「オレ、40歳で?」男性更年期に悩む夫
ここ1年ほど、夫は眠りが浅い、食欲にムラがある、急に気分が悪くなることがあると訴えるようになった。「私に言われても何もできないから、さっさと医者に行けって言ってたんですよ。でも怖いのか、なかなか行こうとしなかった」
肩が凝る、胃が痛い、なんだか手が重いなど夫は毎日のようにさまざまなことを訴えていた。とにかく医者に行ってくれないと、どうにもならないでしょ。真実を知ってから対処しようと説得し、数カ月前、夫はやっと医者に行った。
「体の機能としての問題はなく、やはりメンタルが原因だったようです。早い更年期とも言われたみたい。そうなると今度は『どうしてオレ、40歳で更年期なんだろう。リサは? リサももうじき更年期になる?』ってしつこい(笑)」
今でも学生時代の友人たちからは、豪放磊落(ごうほうらいらく)で太っ腹な男とみられているようで、夫はそのイメージは大事にしたいらしい。だが実際には繊細で周りを気にするタイプなのだから、弱い自分をさらけ出してしまえばいいとリサさんはアドバイスしている。
「でも僕は別に周りを気にしているわけじゃないしと言うんですよ。自分の性格を把握していない。その年で本当の自分をわかってないのは社会人としてもまずいと思うよと言ったら、また悩ませてしまったみたい」
自分の性格を把握していない夫の問題点
自分の性格を正しく把握するのはむずかしい。相手によって態度を変えることもあるだろうし、意外な場面に遭遇して、自分でも想像外の言動をとることもある。それでも自分の反応の傾向や、どうしても避けたいこと、気分を害した時にどうすればいいかなど、人は経験を積むほどさまざまな受け止め方や対処法をもつようになるものだ。「夫はそういうことをほとんど考えてこなかったんじゃないでしょうか。私が『私ってこういう面があるんだよね』という話をすると、『へえ』とびっくりしたような顔をするんです。オレ、そんなこと考えたこともないって。
それが彼を鷹揚に見せているのかもしれないけど、自分のことは自分で守らないと、誰も守ってくれない。傷ついた時や必要以上に些細なことで悩んでしまうなら、悩む原因をきちんと突き止めた方がいい。私はそう思っていますけどね、夫は自分の気持ちを整理したりきちんと考えたりするのが苦手なのかもしれません」
例えば誰かに傷つけられた時。リサさんは傷つけた相手の気持ちを考えるのではなく、自分の気持ちをメインに考える。「なぜ傷ついたのか、言われたことに心当たりがあるからではないか」と。心当たりがなければ、人の尊厳を傷つけた相手が100%悪いと気持ちを切り替えることができる。だから二度と同じ言葉では傷つかない。
「人の気持ちを変えることはできないから、傷ついた自分の気持ちを整理するしかないわけですよね。夫にそのあたりを説明したんだけど、夫はピンときてない感じでした」
カウンセリングにかかればいいのにとリサさんは夫に勧めたが、夫は「人に自分のことを伝えたくない」らしい。
「このままうじうじと悩み続けて、それこそ更年期とか初老期うつ病とかになったらどうするんだろう。最近は、自分の気持ちのコントロールくらい自分でしてと冷たい気分になることもあります」
一言でいえば大人になりきれない夫なのかもしれない。妻としてはアドバイスを続けるしかないんでしょうけどと、リサさんは複雑な表情になった。