今回はJR名古屋駅から7~8分のところにある「鶴舞」をフィーチャー。名古屋在住の筆者が町の特徴や見どころ、楽しみ方などを詳しく紹介します!
<目次>
市内屈指の公園と図書館。地元っ子が住んで快適な町
「鶴舞」はJRと名古屋市営地下鉄の「鶴舞駅」、そして「鶴舞公園」があるエリア。名古屋の中心部のやや南東にあたります。鶴舞公園は名古屋を代表するお花見スポットで、四季折々の花々が咲き誇り、市民の憩いの場として親しまれています。園内の一角には鶴舞中央図書館が、周りには名古屋大学医学部と附属病院、名古屋工業大学があり、2024年10月31日には国内最大のスタートアップ企業支援拠点「ステーション Ai(エーアイ)」がオープンし、文化的な香りも漂います。 「鶴舞」は観光客がここを目的として来る場所というよりも、地元の人の生活圏としておすすめのエリアです。筆者は実際、公園の徒歩圏内に3年ほど住んでいましたが、気分転換にふらっとお花見や紅葉狩りができる場が近くにあるのは、ささやかな優越感をもたらしてくれました。 鶴舞中央図書館も生活者にとっては大きな存在。名前の通り市内の“中央図書館”として機能し、蔵書の数は全国でもトップクラス。地域資料の充実ぶりも群を抜いています。
市内屈指の公園と図書館がある。これだけで生活が豊かで充実したものになることは約束されたようなものといえるでしょう。
名古屋駅からたったの7分! アクセス抜群も転勤族には盲点
しかもアクセスもいい! 名古屋駅からはJRで7~8分、地下鉄で18分ほど。大須や栄エリアなど市の中心部まで自転車で行くのにも苦がないほどの距離感です。 名古屋に転勤で来る人の多くは地下鉄東山線沿線でまず物件を探すのですが、「鶴舞」は乗り換えが必要な鶴舞線沿線のため、転勤者にとってはいわば盲点。だからこそどことなくあか抜けない生活感、何となく落ち着ける居心地のよい空気感が守られているのかもしれません。朝ドラのロケ地、コスプレ公認施設として観光客からも人気急上昇!
地元民御用達というイメージが強い場所ではありますが、最近は遠方からわざわざ足を運ぶ人も増えています。その理由の一つが、鶴舞公園がNHK連続テレビ小説『虎に翼』のロケ地になったこと。園内の噴水塔などが作中に印象的に使われ、聖地巡礼スポットとして注目されているのです。
また鶴舞公園と園内にある名古屋市公会堂(愛称:岡谷鋼機名古屋公会堂)は、近年、市が力を入れている「コスプレホストタウン名古屋」の公認施設となっていて、コスプレを楽しむ人にとっても聖地の一つになっているのです。
「つるまい」? 「つるま」? 正しい読み方は?
地元の人にとっては親しみがあり、近年は旅行者からの注目も高まっている鶴舞。ここからは地元民、旅行者共により鶴舞を楽しめるトリビアや情報を紹介しましょう。鶴舞トリビアといえば何といってもその読み方です。「鶴舞」=「つるまい」と広く認知されていますが、実は「つるま」という読み方が混在し、地元の人でも正しく読み分けができている人はほとんどいないのでは……? という“隠れ難読地名”のエリアでもあるのです。主なスポットの読み方は下記の通りです。
【つるまい】
JR鶴舞駅、地下鉄鶴舞駅、鶴舞郵便局、名古屋市昭和区鶴舞(地名)、名古屋市昭和区鶴舞町(地名)
【つるま】
鶴舞公園、鶴舞中央図書館、鶴舞小学校、TSURUMA GARDEN(商業施設)、テラスポ鶴舞(多目的グラウンド) なぜ二つの読み方が混在するのか? その理由もさまざまな説が混在していてとても複雑です。かつては、「もともと“水が流れる場所”=水流間(つるま)だったのが、1909(明治42)年に公園ができたときに『鶴舞』の字をあてて、それが誤って『つるまい』と読まれるようになった」、すなわち「『つるま』が先」説が有力とされていました。
ところが、近年地元の専門家によって、「公園ができる前の1882(明治15)年の記録に『東鶴舞』(ひがしつるまい)『西鶴舞』(にしつるまい)とある」、すなわち「『つるまい』が先」説の根拠が見つかっています。
ではなぜ「つるまい」が「つるま」に変化したかというと、名古屋弁で「つるみゃあ」となまるのがさらに縮まって「つるま」になったのでは? との説が。これについてははっきりとした根拠が見当たらず、結局のところ二つの読み方がある理由ははっきりしないのです。
115年の公園の歴史を彩ってきたレトロ建築に注目
そんな謎があるのも、地域の象徴的スポットである「鶴舞公園」に歴史があるからです。2024年で開園115年。園内には貴重な歴史的建造物がたくさんあるので、その探索を目的に鶴舞駅へ降り立つのもいいでしょう。“歴史探索スポット”鶴舞公園の象徴が、先にも挙げた「噴水塔」です。NHK連続テレビ小説『虎に翼』のロケ地となって注目度がグンと上がりました。開園翌年の1910(明治43)年、鶴舞公園を会場に開催された博覧会「第10回関西府県連合共進会」のシンボルとして造られました。
設計は鈴木禎次。文豪・夏目漱石の義理の弟で、漱石の作品の中にも登場する人物です。塔のデザインはヨーロッパ調でありながら、それを囲む岩組みは日本庭園のようで、和洋折衷のスタイルもユニークです。 公園をさらに真っすぐ進むと現れる「奏楽堂」(そうがくどう)も鈴木禎次によるもの。こちらも堂は洋風、手すりに波や太鼓といった和のモチーフが取り入れられているのが特徴です。 他にも、先の噴水塔の背景としても映える1930(昭和5)年築の国の有形文化財「名古屋市公会堂」。普通選挙法成立を記念して1928(昭和3)年につくられたモニュメント「普選記念壇」(ふせんきねんだん)。
同じく1928(昭和3)年に最高級のヒノキを使って建てられた茶席「鶴々亭」(かくかくてい)。ユニークなところでは1918(大正7)年~1937(昭和12)年まで園内の一角を占め現在は門だけが残っている「旧動物園跡」。
これらのスポットは園内にある緑化センターで無料配布している園内マップや、園内各所にある案内板で「歴史散歩コース」のQRコードを読み込めば、解説付きで散策を楽しむことができます。
多彩なイベントに真新しいグルメ施設も
また、鶴舞公園はイベントの宝庫でもあります。奏楽堂や普選記念壇などでは無料の屋外ライブが、鶴々亭では茶会がしばしば開催。園内ガイドツアー、マルシェ、おもちゃづくりのワークショップなどが行われることも。ふらりと訪れてのんびり過ごすのもいいですし、あらかじめイベントスケジュールをチェックしてそれを目当てに訪れるのもおすすめです。 鶴舞園内には芝生やベンチも多く、青空の下でお弁当やテイクアウトグルメを広げるのもいいですが、周りにはグルメも事欠きません。便利なのは2023年5月にオープンした「TSURUMA GARDEN」(ツルマガーデン)。園内3つのエリアに飲食店を中心とした17のショップが入居する施設で、カフェやスイーツ、そばなど選択肢も豊富です。
周辺には名古屋めしの名店、人気店も
公園から少し足を伸ばすと、名古屋めしの名店、人気店も。味噌カツなら戦後間もなく創業し名古屋の洋食店でも屈指の歴史を持つ「気晴亭」、名古屋流カレーうどんなら濃厚なカレーつゆがコシのある麺によく絡む「つる岡」。喫茶店のモーニングならレトロな建築も魅力の「喫茶 新潟」、味噌串カツや味噌おでんを同時に味わうなら高架下の居酒屋「串太郎」などなど……。地元の人は気軽にふらりと、観光客の人はレトロ建築や気になるイベントがある際に訪れるのがおすすめの鶴舞。鶴舞公園を中心にディープに探索したり、周辺のグルメも合わせて楽しむと、地元の人も旅行者も充実度がグッと高まるのではないでしょうか?