夫は「きみの血だな」と怒るけど
夫は「きみが気にするから息子までああなるんだ」「息子が神経質なのはきみの血だな」と言うようになった。「そう言われてもねえ。義母も不快だったのでしょう、『私はもう何も持ってこない、何も作らない。あなたたちの家には来ない』と。息子のめんどうもみたくないと。しかたがない、この春から息子は有料の学童保育に通っています。私も出勤と在宅のバランスを見直し、週に2回、在宅ワークと1日は午後から在宅にしました。わりと細かく決められるようになったのでありがたかった」
アザミさんは、あの日の髪の毛が忘れられず、今でも夢に見ることがあるという。自分がおかしいのではないかとメンタルクリニックに行って医師に話してみたが、他のことではおおざっぱなのにそれだけが気になるのは、その人との人間関係の問題ではないかと言われたそうだ。
「確かに、私は実は義母が嫌いなんだと思います。それなのに嫌いじゃないと自分に言い聞かせて近所に住んで。子どものめんどうをみてもらっている手前、懐いたふりもしていた。そうやって自分を騙していたせいで、髪の毛1本にあんなに大騒ぎしてしまったんでしょうね。そう考えて腑に落ちたので、それきり夢は見なくなった。でもやはり義母とは、もう仲のいいフリはできない」
ふと思い出した、気持ち悪い過去の光景
アザミさんはその流れでふと思い出したことがあった。結婚の挨拶に夫となる彼の実家に行ったとき、何かの拍子に義母が息子の額に張り付いていた髪を指でつまんだのだ。その様子がなぜかとても気持ちが悪く、不快だったと彼女は言う。「あとからそれを思い出して、私自身が髪の毛に不快感を持っているのか、あるいは義母と息子の関係に不快感を持っているのか……と考えました。たぶん後者なんです。夫は『普通の息子』として振る舞っているけど、義母は息子離れしていないし、もっとべったりした関係になりたがっている。それを感じるから不快なのかもしれません」
そこまで分析できたものの、やはり義母と一緒に食卓を囲むのはむずかしい。夫はときどき娘を連れて実家に行っていたが、娘も最近では「家にいる」と言うようになった。
「私は夫が嫌なわけではない、義母を嫌っているわけでもないと夫には説明していますが、夫にしてみれば不快だろうとは想像できる。ただ、本当にどうにもならないので、しばらく目をつぶってほしいと頼むしかありません」
ひょんなことから自分の本心に気づくことはある。気づく前には戻れないのだ。その事実を踏まえてこれからどうしていくかを考えていくしかないのだろう。