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PTA役員の負担軽減は“有償・外注”がヒント。時給制で「パート事務員」を雇う愛媛県松山市PTAの事例

多くのPTAで活動の省力化が進んでいるものの、依然として課題なのが人手不足。そんななか愛媛県松山市では、有償の「PTA事務員」を雇用し、PTA役員の負担軽減につなげています。

長島 ともこ

執筆者:長島 ともこ

子育て・PTA情報ガイド

「有償のPTA事務員制度」は愛媛県松山市で導入されている

愛媛県松山市で導入されている「有償のPTA事務員制度」

共働き世帯の増加などにより、近年深刻化するPTAの人手不足。多くのPTAでは活動の省力化が進んでいるものの、役員の負担が大きく、なり手がいないなどの課題が全国各地で顕在化しています。

こうした状況のなか、愛媛県松山市では、市内多くの小中学校PTAで有償の「PTA事務員制度」を取り入れています。どのような制度なのか、松山市PTA連合会顧問の河崎元(かわさき はじめ)さんに聞きました(「崎」の正式表記はたつさき)。

有償の「PTA事務員制度」とは

「PTA事務員制度は、PTAが会費から報酬を支払って事務職員さんを雇う制度です。松山市では1980年頃からこの制度ができ、現在まで引き継がれています。令和5年度は、市内の小学校59校(休校中の小学校含む)のうち39校、中学校29校のうち22校が取り入れており、PTA事務員さんは、通称『P事務さん』とよばれています」(河崎さん/以下同)

PTA事務員の主な仕事内容は、各校PTAにより多少異なりますが、
  • PTA会員やPTA連合などに向けた案内文、議事録など各種資料の作成・配布
  • PTA会費の入出金管理、予算管理
  • PTA役員、PTA会員、学校との連絡調整
  • 講演会などのイベント運営事務
など。PTA本部の「庶務(書記)」や「会計」にあたる業務を担っていることがわかります。また学校との連絡調整やイベント運営を行っているPTAもあることから、組織のスムーズな運営を支援する「PTA事務局」としての役割を果たしているといっていいでしょう。

河崎さんによると、PTA事務員は各校に1名配置されており、そのほとんどが役員経験のある保護者OG。職員室もしくはPTA会議室にPTA事務員専用のデスクがあり、そこで業務を行っているそうです。

「勤務形態は各校PTAにより異なり、勤務日数は週1~5日、勤務時間も1日3~6時間程度とさまざまです。毎月の給与は、時給換算して支払うシステムになっています。令和5年度、PTA事務員さんにお支払いした給与総額は、いちばん金額が少ないPTAで18万6000円、いちばん多くて120万円とかなり幅があります。雇用契約は1年が基本ですが、更新も可能です。同じ方が5年、10年と続けるケースも多いです」
 

有償の「PTA事務員制度」のメリット

愛媛県松山市の場合、PTA事務員は職員室で業務を行うことが多い

愛媛県松山市の場合、PTA事務員は職員室で業務を行うことが多い

有償のPTA事務員制度のメリットは、どのようなところにあるのでしょうか。

「いちばんのメリットは、PTA役員の負担軽減です。文書作成やPTA会費の出し入れなどはもちろん、書類の内容を学校にチェックしてもらうなどの雑務も担ってくださるため、役員はその時間を、企画・運営の質の向上のための対話や情報交換など有意義なPTA活動にあてることができるようになります。

小規模校では、教職員がPTA事務を担うことがありますが、会費の収入的にPTA事務員を置くことは難しく、本部の役員がサポートに回ることもあります」

PTA役員は任期が短く、教職員も異動があるため、年度が変わったら会長、副会長、校長先生がすべて入れ替わり、どのように運営したらよいかわからないという場合もあります。そんなとき勝手を知ってくれているPTA事務員さんがいるおかげでスムーズな運営につながることも少なくないそうです。

ちなみに令和5年度、松山市内の小学校のPTA会費の平均は約5600円、中学校のPTA会費の平均は約5500円でした(年額)。全国的にみるとやや高めですが、「有償のPTA事務員制度を廃止して、PTA会費を下げてほしい」などの声は、とくに聞こえてこないそうです。

PTA事務員が“会長以上に”発言力をもってしまうことも

一方で、有償のPTA事務員制度には課題もあります。

PTA事務員とPTA会長は、それぞれ異なる役割を担っています。事務員は、主に事務作業や連絡調整などの業務を担当。会長は、PTA全体のリーダーとして、活動の方向性を示し、組織運営を担います。

「しかし現状では、PTA会長が任期を終えて交代していくなか、PTA事務員は毎年変わらず、気づくと会長以上に発言力をもってしまうというケースもみられるのです。PTA事務員が権力を握ってしまい、何かを変えたくても変えられない空気になって、結果的に組織が硬直化してしまうケースも見受けられます。

また、職員室にデスクがあることにより、学校の電話応対や来客対応をしてしまうなど、PTA業務と学校業務の線引きがあいまいになってしまうという事例もみられます」

これらの課題を解決するために、松山市PTA連合会では令和6年4月に「PTA運営ガイドライン」を策定し、ホームページ上に公開しました。

PTA事務員の役割の明確化や不適切な会計処理の防止など、PTA役員・PTA事務員に対するサポート体制を充実するべく、研修の開催なども企画しています。

自校のPTAで導入を検討する場合のポイント

有償のPTA事務員制度は、メリットがあるとともに課題も存在します。そのため自校のPTAで導入するには、PTA事務員制度の運営に関するルール、学校との連携方法などを関係者の間で十分に議論する必要があるでしょう。

また、PTA事務員への給与をPTA会費でまかなえるのかなど費用対効果も考慮しなければいけません。その他、PTA事務員の選考と役割分担、研修やサポート体制、導入後の評価、会員への説明なども必要です。

メリットとデメリットの両面を慎重に判断し、PTA運営の負担軽減対策の一例として参考にするのもいいのではないでしょうか。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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