TOPIX(東証株価指数)の新たな改革案が公表されましたが、株式市場には好材料なのでしょうか?
そもそも日経平均とTOPIXの違いって?
日経平均株価とは、日本経済新聞社が選定した東京証券取引所プライム市場に上場する225銘柄の株価から算出した株価指数です。一方TOPIXは、1968年1月4日の時価総額を100として、その後の時価総額を指数化したものです。東証に上場している2100超の銘柄(プライム市場の銘柄が中心ですが、新市場区分再編時の構成銘柄で、スタンダード市場やグロース市場を選択した銘柄も含まれます)が対象。日経平均同様、日本経済の動向を示す代表的な経済指標として用いられるほか、ETF(上場投資信託)などの金融商品のベンチマークとして利用されています。
といった説明はどこにでも記載されていますので、簡単に比べますと、日経平均は、東京エレクトロン<8035>やファーストリテイリング<9983>、ソフトバンクグループ<9984>といった指数寄与度が大きい、いわゆる「値がさ株」の影響を受けやすい指数です。なんで?と思われても、そういった指数の構成になっていますので仕方ないのです。上記の3銘柄で日経平均の2割ほどを占めていますので、この3銘柄が大幅高すると、他の222銘柄が下落しても、日経平均は上昇してしまうのです。
一方、TOPIXは、メガバンクやトヨタ自動車<7203>や商社株など時価総額が大きい銘柄の影響を受けやすい指数です。しかし、日経平均ほど各銘柄の存在感は大きくありませんので、東京エレクトロンやアドバンテスト<6857>など値がさの半導体関連銘柄が上がっていた今年の1月から4月にかけては、日経平均が強く、TOPIXは相対的に出遅れていました。
その証拠に、日経平均は1989年のバブル時の高値を更新しましたが、TOPIXは1989年12月の史上最高値2884.80ポイントをまだ更新できていません。同じ日本株を用いた指数でもこうした違いが存在するのです。
なんで改革するの?
そのTOPIXの改革が足元進められています。第1弾として進められているのは、2022年10月末から2025年1月末までにかけて、四半期ごとに10段階で構成比率の低減を推進するというもの。構成銘柄数を2100超から1700程度に徐々に減少する予定です。減らす目的は、TOPIXに連動した投資信託を運用しやすくするためです。TOPIX連動の投資信託は、その名の通り運用成績をTOPIXに連動させるため、ファンド会社がTOPIX構成銘柄を売買しています。銘柄が多いとその分多くの銘柄を保有し管理する必要がありますので、その負担を軽減させるため、対策が進められているのです。
そして、今回発表された第2弾では、第1弾で減らした全体の構成銘柄数を2026年10月から四半期ごと8段階で1200ほどにまで減らし(ウエイト低減)、かつ、定期入れ替えを実施するというもの。定期入れ替えの初回は2026年10月、第2回は2028年10月で、以降毎年実施される計画です。スタンダード市場とグロース市場から合計50銘柄ほどが入る予定としています。
米国の主要な指数であるS&P500と比べますとまだ銘柄数が多い気はしますが、改革前から比べますとほぼ半分、現在の2100銘柄から4割減ですので大きな進展と言えます。
今回の改革案のポイントって何?
今回の改革案のポイントは銘柄削減ではなく、スタンダード市場やグロース市場からも合計50銘柄ほどが新たに組み入れられるということです。実際、スタンダード市場のマクドナルド<2702>、ハーモニック・ドライブ<6324>、セリア<2782>や、グロース市場のジーエヌアイグループ<2160>、トライアルHD<141A>など時価総額や売買代金の大きい銘柄に、TOPIX組み入れに対する期待の買いが入りました。新たにTOPIXに組み入れられるということは、ファンド会社が、投資信託の運用成績をTOPIXに連動させるために、新しく組み入れられる銘柄を機械的に売買するようになるからです。
一方、プライム市場で最初からTOPIXに組み入れられていた銘柄からすると除外となりますので、需給的にはネガティブな話となりますが、移行措置銘柄のウエイト低減は2026年10月から2年ほどかけて段階的に実施することから、影響は限定的と考えます。ということは、組み入れられる可能性があるスタンダード市場やグロース市場の銘柄も実はそこまでポジティブな影響はない、との見方もできます。
まぁ、今のところ、スタンダード市場、グロース市場への刺激材料となっていますし、たまたまかもしれませんが、日経平均やTOPIXが上に動き出していますので、東京市場はポジティブな反応を見せていますから良しとしましょう。