優待生活、いくらあればできる?
「株主優待で生活するにはどれくらい所有金額があれば可能なのでしょう」(60代)
株といえば株主優待! お米や乗車券、カタログギフトや優待割引券など、株主優待には魅力的なものがたくさんあります。優待目的で株を買っている個人投資家の方も多いでしょう。
「株主優待で生きていけたらな~」と夢見る方も多いかと思いますが、実際のところ、優待生活にはどれくらいの資金が必要なのでしょうか。そこで本記事では、個人投資家の筆者が、優待生活に必要な資金量を試算してみました。
優待生活、いくらでできる?
具体的な計算に移る前に、「そもそも優待生活とは、どのような状態か?」を考えていきます。質問者さまは「株主優待で暮らす」と表現していることから、生活費を全て賄える状態を「優待生活」とおっしゃっているのでしょう。
とはいえ、株主優待で受け取れるものは用途が制限されているものが多いです。お金を受け取る配当金と違って、株主優待では「お米」や「ギフト券」といった用途が制限されたものを受け取るため、優待だけで暮らしていくのは現実には難しいでしょう。
そこで本記事では「株主優待」に「配当金」もプラスして、その両方を合わせて生活費を賄うには、どれくらいの資金量が必要かを考えてみます。
株主優待+配当金の利回りが5%以上の場合
生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(2022)によると、夫婦2人で老後生活を送るうえで、最低限必要な生活費は月20万~25万円と考える人が多いようです。そこで本稿では、「月25万円の配当+優待を受け取れば優待生活可能」と定義します。1年に必要な生活費は300万円です。
記事執筆時点で四季報オンラインで優待銘柄をスクリーニングしてみると、配当利回りと優待利回りを合わせて5%以上の日本株は約140銘柄ありました。
優待内容は自社商品や飲食券、食品などさまざまですが、例えば100万円を投資すると、配当を年3万円、株主優待の食品を年2万円相当受け取れる……といった具合です。
優待生活の必要資金量は次の計算式で計算できます。
必要資金量÷利回り÷0.8
利回りが5%の場合、年300万円の生活費を捻出するには、300万円÷0.05÷0.8=7500万円必要、となります。
最後に0.8で割る理由は、配当や優待を受け取った後に、所得税が20%かかるからです。非課税であれば6000万円あれば十分です。NISAの成長投資枠などの非課税枠で配当と優待を受け取れば、必要な資金量を抑えることができます。
優待生活の注意点
最近は、株主優待を廃止する企業も多く見られます。その理由は、株主優待は海外投資家が利用できないなど、投資家の間で「不公平」が生じてしまうため、それが問題視されているからです。つい先日の「くら寿司<2695>」のように、株主優待を廃止して株価が急落するケースもありますから、優待生活を目指す場合は、「配当金がたくさん受け取れるだけでなく、優待もオマケでついてくる」のように、優待ありきというより、まずは配当を狙って、おまけで優待もついてくるような会社に注目するのが良い気がします。
ほかにも、業績悪化と共に優待内容が改悪されることもあるため、投資先の将来性などもしっかり吟味して、なるべく幅広く分散投資をしてリスクを抑えるのがよいでしょう。
また、いざ優待で暮らそうと思うと、配当や優待の受け取り時期も大事になりそうです。例えば6月に一括で1年分の食品を受け取っても食べ切れないし、食べ切る前に賞味期限が切れてしまうかもしれません。
「優待で暮らす」「配当で暮らす」のは投資家の夢ですね。妄想するだけでも楽しいですから、ぜひ、「優待と配当で暮らすなら、どんなポートフォリオを組むかなー?」とイメトレしてみてはいかがでしょう?