人間関係

離婚数が減る一方で“熟年離婚”は過去最高。「わかる」「定年後の夫婦関係は絶望的」と女性たち(2ページ目)

離婚自体は減っているが、熟年離婚は増加の傾向にある。従来の価値観や役割に縛られず、自分らしい生き方を求める女性が増え、結婚生活の間の長年の不満や我慢を乗り越え、新しい人生を歩み始める女性たちの姿が透けて見える。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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妻の「自立」を夫は露骨に嫌がった

子どもたちは大人の階段をすごいスピードで駆け上がっていく。夫はそれなりに出世しているようだ。マチコさんは、再び保育士の仕事に就いた。自分の子育てを経て、また社会に何かを還元できるのではないかと考えたのだという。

「いい子ではなく、おもしろい子を育てる一助となればと思いました。パートから初めて少しずつ時間を延ばして。仕事というより子どもを育てたり見守ったりするのは私の趣味かもしれないと思うようになった」

1年ほど働いてみて、もっと保育を極めたいと思った。大学に編入し、働きながら学生生活を送った。充実した日々が過ぎていく。子どもたちはそんな母を見て思うところがあったようだ。ただ、夫だけは「オレの飯くらい用意しておいてくれよ」と身勝手さを露骨に見せた。

「あの時期、子どもたちの心も夫から離れましたね。私自身も子どもたちが成人したら離婚しようと時間をかけて決めました」

娘の20歳の誕生日に離婚を申し出た

長男は大学を休学して海外を放浪した時期がある。それもいいとマチコさんは思っていたが、夫は大反対だった。長女はボランティア活動を人生のメインに据えている。

「ふたりともどうやっても生きていけるだけの力は蓄えた。そんな気がします。だから私もこれからは好きに活動したい。娘の20歳の誕生日に、夫に離婚を申し出ました。ずっと弁護士にも相談していて準備はできていた。夫はあわてふためいていましたね。

妻から離婚を申し出るなんて言語道断、そんなことは許されるはずがないとわめいていた。意味がわかりませんでした」

そんなことに怯むマチコさんではない。調停を申し立て、それがダメなら裁判でも離婚するつもりだった。静かに、だが徹底的に闘うと決めていた。

「夫は『もう面倒だから勝手に出て行け』と。かねて用意していたワンルームマンションに越しましたが、財産分与はしてもらわないと困りますと、また弁護士から文書を送ってもらいました」

結局、家を売って財産分与をした。本当は離婚などしないほうが経済的にはよかったと思うけど、お金には換えられない自由を得たとマチコさんは笑う。

「熟年離婚、増えて当然だと思います。結婚期間、女性たちはずっと我慢を重ねてきたのだから。今どきの若い人たちには、こういう思いをしないでほしいと思いますけどね」

今後もしばらくの間、熟年離婚は増加するのだろう。男性の平均寿命も延びた今、定年後の夫婦関係を考えると「絶望的だ」と嘆いている女性たちは多い。

<参考>
「『熟年離婚』の割合が過去最高に 長寿社会、役職定年も背景に」(朝日新聞デジタル)
・「令和4年 人口動態統計(確定数)」(厚生労働省)
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