老後の貯金がまったくできず、収入を増やすこともできず困っています
年金をもらっている家計のお金の悩みに社会保険労務士が回答します。今回は、パートで働く66歳の女性からの相談です。仕事中にケガをしてしまい、パート収入がゼロになってしまったとのこと。貯金はなく、夫は持病で働けず、生活保護の申請も断られてしまったといいます。社会保険労務士の拝野洋子さんが回答します。パート中にケガをしてしまいました
あやさん
女性/パート・アルバイト/66歳
関東/借家
■家族構成
夫(69歳)、次男(31歳)
■相談内容
退職した夫(持病があり働けない、自分の身の回りのことで精いっぱい)と、ニートの次男(職歴なし、買い物に出かける程度)と同居しています。長男は結婚して家を出ています。老後の貯金がまったくできず、収入を増やすこともできないため困っています。
夫は年々体が弱ってきており、数年後は介護が必要になるかもしれません。次男は仕事も介護もできそうにありません。先月、私が仕事中にケガをしてしまい、収入がゼロになりました。
私は年金をほとんど払ってこなかったうえ、繰り上げて受給しているため年金が少ないです。夫の年金と合わせても生活ができず、長男や親族から数万円ずつお金を借りて何とかしのいでいますが、これ以上借りることはできません。生活保護の申請窓口にも行きましたが、夫の年金がそれなりにあるため保護は受けられないとのことでした。
私は今後仕事に復帰する予定ですが、年齢的にも仕事をこれ以上増やすことはできません。貯金もなく、保険なども加入していないため、今後が不安で仕方ありません。どうすれば生活を立て直せるでしょうか?
夫の介護や、次男の今後のことも心配です。難しいとは思いますが、アドバイスをお願いします。
■家計収支データ
■家計収支データ補足
(1) 住居費3万2300円の内訳について
市営住宅の家賃3万200円、共益費2100円です。
(2)食費ついて
外食は一切していません。
(3)通信費の内訳について
スマホ3台で5000円、NHK2200円、固定電話3850円
(4)雑費の内訳について
皮膚科と内科の医療費7000円、新聞4000円、日用品2500円
(5)介護保険料について
ひと月あたり7560円×2人分です。生命保険や医療保険、個人年金などの民間の保険には加入していません。
(6)毎月の赤字について
赤字が出た場合は、家賃や介護保険料の支払いを翌月まで待ってもらう、病院に行かないなどで対応しています。親戚は頼れないので、親戚から借りるのは最終手段にしています。
(7)公的年金額について
夫の年金額の手取りは月12万5000円、相談者の年金額は月4000円(市役所からのアドバイスで、手続きをすれば相談者の年金は今後、月2万5000円に増える予定)。
(8)相談者の手取り収入5万円について
現在骨折にて休職中のため、傷病手当金4万6000円、公的年金4000円を受け取っています(今後復職すると、傷病手当金がなくなり、パート代は手取り5万円程度になります)。
相談者の収入に関して、今後パートに戻った場合は以下となります。
【現在】傷病手当金4万6000円、年金4000円→合計5万円
【今後、パートに戻った場合】パート代5万円、年金2万5000円→合計7万5000円
年金額の変更の手続きは行いましたが、金額が変更になる時期は不明です。復職の時期も未定です。
■社会保険労務士からの3つのアドバイス
アドバイス1 まずは電気代と食費などを工夫して少しでも貯金を
アドバイス2 介護保険料は所得から考えて高めなので、減免を受けられる可能性も
アドバイス3 次男の方はハローワークでの職業訓練などを検討してみては
アドバイス1 まずは電気代と食費などを工夫して少しでも貯金を
仕事中におケガをされ、貯蓄も心もとなく、今後が不安とのこと。いざというときに対応するためには貯金が必要です。毎月、少しでもいいので貯金をしていくようにしましょう。現在月の収入が17万5000円、支出が約17万5000円で、ぎりぎり収支は赤字になることなく、おさまっているようですが、貯金はできていません。まずは毎月の支出の中で、電気代、水道代、食費の部分を工夫してみてはいかがでしょうか。
3人暮らしで電気代2万円が少し高いかと思います。1万5000円くらいまでに下げられそうです。アンペア数を30Aや20Aに下げる、電力会社を変えて電気代とガス代をまとめるなどして、節約ができそうです。資源エネルギー庁の節電に関するサイトなどを見てみてください。
食費は月6万5000円ですが、3人家族であれば、月6万円ぐらいにおさめ、月5000円くらいの節約を目指しましょう。夕方遅い時間か朝スーパーが開店する時間に買い物に行き、値引き品を中心に買い物をしましょう。買った食品は早めに料理して食べれば楽に食費を削減できるでしょう。
嫌いでなければ肉は鶏肉やひき肉中心にし、魚は値引き品を中心にして安いときにたくさん買って冷凍する、など工夫をします。うまくすると月1万円の節約することも可能かもしれません。ただし、食事は健康を保つうえで大事なことなので無理のない範囲で節約しましょう。
さらに、家族3人が、それぞれスマホをもっているのであれば、固定電話や新聞代(合計約7000円)を思い切って削減してしまうという手もあると思います。
以上のことをいくつか実践すれば、最大で月1万7000円は節約できるのではないでしょうか。相談者が仕事に復帰すれば、収入が増えますので、その分を貯金にまわすことができるでしょう。
アドバイス2 介護保険料は所得から考えて高めなので、減免を受けられる可能性も
さらに、介護保険と医療保険の自己負担分は、世帯の所得に応じて上限があります。世帯の合計所得の割に介護保険料が高いと思います。申請すれば、それぞれ減免を受けられるのではないでしょうか。早めに市区町村役場の介護保険課に相談してみましょう。もしこのまま、相談者が仕事に復帰できずに、傷病給付金がなくなった場合は月の手取り収入は15万円(夫の年金12万5000円と相談者の年金2万5000円の合計)となり、月1万7000円の支出を削減できたとしても、現在の支出を引くと収支は赤字になってしまいます。
その場合は、お住まいの地域の最低生活費水準を考えても年金との差額分の生活保護を受給できる可能性はあると思われます。生活保護の申請を断られたとしても、めげずに申請だけはしてみましょう。
さらに、現在の賃貸住宅の家賃は、お住まいの地域の家賃相場からは安い方と思います。もし今後、住みかえを検討する場合、居住者の年齢が60歳以上であることなどの要件はありますが「高齢者向け優良賃貸住宅制度」もあります。家賃自体は今より高額になりそうですが、自治体によっては、家賃補助が出ることがあるそうです。
経済的負担を軽減する助成をしている市区町村もあるので、お住まいの市のHPや市区町村役場などに、確認してみることをオススメします。
どうしても赤字が出てしまう月がある場合は生活福祉資金貸付を視野にいれましょう。低所得世帯・高齢者世帯・障害者世帯が日常生活を送るうえで、自立生活を送るために、一時的に必要であると見込まれる経費を対象とした借り入れができます。低利子で借り入れができます。
アドバイス3 次男の方はハローワークでの職業訓練などを検討してみては
次男の方は、現在働いていないとのことですが、ハローワークでは求職者支援制度があり、無料で受けられる職業訓練を実施しています。職業訓練を利用することで、世帯年収が低ければ給付金も支給されますし、融資制度もあります。問い合わせてみてはいかがでしょうか?厚生労働省・求職者支援制度
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyushokusha_shien/index.html
もし、職業訓練などを受けられる状態でないのでしたら、ご本人の意向によりますが、心療内科などで診察を受け、状態によっては障害年金の障害等級2級、1級などに認定されるかもしれませんし(請求手続きは煩雑ですが)、障害者手帳などの取得も可能性があります。障害者手帳があると受けられる減免制度があります。
まずはお体をお大事にされて、無理のない範囲で節約から試してみてください。お体が良くなることをお祈りします。