男のこだわりグッズ

世界中のバリスタが夢中! セラミックコーヒーフィルターの欠点を見事に解消した「セラポッタ」の秘密

紙要らずのドリッパーは近年注目されていますが、一方で、メンテナンスの面倒さや目詰まりは気になるところ。アッシュコンセプトの「セラポッタ」は、そのあたりの問題を解消する手だて込みで、世界に向けてセラミックコーヒーフィルターの魅力を発信している製品です。

納富 廉邦

執筆者:納富 廉邦

男のこだわりグッズガイド

アッシュコンセプト「セラポッタ」

アッシュコンセプト「cerapotta(セラポッタ)」6930円(税込)。サイズは、フィルター部分が約直径100×高さ110mm、スタンド部分が約直径100×高さ5mm。コーヒーを一度に1~4杯分入れられる

すっかり家庭でもコーヒーをハンドドリップで入れる人が増えました。それに伴ってさまざまなドリッパーが登場していますが、このところ目立つのが、フィルターの要らないセラミックや陶器などの多孔質素材を使ったドリッパーです。

フィルターが不要なのでゴミが少なくて済むこと以外にも、ペーパーフィルターでは取り除かれてしまうコーヒー豆の油分なども抽出できるなど、コーヒー本来の風味が引き出せるドリッパーとしても注目されています。

とはいえ、この手のセラミックなどを使ったドリッパーは、ペーパーフィルターを使うドリッパーと比べると、入れた後の豆を捨てるのが面倒だったり、目詰まりするたびに煮沸する必要があるなど、片付けやメンテナンスが面倒という欠点もあります。

また、最近はペーパーフィルターの質も向上して、紙臭さなどはほとんど感じないため、選び方としては、「セラミックドリッパーで入れたコーヒーの方が好きだから」か、「ペーパーフィルターを買うのが面倒で、環境にも配慮したい」といった人にはおすすめというのが、コーヒーを毎日入れている筆者の結論でした。

ただ、2024年春に東京ビッグサイトで行われていた「インテリア ライフスタイル」という見本市で、アッシュコンセプトの代表である名児耶秀美さんが自ら自社製品であるセラミックドリッパー「cerapotta」(以下、セラポッタ)を使って入れていたコーヒーをいただいて、その味の良さはもちろん、洗いやすそうな形状と、他のセラミック系のドリッパーとは違う薄さなどにも惹かれました。

そこで、名児耶さんに「セラポッタ」を中心に、ペーパーレスのドリッパーの魅力について、お話を伺うことにしました。
 

“日本独自”ともいえるセラミックコーヒーフィルターを世界に届けたい

アッシュコンセプト「キノメ」

右の2つが、アッシュコンセプトの「キノメ セラミックコーヒーフィルター」。コーヒーを入れた後の姿が植木鉢のように見えるデザインが特徴的

「アッシュコンセプトでは、『セラポッタ』の前に『キノメ』というセラミックコーヒーフィルターを作りました。そのときに、陶器のフィルターを作っている窯元をいろいろ探していて、波佐見焼のある窯元を見つけました。そこは、本当にセラミックコーヒーフィルターにこだわりを持って、きちんとやっていると感じたんです。その後、完成した『キノメ』で入れたコーヒーを飲んで驚きました」と名児耶さんは、セラミックコーヒーフィルターとの出会いを話してくれました。

それまでも、セラミックコーヒーフィルターを使って入れたコーヒーを飲んだことがないわけではなかったそうですが、『キノメ』で入れたコーヒーの、“しっかりコクは感じるのにスッキリした味わい”に驚いたのだそうです。「コーヒーってこんなにおいしかったっけ?」と思ったと言います。
パッケージ写真

「セラポッタ」はパッケージも説明書も多言語表記になっている。最初から世界展開を考えて作られているのだ

「窯元の社長と話していて、『これを世界に届ける気はありませんか?』とお伝えしたんです。少しは輸出もしているけれど、本格的にはまだやっていないとのことだったので、これは世界に持っていくべきだと。もしかすると豆の産地でも、自分たちの豆がこんなにおいしいコーヒーになると気付いていないかもしれないという話をしました。そこから生まれた、世界に持っていくためのセラミックコーヒーフィルターが『セラポッタ』です」と名児耶さん。

実際、セラミックコーヒーフィルターの類いは、あまり日本以外では作られていないそうで、海外でデモンストレーションをすると、とても好評なのだそうです。

世界有数のバリスタも見に来て、「自分にも入れさせてくれ」と次々に「セラポッタ」を使ってコーヒーを入れてくれるのだと名児耶さん。そんな彼らの姿を横で見ていて、入れ方をいろいろと学んだそう。
 

しっかり抽出できて洗いやすい形の「セラポッタ」

鋭角のフォルムが特徴

こんなふうに逆さまにすると、かなり鋭角の円錐状フォルムなのがよく分かる。角度は約30度。この角度はプロのバリスタに協力してもらいながら試作を重ねてたどりついた、セラミックコーヒーフィルターのポテンシャルを引き出す角度だという

「セラポッタ」が特徴的なのは、かなり鋭角になっているそのフォルム。実際に使ってみると、この傾斜のおかげで入れたあとの豆が捨てやすいのです。

通常のペーパーフィルターを使うドリッパーでも、ここまで鋭角になったフォルムは珍しいのですが、一つ穴タイプなど、「おいしく入れられる」と評判のドリッパーには、鋭角に切り立ったフォルムが多いのも確かです。「約30度というのが良い角度のようです」と名児耶さん。
ブラシ

最初からメンテナンスを考慮に入れて作られているので、オプションとして洗浄用のブラシも用意されている。このブラシは初回ロット分にはサービスとして付属していた

「洗いやすいのも『セラポッタ』の魅力ですが、それでもセラミックコーヒーフィルターの構造上、目詰まりはします。これはもう仕方ないのですが、実は、入れる前と入れた後、コーヒー豆をキレイに落として洗い終わった後に、熱湯を通してやると、かなり目詰まりを遅らせることができます」と名児耶さん。
メインテナンス例

使用後は、豆を捨て、ブラシでよく洗った後、このようにして熱湯を通してやることで目詰まりを遅らせることができる

実際、コーヒーを入れた後、キレイにブラシを使って洗い終わってからでも、湯通しすると流れ落ちるお湯は茶色く色づいていて、まだ微細な粉がフィルターの中にあったことが分かります。

つまり、湯通しすると粉をかなり排出することができて、目詰まりを遅らせられるというわけです。入れる前の湯通しは、茶器を温めることにもつながるし、一石二鳥。これを習慣づけるだけでも、「セラポッタ」に限らず、セラミックコーヒーフィルターを長く、気持ちよく使えそうです。

さらに、詰まったら煮沸する、それでも詰まってきたら、最後の手段として、酸素系の漂白剤を使うとリセットできると名児耶さんは教えてくれました。

また、海外のユーザーの中には食洗器に入れて洗っている人がいるそうで、それだと目詰まりをかなり防げるようです。ただ、それは洗剤で洗っているわけで、人体に害はないとはいえ、小さな穴がたくさん空いているセラミックコーヒーフィルターを洗剤で洗うのは、あまり気持ちよくはないので、おすすめはできないとのことでした。
 

均一な3mmの厚みと、30度の角度、独特な先端の形状がコーヒーをおいしくする

フィルターの素材感

陶土の鉱物分のみを、特殊な素材と一緒に焼くことで作られた多孔質のフィルター。土ものとも違う独特な風合いの肌だ

「セラポッタ」は、その素材から、他のセラミックコーヒーフィルターと違うのだそうです。土を焼いたのではなく、土の中の金属物質9種類にある素材を入れて1200度で焼くと、その素材が燃焼してそこが穴になります。その技術を持っているのが、有田であり波佐見の窯なのだそうです。
先端部アップ

このフィルター先端部の、少し凹んだ部分からコーヒーが滴り落ちる。この構造でフィルターの壁面を通ったコーヒーも抽出できる

「『セラポッタ』の良さのひとつは、お湯を注ぐと周り全体からモワーっと湯気が出ることなんです。なので、入れるときに周りに豆の壁を作ってやるようにすると、その周りの分もきちんと抽出されるんです。そして、先端は少し凹んだ球状になっていて、周囲からの抽出液もしっかり下に落ちます。この先端の形状と、全体を均一に3mmの厚みになるように焼いているからこそ、こういうドリップができるんです」と名児耶さん。

ろくろ成型で作り、陶土の中にある鉱物のみを使っているのが「セラポッタ」のポイント。波佐見や有田で使っている陶土は、そういう成分が最も多いのだそうです。

実際、筆者はいくつかのセラミックコーヒーフィルターを使ったことがありますが、案外、それぞれに個性があり、クセもあります。その中で「セラポッタ」は、ナチュラルというか、素直にコーヒーの風味を引き出すタイプのドリッパーだと感じています。
 

名児耶流「セラポッタ」での入れ方

蒸らし中

蒸らし中。このようにフィルター内部には豆の量の目安になるガイド線が付けられている

最後に、名児耶さんの「セラポッタ」での入れ方のレシピをご紹介。

まず、サーバーの上に「セラポッタ」をセットして、豆を入れずに熱湯を注ぎます。こうすることで、器具を温めつつ、「セラポッタ」の目詰まりを防ぎます。

続いて、フレンチプレス用くらい(やや粗めの中びき)にひいた豆を、入れたい量の15分の1を目安に入れます。たとえば、450mlのコーヒーを入れたければ、30gの豆を入れるといった具合です。
名児耶秀美さん

コーヒーセレモニーを楽しむ、アッシュコンセプト代表、名児耶秀美さん

そして、ドサッという感じで、全体を湿らせる程度のお湯を入れて、約30秒蒸らします。次は、ゆっくりと中心から円を描くようにお湯を注いでいきます。入れ終わったときに、フィルターの中は、周囲に壁を作りつつ、底には平らに豆が残るようになっているのが理想なのだそうです。

「こうやって、丁寧に入れる所作が楽しいんです。手軽にというのもいいのですが、このコーヒーセレモニーというような感じが好きなんです。ただ、これが正解というわけではなくて、僕の基本的な入れ方というだけのことで、これを基に好きに楽しんでくださいねと世界に届けていきたいと考えています」と名児耶さん。

実際、アメリカやヨーロッパでも、かなり売れているそうで、それは、サステナブルの意識が高いからというのもあるとは思うのですが、それ以上に、コーヒーの楽しみ方の新しい選択肢として受け入れられているからだと思うのです。だからこそ、世界中のバリスタが興味を持つのでしょう。コーヒーの落ち方自体が、すでに面白いのですから。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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