Q. 定期預金の金利があがってきているようですが、物価上昇の対策になるでしょうか?
「銀行の定期預金の金利があがっているようです。高いところだと5年で0.5%というのを見ました。高金利の定期預金に預けることの意味とは? 物価上昇の対策になりますか?」(匿名希望)A. 定期預金の金利上昇は物価上昇対策としては有効とは言えません
定期預金の金利上昇はうれしいニュースですが、残念ながら、物価上昇対策としては有効とは言えません。その理由を詳しく解説します。物価上昇vs定期預金金利
日本銀行「定期預金の預入期間別平均金利」と総務省統計局「2020年基準消費者物価指数」を参照して過去30年のデータを見ると、直近10年の物価は上昇傾向にありますが、定期預金金利は0%に近いところで横ばいとなっています。 2024年3月の物価上昇率は2.7%でした。対して、定期預金の5年ものの金利は0.5%程度。この差は、預貯金の実質的な価値が目減りしていることを意味します。定期預金で1000万円を運用すると……?
仮に1000万円を5年間、年0.5%の定期預金に預けた場合、5年後の元本は1020万円程度にしかなりません。しかし、この間に物価が年2.7%ずつ上昇すると、同じ商品を買うには1142万円が必要になります。つまり、定期預金だけでは122万円も不足してしまうのです。定期預金のメリットと賢い活用法
定期預金は、元本が保証され、安全性が高いという大きなメリットがあります。必要な時に引き出せる流動性も魅力です(ただし、途中解約すると利息が減額される場合があります)。また、金融機関が破綻した場合でも、1000万円まで預金保険で保護されます。物価上昇リスクを考えると、資産運用として最適とは言えませんが、「元本割れのリスクを避けたい」「まとまった資金を安全に保管したい」という方には、定期預金は意味のある選択肢です。
なお、定期預金には、固定金利型と変動金利型があります。
固定金利型:預け入れ時の金利が満期まで変わりません。将来の金利変動に左右されず、安定した利息を受け取れます。
変動金利型:半年ごと(金融機関によっては3カ月ごと)に金利が見直されます。金利上昇局面では有利ですが、金利が下がると利息も減少します。
金利上昇局面では変動金利型が魅力的に見えますが、変動金利は短期の預金と同程度に設定されることが多く、物価上昇対策としては力不足です。
まとめ:定期預金は資産の一部として有効活用を
定期預金の金利上昇は、資産形成のチャンスではありますが、物価上昇対策として考えた場合は、残念ながら有効とは言えません。定期預金は、あくまで資産の一部として活用し、他の資産運用と組み合わせることで、物価上昇に負けない資産形成を目指しましょう。ご自身の資産状況やリスク許容度に合わせて、株式、投資信託、不動産など、さまざまな選択肢を検討してみてください。
※専門家に質問がある人はこちらから応募するか、コメント欄への書き込みをお願いします。