田舎の実家に、住む人がいなくなったらどうすればいい?
住宅ローンや住宅購入、住宅売却に関する悩み・困りごとに、不動産業界で豊富な経験をもつ1級FP技能士が回答します。今回は、田舎にある実家に住む人がいなくなった場合、どうすればいいのか分からないという方(29歳・会社員男性)の疑問にお答えします。
Q. 実家に、いずれ住む人がいなくなったらどうすればいい?
「実家に、いずれ住む人がいなくなった場合はどう対処すれば良いのでしょうか?実家があるのは田舎なので、住み手がいません」(29歳・会社員男性)A. 将来的に自分や家族が住む可能性はないかを検討した上で、方針を決めましょう。
家は、住む人がいなくなった場合、換気が不十分となり、建物の劣化が進んでしまいます。また、空き家になっていても、不動産を所有しているかぎり、固定資産税の支払義務は免れないため経済的な負担もあるでしょう。さらに、建物やブロック塀の老朽化で倒壊の危険を及ぼせば、近隣トラブルにもなりかねません。そのため、売るにしても貸すにしても、方向性を定めなければならないでしょう。
売る or 貸すの判断基準は?
例えば、次のような基準で考えてみると方針が固まるかと思います。・テレワークや定年後の生活で、実家暮らしになる可能性はあるか
この可能性がない場合は、売る方向で不動産屋さんに相談することになります。もし、将来的に利用する可能性が残っているのであれば、いったんは貸すことも視野に入れましょう。
・思い出の詰まった実家を手放してかまわないか
まだ手放す心構えなどができておらず、所有しておきたいのであれば、貸す方向で不動産屋さんに相談することになります。一方で、特に思い入れなどはなく、親戚付き合いなどにも支障がないのであれば、すぐに売る方向で不動産屋さんに相談することができるでしょう。
田舎の不動産でも、売却や賃貸はできる?
実家に住む人がいなくなった場合、売却や賃貸を検討することになりますが、やはり、ご実家が田舎にあると、住み手が見つかりにくいことがネックとなります。 もちろん、相談者さんが「住み手はない」と思い込んでいるだけで、実際には田舎暮らしのニーズにマッチしていて、買いたい方や借りたい方がいる可能性はゼロではありません。売る場合にしても貸す場合にしても、提案力や問題解決力のある不動産屋さんに相談することが大切になります。利用価値のない不動産は存在しないため、根気強く、買いたい方や借りたい方が現れるのを待つことも必要でしょう。
できるだけ高く売りたいという場合、個人の買主(※1)を探すことになりますが、すぐにでも売りたいということであれば、建売業者(※2)に売却することになります。この場合の売却価格は、個人へ売却するのに比べると7~8割ほどになりますが、田舎の場合はさらに低い金額になる可能性もあります。それでも(資産価値の高い)宅地として、売却することができるでしょう。
もしも、建物の状態が良ければ、リフォーム業者(※3)に買い取ってもらえるかもしれません。この場合は建物の価値も評価されるため、建売業者に売却するよりも高値になることが期待できるでしょう。
しかし、個人の買主、建売業者、リフォーム業者のいずれも買い手がつかないとなると、宅地以外の利用方法を検討していくことになります。
また、賃貸にするにしても建物の劣化を防ぐためにも(賃借人に換気してもらっていると考え)安めの賃料設定や、通常は許されないリフォームを許可するなど、賃借人にとって魅力的な条件を提供することが必要となるでしょう。
※1 個人の買主:家と土地をセットであるいは更地にして土地だけを売る。更地にする場合のたて壊し費用は交渉次第だが、売主負担となることが一般的
※2 建売業者:更地にして建売住宅を建てて販売するので、家の価値は評価されず、土地のみの価値を評価され買い取ってもらえる
※3 リフォーム業者:中古住宅をリフォームして売却するので、家と土地をセットで買い取ってもらえる
文:みちば まなぶ(ファイナンシャルプランナー)
大学卒業後、大手ハウスメーカーや不動産業者などを経て、住宅ローンを切り口に、住宅購入をはじめとしたライフプランニングを提案する1級FP技能士。
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