おでんの特徴である黒いスープですが、カツオ、煮干、かつお節、昆布、ムロ節(ムロアジを原料とした節)、サバ節を使用しており、強烈な魚介感があります。
静岡おでんの特徴である串はなると巻きに刺さっています。練り物もボリュームがあり、味もしみしみで、牛すじもよく煮込まれ、脂身の甘じょっぱさがよいアクセントになっています。食べ終わってから、家に青のりがあったので振りかければよかったなと後悔しました。
【鹿児島】薩摩おでん(岡留蒲鉾本舗)
最後は、鹿児島県志布志市の練り物メーカー「岡留蒲鉾本舗」のおでん缶です。購入価格は、1缶890円(税込)でした。
このおでん缶の売りは、具材に鹿児島県産の黒豚軟骨が入っていることです。他の具材はちくわ、さつま揚げ、棒天、ごぼう天です。
特記すべきは具材のサイズでしょうか。黒豚軟骨もゴロッとひとかたまり入っていますし、ちくわのサイズが「どうしてこの缶に入るのか?」と思うほどのビッグサイズで食べ応えもあります。練り物は大きいだけでなく、ふっくらとしていて、味もよく染みています。黒豚軟骨も柔らかく、脂身がトロトロで飲めるほどです。
スープは他社のおでん缶に比べて量は少ないですが、魚介の風味に黒豚軟骨のうまみも加わり濃厚な味わいです。
普段使いにも非常用にも使える「おでん缶」
以上、ご当地おでん缶の実食リポートでした。ご当地おでん缶の用途というと、まずは「旅行土産」でしょうか。今回のように、ご当地の味覚を楽しむためのお取り寄せもあるかと思います。加えて、缶詰ゆえ非常用の食品としても使えるのではないでしょうか。すでに煮込まれており、調理が不要なので、すぐ食べられるのが一番のメリットだと思います。
塩竈おでん缶は発売の経緯が東日本大震災ですし、薩摩おでん缶もネット通販のページに「災害食や保存食として使える」と記載されています。
また、「災害用保存用食品の中に、ちょっと高価な缶詰やレトルト食品を入れておくと気持ちが上がる」という説をSNSで見かけました。おでん缶も普通の缶詰よりは高価ですが、そういう面もあるなら、備蓄食品に加えておく手もあるなと思います。ぜひお試しください。
<参考>
青森おでんの会
阿部善商店(塩竈おでん缶紹介ページ)
静岡おでんの会
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