こんな信じがたい内容のホラー映画『プー あくまのくまさん』が2023年6月23日に日本で公開されてから約1年後の2024年8月9日、その続編である『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』が日本で公開されました。
法的に「グレーな部分」を抱えて
第1作が製作費1000万円程度だったにもかかわらず、全世界興行収入が7億円ものヒットとなったことから、第1作よりも製作費を10倍ほど増やしてパワーアップ(?)しての第2作の公開となりました。筆者も映画館でこの第2作を見たのですが、スプラッター度はかなり増しており、またストーリーもプーさんの誕生秘話が描かれるなど、第1作よりもしっかり作りこまれていました。なお、プーさんのビジュアルや動きは、だいぶブギーマンやジェイソン寄りです。
ちなみに、第1作の公開時に内容や法的な問題などについていろいろと賛否があり、内容は最低映画の祭典、第44回ゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)を5部門受賞するという結果となりましたが、法的な問題については、後述するいくつかの「グレーな部分」を抱えて現在まできています。
そうしたいくつかのグレーな法的問題がある中、なぜ、プーさんのホラー映画が公開できたのでしょうか。
プーさんの原作小説の著作権が切れた
プーさんのホラー映画が作られるに至った最大の理由は、アメリカでプーさんの原作小説の著作権が切れてプーさんが「パブリックドメイン」となったことです。今回のプーさんのホラー映画の監督も、インタビューなどでそれがきっかけであることを語っています。
小説や映画などの著作物の著作権は、その保護期間が永遠に続くわけではなく、一定の期間、著作権で保護された後は著作権が切れ、誰もが基本的に自由に利用できるパブリックドメインとなります。
古くから『レ・ミゼラブル』や『オペラ座の怪人』などがパブリックドメインとして利用されて多くの二次創作がされていますし、『白雪姫』や『眠れる森の美女』といった童話もパブリックドメインとして利用されて、多くの二次的な作品が創作されてきました。
また、パブリックドメインになるまでの期間(著作権で保護される期間)は、国によって異なります。
たとえばアメリカでは、1923年~1977年の間にアメリカ国内で発行された著作物の保護期間は、発行から95年間としているため、1926年にアメリカで発行されたプーさんの原作小説『クマのプーさん』(原作:A・A・ミルン、挿絵:E・H・シェパード)は、2022年1月1日に著作権が切れてパブリックドメインとなりました。
なお、これはあくまでもアメリカ国内での利用の話であり、日本国内での利用に関しては、2017年5月21日に『クマのプーさん』の原作小説部分の著作権は切れています(原作者と挿絵作者の死亡年の違いなどから、挿絵部分は2024年現在も著作権が残っています)。
よって、ある国で著作権が切れたからといって全世界で利用できるわけではなく、基本的には、その著作物が最初に発行された国における保護期間(プーさんの原作小説の場合でいえば最初に発行された国はイギリスになりますので、著作者の死後70年間)を上限として、それぞれの国ごとに設定されている保護期間が経過した場合に、保護期間が経過した国においてのみ自由に利用できるようになるというものなのです。
そこで、今回のプーさんのホラー映画には1つの疑問が生じます。
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