気になるあの人にお金突撃インタビュー

年収1500万円パワーカップルでも手が届かなくなる?湾岸タワマンの価格上昇はどこまで続くのか

湾岸エリアのタワーマンション価格はなぜ上昇しているのか、そしてこの勢いは今後も続くのだろうか。東京都のマンション価格高騰はニュースでもたびたび話題になり、湾岸エリアのタワマンも例外ではない。湾岸タワマンが人気の理由や現状の相場について、湾岸エリアのマンションに特化して仲介事業を行う株式会社FJリアルティの代表取締役・藤田祥吾さんに聞いた。

執筆者:All About 編集部

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高年収パワーカップルに人気のタワマン

高年収パワーカップルに人気のタワマン

湾岸エリアのタワーマンション価格はなぜ上昇しているのか、そしてこの勢いは今後も続くのだろうか。東京都のマンション価格高騰はニュースでもたびたび話題になり、湾岸エリアのタワマンも例外ではない。湾岸タワマンが人気の理由や現状の相場について、湾岸エリアのマンションに特化して仲介事業を行う株式会社FJリアルティの代表取締役・藤田祥吾さんに聞いた。

湾岸タワマンの人気の理由は?

――湾岸エリアのタワーマンション(以下、タワマン)の価格が上がっていて、ニュースでも盛り上がっていますね。ここまで人気になっている理由はどこにあるのでしょうか。

藤田さん:そうですね、理由として大きい点は、やはりリセールバリュー(再度売却する際の価値)がある程度期待できるエリアだからというのが大きいと思います。最近のタワマンを買う若い方で、30代、40代の方が気にするのは「資産性」です。彼らのマイホーム選びの条件の2つ目か3つ目には、そのワードが出てくるんですね。「買った家がとにかく値下がりしないでほしい」「価格上昇が続いているので、購入時に高値づかみをしたくない」と。

それから、昔は「マイホームは一生住むもの」という価値観がありましたが、今はそうではなくなってきていますからね。リセールバリューといっても、売却時に値上がりを期待するということではなく(そういう人もいますが)、住宅ローンの元本との差額を取りにいくという感じです。購入金額と同じくらいで売れたら十分、といった目線で多くの方は買っていますね。

――住宅ローンとの差額というのは、例えば1億円の物件を買って2000万円分を返済し、残債が8000万円の場合、1億円で売れたら2000万円が手元に残るということですか?

藤田さん:その通りです。それがいわゆる含み益というものですね。そういったリセールバリューを気にして都内で探した結果、湾岸エリアにたどり着くわけです。

――湾岸エリア(のタワマン)の資産性が高いのはなぜなのでしょうか。

藤田さん:湾岸エリアのように、これほど再開発がまとまっている場所というのはなかなかありません。例を挙げると、「築地市場跡地の再開発」「東京ガスの豊洲6丁目の再開発」、加えて「中央区の勝どき・月島エリアの新築マンション」ですね。あとはまだ先ですが、東京ビッグサイトから東京駅をつなぐ都心部・臨海地域地下鉄でインフラ整備も進むでしょう。この先、湾岸エリアは好材料しかなく、資産性を気にする層の人気も集まって、価格が大きく上がっている印象があります。

湾岸タワマンは、まともに取引ができない状況に

――湾岸エリアのタワマンを購入しているのは、どんな人たちなのでしょうか?

藤田さん:多いのは、一部上場企業に勤めている30代若手のパワーカップルなどでしょうか。あとはお医者さんだとか年収の高い人、世帯年収でいうと1500万~2000万円くらい。それで、1億円から1億5000万円くらいを住宅ローンで借りて買うイメージですね。最近は価格が上がりすぎてしまっていて、希望の広さ、間取り、最低限の居住性を確保したうえで、リセールバリューの良さも追及すると予算オーバーになってしまう方も増えてきました。

――そういった資産性の高さを求めるパワーカップルが増えてきて、価格が上昇しているということですが、その傾向はこれからも続くのでしょうか?

藤田さん:質問にお答えする前に補足すると、価格が上がっている要因には高収入世帯の方が購入するというのもありますが、最近は、これにプラスして中国人をはじめとした海外投資家や不動産会社の参入も大きいですね。香港やシンガポールの方もいますが、基本的には中国人がキャッシュ(現金)で購入しているわけです。これについては、いろいろな問題はあるにしろ、価格を引き上げているのは海外投資勢による影響が大きいとみています。そもそも円安で国内のマンションはバーゲンセール状態であり、彼らは相場をあまり気にせず欲しいものを買うので、そのマンションでは考えられない金額の成約が出てきちゃったりする。そうすると、その実績に引っ張られて価格が吊り上げられていきます。

今、相場が上がっている原因がこれだとすると、円安が続く限りは価格上昇がおさまらないと思います。日本人は実績(実際に成約した売買価格)をとても大事にするので、相場より高い金額では買いません。しかし、海外の方がポンと買って、相場を引き上げちゃっている状態が続いているので、その部分が抑えられない限り価格は上がり続けるのかなと思います。

――以前、「湾岸エリアは供給過多で、物件価格が下落するかもしれない」といった、いわゆる2024年問題について、藤田さんも指摘されていたと思いますが、これは何かしらの問題が解決したのでしょうか? それとも、供給以上に海外投資家の需要があって価格が下落してないということなのでしょうか。

藤田さん:どちらかというと後者ですね。需要が強すぎる、買いたい人が多すぎるという状況です。売り出しは確実に増えているけれど「投資家が買う」という例が最近すごく多いですね。晴海フラッグなど、海外投資家や不動産会社がどんどん買っていて、需要の方が強い。周辺の再開発の期待感もあり、焦って売る必要もないので、晴海フラッグなどでは価格をどんどん上げて売りに出している人もいますね。中央区は海外投資家が集中していて、価格上昇が止まらないですし、まともに取引できなくなっています。

――まともに取引できないとは、具体的にどういうことでしょうか?

藤田さん物理的に買えないということです。(まだ市場に出回っていない)新築マンションを狙う方法もありますが、手に入れるには抽選倍率が30倍、40倍の部屋もあるので現実的にはなかなか手に入れられません。そうなると、ほとんどの人は市場に出回っている中の安い物件を狙います。でも、割安物件は多くの投資家も狙っているので手に入れる難易度が高い。

この割安物件を住宅ローンで買うというのはかなり難しいです。なぜなら、住宅ローンの審査に時間がかかったり、ローン解除特約(※)が付帯したりなど、売主にとってはキャッシュで購入する投資家よりも不利な条件になるので選ばれにくいからです。売主としては、受け取れる金額が変わらないのであれば、キャッシュの投資家の方が都合がいい。

今、湾岸タワマンに本当に住みたいなら、住宅ローンで組むなどの審査にかかる時間を考えて、相場よりも少々高めでも買うくらいの覚悟がないと手に入れられないでしょうね。割安な物件を狙うと、購入を狙う投資家にキャッシュ即決で買われてしまいますから。

※住宅ローンを組む際、融資が受けられなかったときに売買契約を解除できる特約がある、その期限のこと

 
藤田祥吾さん

藤田祥吾さん

藤田祥吾(ふじた・しょうご)
湾岸エリアのマンションに特化した仲介会社である株式会社FJリアルティの代表取締役。不動産会社にて、不動産賃貸/売買営業・賃貸管理に12年間従事したのち独立。豊かなマンションライフを送るために湾岸エリアの魅力をSNSやブログで発信している。メディア出演実績は、「日本経済新聞」「NHKクローズアップ現代」「ABEMA TV」ほか。 




取材・文/七海 碧
不動産・金融に特化しているフリーライター。「本質を捉えて分かりやすく伝える」をモットーに、初心者でもすぐに理解できるシンプルな言葉で説明することが得意。ファイナンシャルプランナー、資産運用検定資格を保有。
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