今回は、公的介護保険制度、健康保険制度、民間の医療保険における特定疾病の対象範囲を比較します。それぞれの制度ごとに違いを理解しておきましょう。
公的介護保険制度における特定疾病
公的介護保険は市区町村が運営し、40歳になったらすべての人が加入しなければならない社会保険制度です。65歳以上の人は「第1号被保険者」、40~65歳未満の人は「第2号被保険者」となります。
第1号被保険者は、要支援・要介護認定を受ければ、介護保険サービスが利用でき、第2号被保険者は、厚生労働省が定める16種類の特定疾病に該当し要介護(要支援)状態になった場合のみ公的介護保険サービスを利用することができます。
【介護保険制度における16種類の特定疾病】
・がん(末期)
・関節リウマチ
・筋萎縮性側索硬化症(ALS)
・後縦靱帯骨化症
・骨折を伴う骨粗鬆症
・初老期における認知症
・進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
・脊髄小脳変性症
・脊柱管狭窄症
・早老症
・多系統萎縮症
・糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
・脳血管疾患
・閉塞性動脈硬化症
・慢性閉塞性肺疾患
・両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
健康保険制度における特定疾病
「健康保険制度」の特定疾病とは、厚生労働大臣が定めた次の3つです。【健康保険制度における3種類の特定疾病】
・人工腎臓(人工透析)を実施している慢性腎不全
・血友病
・抗ウイルス剤を投与している後天性免疫不全症候群
高度な治療を長期間にわたって継続しなければならないため、「特定疾病に係る高額療養費支給特例」の対象になり、1カ月の医療費の自己負担額は月額1万円となります。なお、人工透析治療を受けている人のうち70歳未満で一定以上の所得のある方は月の自己負担額は2万円となります。
民間の医療保険における特定疾病
民間の医療保険には「特定疾病保障保険」があります。特定疾病保障保険は、生命保険会社が定めた特定疾病と診断されたときに、個別に100万~1000万円で設定した診断一時金が支払われます。この保険の「特定疾病」の対象になるのは、重篤な疾病である「がん、心疾患、脳血管疾患」が対象となり、3大疾病と言うこともあります。保険制度ごとの「特定疾病に対する保障内容」の特徴
それぞれの保険制度における特定疾病に対する保障の特徴は以下の通りです。・公的介護保険制度:加齢に伴う疾病が広範囲にカバーされている。
・健康保険制度:高額な治療費が長期間にわたりかかる疾病が対象となり、自己負担の軽減を図っている。
・民間の医療保険:日本人の死亡原因の上位3位を占める三大疾病(がん、心筋梗塞、脳卒中)に対して、手厚い保障を提供している。
それぞれの保険制度における特定疾病の対象範囲と、それに対する保障の特徴を理解しておきましょう。