お金持ちが徹底する「買い物へのこだわり」とは?
お金持ちは、普段の買い物でどのようなことに気をつけているのでしょうか。「本物のお金持ちほど、ケチでぜいたくをしない」とよく言われますが、実際にはそれほど単純な話ではないようです。『お金持ちは合理的』(すばる舎)の著者であり、多くの富裕層を間近で見てきたファイナンシャルプランナーの立川健悟さんに、お金持ちの買い物へのこだわりについて聞きました。
「消費」も「浪費」もない。お金持ちの基本的なマインドは「投資」
――多くの資産を持つお金持ちが、日常的な買い物で気をつけていることというのはあるのでしょうか?立川さん:富裕層の基本的なマインドは、常に「投資」です。ファイナンシャルプランナーが、お金の使い方を「消費」「投資」「浪費」に分けて考えましょう、とアドバイスをすることがありますが、これは富裕層には全く当てはまらず、全て「投資」だと言います。一見、浪費に見えることも、「紹介してくれた人の顔を立ててお金を使っているから、これは彼に対しての投資だ」とか、一般的に消費と呼ばれる食品などを購入する際も、「家族の健康を守るための投資だ」という感じです。
一方、富裕層の方がやらないこともあって、衝動買いをするというのは聞いたことがありませんね。誰かに勧められてその場で買うことはありますが、例えば街中の広告を見て、それに踊らされて買うことはないです。基本的には目的がないと買い物をしません。
――きちんと考えて、買う買わないの判断をしているということですね。
立川さん:そうですね。一般の人の中には、何か欲しいものがないか(欲しいものがあるわけでもないのに)探しに行くような買い物をされる方がいますが、お金持ちの人は買いたいものに一直線に向かい、買ったら帰るという感じです。もっとも、百貨店などの外商(※)が家まで来てくれることも多いのですが(笑)。
※主に、高額な商品を購入する法人顧客や富裕層など個人顧客の元に出向いて、商品やサービスを販売する専門部門
子どもの頃から、値段以上の価値を見いだすよう教育されている
――そういった考えで、買い物ができるようになるきっかけは、あるのでしょうか?立川さん:代々続くお金持ちの方々はそういったお金の教育を親からしっかり受けています。早くから子ども自身にお金を使わせて、「なぜそれにお金を使ったの?」「そこに何の価値を感じてお金を払ったの?」と親の方から聞いているようですね。叱ったり怒ったりしているのではなく、とても穏やかなやりとりの中で、使ったお金から値段以上の価値を見いだすように教育されています。
――子どもの頃から言われて、自然とそのマインドで大人になったということですね。
立川さん:そうですね。彼らには、資産を増やすことも大切ですが、守ることはさらに重要で、先祖代々受け継いだものをいかにして減らさないかというミッションも課せられています。減らさないといっても、何もしなければ相続のたびに相続税がかかり、資産が大きく減ってしまいます。彼らは、そういった多大な税金を支払ったとしても「なんとか次の世代にプラスマイナスゼロ以上で受け渡したい」という思いが強いですね。
私が知っている方で、鎌倉時代から土地を持っている家系の人がいます。もう十世代以上にわたって守り続けてきているため、自分の代で没落させるわけにもいかないという、それは結構なプレッシャーを感じていらっしゃいましたね。
立川 健悟さん
1980年生まれ。30歳のとき不動産テック企業に転職し、営業パーソンとしての実績が認められ主要株主の一人として執行役員に就任。その後、会社の株式上場に伴い、金融資産が3億円を超え、富裕層の仲間入りを果たす。多くの富裕層に接した経験をもとに「人生を豊かに生きる人を増やしたい」との想いから、ファイナンシャルプランナーに転身。著書に、『お金持ちは合理的』(すばる舎)、『お金が増えるのは、どっち?』(三笠書房)。
取材・文/七海 碧
不動産・金融に特化しているフリーライター。「本質を捉えて分かりやすく伝える」をモットーに、初心者でもすぐに理解できるシンプルな言葉で説明することが得意。ファイナンシャルプランナー、資産運用検定資格を保有。