さて、モラハラと聞くと「夫によるモラハラ」を連想する人が多いのではないでしょうか。ところが、モラハラをするのは男性ばかりとは限らず、“妻のモラハラ”が理由で離婚に至ったケースもあるようです。
なかでも厄介なのが「妻のプチモラハラ」。即離婚に発展するほどの深刻なモラハラではないものの、妻が夫をネチネチといびったり、日常的に夫のプライドを傷つけるような言動をしたりすることで、夫婦仲が完全にこじれてしまうケースがあるのです。
ハイスペ妻の日常的な“プチモラハラ発言”
6歳年上の妻と結婚したものの、日常的なプチモラハラ発言に苦しめられたと語るのは、悠太さん(38歳・仮名)。「妻はもともと気が強くて毒舌なタイプでしたが、結婚後はさらにエスカレートしていきました。彼女はとても優秀で高スペック。僕より学歴も収入も、家事能力も高かったんです。そのことを毎日ネチネチと責められていました。
妻からは『私のほうが稼ぎもいいし、家事もできるよね。それに比べてあなたは……』という嫌みをいつも言われていました。あとは妻があっけらかんと『なんで私、あなたと結婚しちゃったんだろう……私にメリットがなさすぎるよね』と言ってきたことがあって。あまりに傷ついたので忘れることができません」
悠太さんは結局、3年で離婚。しかしその原因を周囲の友人に話しても、「モラハラというには大げさすぎる」「そのくらいの鬼嫁だったらどこにでもいる」などと言われ、理解してもらえないことも多かったそう。
「確かに妻が夫のダメ出しをすることくらい、よくある話なのかもしれません。しかし毎日毎日否定的な発言をされ続けて、精神的に参ってしまいました。優秀な妻に対して言い返すこともできず、男としてのプライドもズタズタでしたね」
機嫌が悪いと態度が一変する妻
亨さん(36歳・仮名)の場合は、「ことあるごとに不機嫌になる妻」に耐えられなかったといいます。「妻は機嫌がコロコロ変わりやすいタイプでした。機嫌がいいときは明るくて楽しいんですが……。仕事で疲れていたり、嫌なことがあったりすると、別人レベルに豹変(ひょうへん)するんです。家中に張り詰めた空気が走り、彼女の神経を逆なでしないよう、こっそりと息を潜めて過ごさなくてはならないので最悪でした。
最初の頃は、妻の機嫌が悪いときでも一生懸命気を使うようにしていたんです。『疲れているなら少し休んだら?』とか『何か仕事で嫌なことでもあったの?』など、コミュニケーションを取って解決しようと努めていたんですが、優しく聞いても『はぁ?別に』とキツい口調で言われたり、ひどいときは話しかけてもジロリとにらまれるだけで、無視されることも……。
部屋のドアを強く閉めたり、家事をするときも物に八つ当たりして大きな音を立てたりするので、僕はいつもビクビクしていました。だんだんそんな家に帰るのが本気で憂鬱(ゆううつ)になってしまい、結局別居することになりました」
亨さんのケース以外にも、ヒステリックな妻に耐えられなくなってしまった夫や、子どもの前でチクチクとダメ出しされ続けたのが許せなかったという夫のエピソードもあり、妻のプチモラハラによって夫が離婚や別居を決意するパターンは決して珍しくないでしょう。
このような場合、妻側に話を聞くと、ほとんどの人が「夫を追い詰めたり虐げたりしているつもりは全くなかった」と語ります。
妻からすれば、結婚生活におけるイライラや愚痴をストレートにぶつけていただけ。しかし夫は自尊心をボロボロに傷つけられ、心を閉ざしてしまうこともあるのです。
家族だからといって夫についキツい言葉をぶつけてしまう女性も多いのではないでしょうか。無意識のうちにプチモラハラ妻になっていた……ということのないようにしたいものです。
【この記事の筆者:小澤 サチエ】
ライター/エディター。慶應義塾大学文学部卒。『東京カレンダー』Web編集部にて数々のヒット企画を手掛けた後、フリーランスのライター、エディターとして独立。恋愛や結婚、離婚など幅広く執筆。