Q. 今後のインフレ率は、どの程度見込んでおくべきでしょうか?
「老後の生活費を計算するときに、インフレ率はどの程度見込んでおくべきでしょうか? 最近何もかも値上がりしているのが心配です。また、このままインフレが続くのでしょうか? また、デフレになる可能性はありますか?」(ASさん)今後10年で物価はどのくらい上がる?
A. 「あくまでも予測ですが、10年間で20%以上は上昇するのではないでしょうか」(深野さん)
2023年は、消費者物価指数(生鮮食品を含む総合)の上昇率は3.2%でしたが、今年は年率換算で2~2.5%くらいに落ち着くのではないでしょうか。単純に上昇率が年2%だとすると、毎年その上昇分も含め累積計算をすると10年間で22%ぐらい上昇する可能性がありますね。ただ、2023年の物価上昇率は、不当に低いといわれています。なぜかというと、電気代やガス代、ガソリンなどに補助金が出ている分が抑えられているからです。補助金がなかったとして考えると、昨年の物価上昇率はもっと高くなっていたでしょう。
補助金がなくなることを前提に考えるのであれば、今年の上昇率は年2.5%ぐらいで考えた方がいいかもしれないですね。そうすると、10年間で大体28~29%ぐらい上昇することになると思います。20年で考えると、その倍くらいでしょうか。あくまでも、おおよその目安として考えていただければと思います。
とはいえ、今NISAで投資信託を中心に運用していると、大体リターンが5%前後は期待できますから。個別の株式投資の期待リターンであれば年5~7%ぐらいと考えれば、物価の上昇率はカバーできるでしょう。
そして、今後デフレに戻るかについてですが、それは難しいと思います。物価が少し下がることはあっても、物価上昇率がマイナスになることはないのではないでしょうか。その一つの鍵を握っているのが資源エネルギーです。
今、地球温暖化対策で“グリーントランスフォーメーション”に注目が集まっています。例えば、電気を天然ガスなどの化石燃料からつくるのではなく、自然由来の太陽光や風力から発電するといった動きなどです。
ただ、太陽光とか風力から電気をつくるコストは、天然ガスなどの化石燃料からつくるのに比べて倍くらいかかります。グリーントランスフォーメーションが進行すると、環境には良いのですが私たちの懐には厳しくなりそうです。
日本は資源エネルギーの大方を海外に依存していることもありますし、こういった背景を踏まえて考えると、やはりこの先デフレに戻る可能性は低く、物価は緩やかに上がっていくのではないでしょうか。
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教えてくれたのは……深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など