個人保険の新契約件数が最も多いのは日本生命
最初に、生命保険会社が2023年度に新たな契約をした個人保険の件数を取り上げます。個人保険は個人年金保険を除く個人向けの保険のことで、終身保険や定期保険、医療保険、がん保険、こども保険等が含まれています。※契約者が法人で被保険者が経営者個人のような保険も、個人保険や個人年金保険の件数に含まれています。
表は2023年度の新契約件数が多い保険会社順に並べてあります。感染症からの復活状況を確認できるよう、2022年度と2021年度の件数、2021年度と比べた増減率も載せておきました。各社の決算内容をそのまま載せているので、件数の単位に「千件」と「件」が混在しています。「-」は件数がありません。2023年の生命保険会社数は前年度と変わらず42社ですが、アクサ生命とアクサダイレクト生命が2024年4月に合併し、2024年6月現在は41社となっています。
2023年度の新契約件数が最も多かったのは日本生命で、1年間で335万1000件もの新契約がありました。2番目が第一生命の204万6000件なので、130万5000件差の断トツ1位です。それでも前年から64万4000件も減っており、2年前からは86万件も減っています。第一生命も前年から57万4000件、2年前からは179万6000件(46.7%)も減っています。2社とも新契約件数は多いものの、厳しい状況が続いています。3番目の太陽生命と4番目の明治安田生命も前年から減っていますが、2年前と比べたら増えています。
生命保険会社42社のうち新契約件数が前年比で増えているのは18社で、そのうちの9社では20%以上増えています。増加率順に、かんぽ生命、イオン・アリアンツ生命、チューリッヒ生命、ニッセイ・ウェルス生命、第一フロンティア生命、ネオファースト生命、なないろ生命、SBI生命、はなさく生命で、一時払いの貯蓄性商品が得意な保険会社や比較的新しい保険会社が多く含まれています。2年前(2021年度)と比べると21社で増えていて、特になないろ生命、PGF生命、チューリッヒ生命は4倍増、ニッセイ・ウェルス、第一フロンティア生命、かんぽ生命も3倍増となっています。これらの保険会社は、新型コロナウイルス感染症の影響で大きく落ち込んだ反動もあるでしょうが、オンライン対応や保険商品内容等が時代にとても合ったのでしょう。
42社の新契約件数を単純に合計すると約1720万件になります。生命保険協会がまとめた2022年度の全社合計値1832万件や、2021年度の1887万件より減っています。5年前の2018年度は2253万件なので、生命保険業界としてはまだまだ厳しい状況が続いていると言えます。
個人保険の保有契約件数は70%が10社に集中
次に生命保険会社が契約した個人保険の保有件数を取り上げます。保有契約件数は過去の契約の累積で、新契約があれば増え、解約や満期があれば減ります。 個人保険の保有契約件数でも日本生命が最も多く、前年度より7万7000件減って3073万7000件となっています。2番目に多いのは第一生命(2242万4000件)、3番目がアフラック(2236万3000件)で、前年から2番目と3番目が入れ替わりました。4番目がかんぽ生命(1309万5000件)、5番目が明治安田生命(1062万7000件)で、ここまでが1000万件を超えています。また、25番目のマニュライフ生命までが100万件を超えています。かんぽ生命は新契約件数では大きく増えていますが、保有契約数はまだ減り続けています。解約や満期になる契約が多いのでしょう。2年間で保有契約件数の増加率が特に高いのは、8倍増のなないろ生命と7倍増のイオン・アリアンツ生命です。なないろ生命は設立してからまだ3年、イオン・アリアンツ生命はイオンの資本が入ってからまだ3年、共にしばらくは高い増加率が続きそうです。
42社の保有契約件数を単純に合計すると1億9492万件にもなります。そのうち件数の多い10社だけで1億3831万件になり、シェアは約71%になります。保有契約件数を日本の人口で割ると、1人あたり1.5件の生命保険契約をしている計算になります。
個人年金保険の新契約件数が最も多いのはソニー生命
次は個人年金保険の新契約件数です。生命保険会社の決算では個人年金保険を個人保険と分けて業績発表しています。表では新契約件数の推移を確認できるよう、4年間(2020年度~2023年度)の新契約件数を載せています。なお、個人年金保険の新契約が全くない保険会社は、表に載せていません。 2023年度の個人年金保険の新契約件数が最も多かったのは、ソニー生命の40万2000件です。個人保険の新契約と比べたらあまりにも件数が少ないですが、順調に増え続けています。2番目が第一フロンティア生命の26万8000件、3番目が第一生命の14万9000件で、第一生命グループが前年から共に増やして並んでいます。4番目の日本生命(12万1000件)は2年前の半分以下ですが、同じグループのニッセイ・ウェルス生命(8万3000件)は大きく増やしています。全社の新契約件数を単純に合計すると132万1000件になります。生命保険協会の年次統計によると、2022年度の個人年金保険の新契約数は99万7526件、2021年度は86万7843件なので、最近は目に見えて増加しています。低金利によって定額年金保険が減ったかわりに、株高によって変額年金保険が増えていると考えられます。
個人年金保険の新契約件数が1000件以上ある生命保険会社は、前年の13社から4社増えて17社となっています。長い老後の生活費への備えとして、個人年金保険も選択肢の一つとして再び増えていきそうです。
個人年金保険は金利の影響を受けやすい
最後に個人年金保険の保有契約件数の推移を確認しておきましょう。表では2020年度~2023年度の保有契約件数を載せています。 個人年金保険の保有契約件数が最も多いのは日本生命で、前年比87万件減の408万6000件となっています。2番目は住友生命の306万5000件、3番目は第一生命の212万2000件、4番目は明治安田生命の209万5000件となっています。前年から第一生命と明治安田生命の順位が変わっています。国内大手生命保険会社の多さが目立ちますが、第一生命以外の3社は2020年度より減っています。保有契約件数の増加が目立つのはソニー生命で、新契約件数が最も多いことから保有契約件数もわずか3年で90万件以上増やしています。全社の保有契約件数を単純に合計すると約1993万件になります。生命保険協会の年次統計によると、2022年度の個人年金保険の保有契約件数は2005万7947件、2021年度は2039万3818件なので、業界全体としては減少傾向にあります。
老後への備えとして、最近はiDeCoやNISA等の他の運用方法を選ぶ人が増えています。選択肢はたくさんあった方がよく、それぞれのメリットデメリットを理解した上で、自分の将来のために納得できる方法で資産形成していくとよいでしょう。
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