夫婦関係

セックスレス日本で「夜の営み」卒業が急加速…!性に関する大規模調査を専門家が読み解く

セックスレス大国日本で「夜の営みの卒業」時期がますます早まっている? 性に関する大規模実態調査「【ジェクス】ジャパン・セックスサーベイ2024」から、最新事情を読み解く。

三松 真由美

執筆者:三松 真由美

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最新の性に関する実態調査から衝撃の大変化が見えてきた!?

最新の性に関する実態調査から衝撃の大変化が見えてきた!?

2008年に避妊具メーカーDurex社(イギリス)が世界26カ国を対象した調査によると、年間セックス回数1位はギリシャで164回(世界平均は103回)、日本の48回は世界最下位。

当時、英国大使館の記者発表にセックスレス改善の専門家として参加した筆者は、「レスに悩む方々が大変多いので、パートナーの気持ちを汲み取って世界標準に近づいてほしい」とコメントしましたが、日本は「回数」のみならず「満足度」も世界最低という悲しい結果でした。

20数年の時が流れ、日本の「性事情」は世界標準に近づいたのでしょうか?
<目次>

最新版「セックスサーベイ2024」を見て唸る

4年に1度実施される「【ジェクス】ジャパン・セックスサーベイ2024」(2023年11月)は、全国の満18歳から69歳までの男女5029名を対象に実施した、性に関する大規模実態調査です。

ジェクスの調査は、47都道府県から均一に収集した107サンプルを都道府県の人口規模を反映させて調整、データの偏りを統計的に処理しているところが特徴です。回答者の属性、男女比はもちろん、既婚・未婚の比率、年代や婚姻歴の長さなども、ほぼ均等になるようにバランスがとられているため、日本人の「性事情」をかなり正確にとらえていると考えてよいでしょう。

今回の調査結果から、まずはミドル世代以降が直面する「夜の営み卒業」時期について見ていきましょう。

セックスする50代、60代は絶滅危惧種!?

「セックスレス」という言葉が一般的ではなかった20年以上前から、セックスレス問題に警鐘を鳴らしてきた筆者は、カップル間のレス度を考察し続けています。

2024年の「セックスサーベイ」では、過去調査の質問内容を整理し、セックスレス傾向の経年変化を見える化しているのが大きな特徴です。

そして今回(2024年)調査と、10年前の2013年調査のデータ比較が、衝撃的なことになっています!

2013年といえば、「セックスレス夫婦、セックスレス恋人たちが増えてきた」と警鐘を鳴らし続けていた筆者に全国紙から取材依頼が入るなど、世間の関心が高まり始めた時期と一致します。「セックスレスがここまでメジャーになりましたか!」と各方面から驚きの声が届き、筆者が運営する夫婦仲相談所へのレスに関する相談件数が倍増したのもこの時期です。
日本人のセックス頻度(2013年) 出典:「【ジェクス】ジャパン・セックスサーベイ2024」

【図1】日本人のセックス頻度(2013年) 出典:「【ジェクス】ジャパン・セックスサーベイ2024」

この当時、セックスレスの割合(性交渉の頻度が月1回未満)は、全体(全世代平均)の30%程度【図1】。この数値でも、「夫婦は夜の営みがあって当たり前」という昭和の常識がひっくり返るような価値観の大転換でしたが……。

2024年調査では、セックスレスの割合は全体で6割超え。女性に限定すれば66.8%と7割に迫る勢いです【図2】。
日本人のセックス頻度(2024年) 出典:「【ジェクス】ジャパン・セックスサーベイ2024」

【図2】日本人のセックス頻度(2024年) 出典:「【ジェクス】ジャパン・セックスサーベイ2024」

年代別に見てみると、20代(※2024年調査は18歳を成人として対象としたため10~20代と表記)はさほど変化がありませんが、30代、40代と坂道を転げ落ちるようにセックス人口が減っていきます。逆に性交渉がある人は50代が男性約3割で女性約1割、60代では男女とも2割弱と、もはや「絶滅危惧種」といってもいいレベルです。

2013年は50代、60代の約7割が性交渉していましたから、この10年で大転換が起きたといってもいいでしょう。

セックスレスが激増した理由とは?

なぜ日本人の性事情に大変化が起きたのでしょうか。考えられる理由はさまざまです。

●共働きの増加
全世代に共通して考えられる要素としては「共働き世帯の増加」でしょう。共働き世帯と専業主婦世帯の数は2000年ごろにすでに逆転し、2013年時点でも共働き世帯の方が多数派でしたが、直近10年間でその差は一層拡大し続けています。

この間に各種子育て支援の施策やサービスが整備され、出産後も仕事を辞めずに働き続ける女性が増えています。イクメンもこの10年で増加しましたが、それでも「女性が忙しすぎる」家庭が多く、「疲れていてエッチどころじゃない」「明日の朝、起きられない」という理由で「妻からのセックス拒否」は増えていると思われます。

●子どもはいらない・経済的に無理
30代のレスの増加については、近年の「子どもはいらない」あるいは「経済的な不安があるので作れない、最小限でいい」という少子化志向も影響しているでしょう。

「子どもを作るため」という大義名分で、したい・したくないに関わらず「性交渉しなければいけなかった」人が減ったことが、セックスレスに拍車をかけていることは十分に考えられます。

●50代、60代にも「働き方の変化」が影響
さらに50代、60代のレス増加については、更年期・ED・互いのホルモン減少による性的欲求の低下、マンネリ化によるエロスカップルの減少ではないでしょうか。

また、この世代も「働く女性」および「働くシニア」の増加が考えられます。

老後不安もあり、出産や子育てで仕事を辞めた女性が子育てを終えた50代から再就職する傾向があります。男性も60歳定年後の再雇用などで仕事を継続するライフスタイルが一般的になり、50代、60代も忙しく、加えて体力低下の追い打ちです。夜は疲れていて「それどころではない」し、休日は「ゆっくりNetflixでも観て休息したい」。その気持はわかります。

セックスレスと「スマホ普及率」に関連も?

スマホ普及率とセックスレスの増加傾向に関連が?

スマホ普及率とセックスレスの増加傾向に関連が?

2013年と2024年の調査データを比較すると、「スマホ」の影響も見逃せない変化のひとつと考えられます。

NTTドコモの調査「2024年一般向けモバイル動向調査」によれば、2013年時点で「携帯電話所有者」のスマホ所有率は36.8%であったのに対し、2024年は97.0%。

スマホの普及により、SNSやデジタルコンテンツに接する時間が増え、「スマホと一緒の時間が楽しい」人が増える一方で、性交渉への関心が薄れたことも想像に難くありません。性を目的とするマッチングアプリ使用者は一定数いますが、それに関しては、また別機会にお伝えします。

性に関心が高い人の場合も、スマホであれば男女ともに誰にも知られず好みのセクシーコンテンツを鑑賞することが可能です。それでマスターベーションに持ち込めば、あえてコミュ力と体力を必要とするリアルセックスに挑まずとも欲求解消はできます。

マスターベーションを最大限快適にするグッズもデザイン性が高く、最近ではネットで気軽に購入できます。こうなると、「リアルよりセルフのほうが、タイパもコスパも断然いい」と考える人が増えても不思議ではありません。

もちろん、この10年の間には「コロナ禍」があったことも見逃せません。実際に「セックスサーベイ」の2020年調査では、すでに2024年調査に近い数値を見せています。人と人との「対面での出会い」や「肌と肌との接触」が極端に失われたコロナ禍を経て、人々の価値観の変化がセックスレスを増加させる要因となったことも考えられます。

筆者予測「夫婦の営み」卒業時期は30代になる!?

筆者が主宰する恋人・夫婦仲相談所では、相談者から「何歳ぐらいまで夫婦でエッチできるものですか?」と質問されることがたびたびあります。

「セックスサーベイ2024」を見る限り、今後は「夫婦の営みは40代で卒業」という夫婦が多数派になっていくのかもしれません。夜の営み以外にも、快適な娯楽ツールやコミュニケーションツールが続々と開発されていくわけですから。

アラフォーの皆さん、今日の営みが「生涯最後のセックス」になってしまっても不思議ではないのが、今のニッポンなのです。

世界標準がどうなったかは、Durex社の最新版を待ちたいと思います(ラテン諸国がいきなり年間40回に落ちるとは考えられませんが)。

<参考>
【ジェクス】ジャパン・セックスサーベイ2024」(ジェクス株式会社)
2024年一般向けモバイル動向調査」(モバイル社会研究所/NTTドコモ)
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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