「今、5000万円を1銘柄につぎ込んでいますが、リスク回避の方法を知りたい」(50代・総資産1億円)
総資産1億円で1銘柄に集中投資……ということは、だいたい全財産の半分を1銘柄に投資しているということです。なかなかエッジの利いた投資スタイルですね。
筆者もめちゃくちゃ自信のあるときには、質問者さまと同じくらい集中投資することもあります。そのときには「リスク回避」について念入りに考えています。
そこで本記事では、資産運用するときの「リスク回避」について、筆者がいつも検討する項目をご紹介します。
リスク回避には2つの種類がある
まずお伝えしたいのが、リスク回避には2つの種類があるということです。一つ目が「本質安全」というもので、はなからリスクのあるものには手を出さない方法です。
たとえば、株式投資は値動きが激しくリスクを伴いますが、このような「価格変動リスク」を避けたい場合は、安全資産と呼ばれる「個人向け国債」などを買うと本質的に安全といえます。
二つ目が「制御安全」というもので、リスクテイクはするものの、危険な状況になったらリスクを抑える行動を取る方法です。
たとえば、株式投資をしていると「業績悪化リスク」があります。投資先の業績が悪くなると株価が下がるのが普通ですが、そのリスクを抑えるために「業績が悪くなる前兆が見えたら早めに売る」のようにして対応を取ることもできます。状況に応じて行動をコントロールすることで、リスクを抑えるわけですね。
本質安全を確保する
リスク回避のセオリーは(1)まずは本質安全を確保し、(2)必要に応じて制御安全でリスクをコントロールすることです。たとえば、過度なレバレッジを利かせた運用は本質的に危険ですから避けたほうが良いでしょう。また、全財産を株式投資に当てるのも高リスクです。リスクを許容できる人ならば良いでしょうが、そうでない人は「自分が許容できる以上のリスクは取らず、本質的に安全な投資を志す」のが良いでしょう。
リスク許容度が「全財産の半分」ということなら、株式投資に当てる資金は全財産の半分までとし、残りの半分は個人向け国債や現金などとしてリスクを抑えるのが良いと思います。
制御安全でリスクをコントロールする
ご質問者さまの場合は「1銘柄に全財産の半分を集中投資している」ということですので、レバレッジを利かせているわけでもなければ、一応分散投資もしているのだろうとお見受けします。投資の神様ウォーレン・バフェットの右腕チャーリー・マンガーは「分散投資は3銘柄もあれば十分」と発言したこともあり、全財産の半分くらいならばリスクテイクとしては悪くない気がします。
とはいえ、「全財産の半分を1銘柄に投資する」のは十分大きなリスクテイクですから、どのように制御安全を確保するか、吟味しておくのが良いと思います。
たとえば筆者であれば、
- 今の投資先は割高ではないか?
- 今の投資先の業績見通しは明るいか?
- 今の投資先は投資家に対して誠実か?
- 見通しが暗くなるとしたらどんなときか?
- 何が起きたら損が出ていても売るか?
といったことを念入りに考えておきます。主要な取引先の業績が悪くなったり、株主の期待を裏切ったりするようなことがあれば、損が出ていても一部を売って、リスクを別のところに分散させると思います。
偶然にも、筆者も今集中投資している会社があります。ご質問者さまと同じように、全財産の半分くらいを1銘柄に投資しています。
筆者は「投資先の受注残高が落ち込んだら株を一部売ってリスクを抑えよう」と考えています。どんな会社にも業績の「先行指標」があるはずですから、その指標を見ながら、買い増すか、一部を売却するか、検討するようにしています。
まとめ
改めてまとめると、リスク回避のセオリーは(1)まずは本質安全を確保し、(2)必要に応じて制御安全でリスクをコントロールすることです。本質安全を確保し、きちんと制御安全も意識しているのであれば、2~3銘柄くらいの集中投資は許容範囲内だと筆者は考えています。裏を返すと、本質安全・制御安全に心配な部分があるなら、たぶんリスクを取りすぎているので、資産配分をいまいちど考え直したほうが良いかもしれません。