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「パチスロで借金300万円、闇バイトに応募」31歳男性が明かすギャンブル依存症のリアル

若者の間で闇バイトに応募する人が後を断ちません。なぜ、リスクの高い危険な犯罪に手を出してしまうのでしょうか。特殊詐欺の「受け子」「出し子」を引き受け、逮捕された鈴木圭吾さん(仮名・31歳)は、ギャンブル依存症から借金に追われ、闇バイトに手を出してしまった一人です。2023年に刑期を終え社会復帰を目指している鈴木さんに、闇バイトに応募した経緯やギャンブル依存症の実態を聞きました。

執筆者:All About 編集部

ギャンブル依存症の末路とは……。

ギャンブル依存症の末路とは……。

若者の間で闇バイトに応募する人が後を断ちません。なぜ、リスクの高い危険な犯罪に手を出してしまうのでしょうか。

特殊詐欺の「受け子」「出し子」を引き受け、逮捕された鈴木圭吾さん(仮名・31歳)は、ギャンブル依存症から借金に追われ、闇バイトに手を出してしまった一人です。2023年に刑期を終え社会復帰を目指している鈴木さんに、闇バイトに応募した経緯やギャンブル依存症の実態を聞きました。

最初は1000~2000円で遊んでいたはずが……

鈴木さんは小学生の時に両親が離婚。経済的に余裕はありませんでしたが、授業料免除や奨学金の制度を利用してなんとか大学まで通いました。

大学時代に友人の誘いで、パチスロを始めた鈴木さん。最初は、1000~2000円ほどの少額を使って気軽な気持ちで楽しんでいましたが、だんだんとその世界にのめり込んでいきます。

「一度勝ちを経験してからは味を占めてしまい、授業やバイトのない時間にパチスロに行くようになりましたね。勝った時の高揚感でハマっていって、負けてもまた次勝てばいいかぐらいの気持ちでした」

債務整理したはずなのに闇金にまで手を出す始末

鈴木さんは社会人になってから友人と休みが合わなくなり、ストレス発散のためにパチスロに通う頻度や注ぎ込む金額が増えていきました。その結果、銀行のカードローンや消費者金融に手が伸びていったといいます。

複数の金融機関から借りている金額が300万円ほどに膨れ上がった時点で、鈴木さんは地元の弁護士事務所に相談し、一度は債務整理しました。それでもパチスロをやめられず、今度は闇金にまで手を出してしまいます。

「闇金の中でも、僕はTwitter上の個人間融資で借りたんですが、利息が1週間ぐらいの短期間で返済できないと、どんどん利息が上乗せされる仕組みで、えげつないんです。給料日までの時間稼ぎのために借りていました。それでもやめられず、友人や会社の同僚に1000円、2000円貸してくれと頼んでは、安いレートのスロットを打ちに行っていましたね」

「話だけでも聞いてみよう」と軽い気持ちで闇バイトに応募

闇金にも手を出しすぎて「もうどうにもならない」という時、追い詰められた鈴木さんは、ついにTwitter上で見かけた闇バイトに応募してしまいます。

「最初は話だけでも聞いてみようと、(DMなどで)やりとりを始めたのがきっかけですね。仕事の内容を聞いて、これはヤバいやつだなと思いました。でも、冷静に考える余裕もなく、やらないと自分の生活が追いつかなくなっていたので……。精神的にも追い込まれていたため、相手に1回限りと伝えた上で、バイトを引き受けました」

その後、鈴木さんは、相手の要求に応じて身分証明証と実家の航空写真、銀行口座のコピーなど個人情報も渡してしまいます。

闇バイトでは個人情報を送ってしまうと、後に犯罪組織から「個人情報をネットにさらす」「家族に危害を加える」などと脅されて、やめることができなくなる危険性があります。しかし、当時の鈴木さんは、このような危険性についても認識がありませんでした。

罪悪感、後ろめたさを感じながらも「受け子」「出し子」を継続

実行当日、鈴木さんは「指示役」(特殊詐欺で指示を出す人)から指定された家を訪れます。警察を名乗り、耳に当てたイヤホンから指示を受けながら「(キャッシュ)カードが悪用されたので取り替える」と偽ってキャッシュカードを受け取りました。これがいわゆる「受け子」の役割です。

鈴木さんは「受け子」と同時に「出し子」も引き受けており、そのカードを持って指示されたATMに行き、ターゲットの銀行口座からお金を引き出していきます。

「キャッシュカードで引き出したお金は、(自分の)報酬分の5%を引差し引いて、残りをお菓子かなんかの箱に隠してコインロッカーに入れるように指示されました。1日の引き出しに限度額があるので数日に分けて引き出して、銀行口座の残高がゼロになったら、キャッシュカードにハサミを入れて処分します」

1回限りでやめるつもりだったものの、実際にお金が手に入ると「もうちょっとやったら自分の生活が楽になんじゃないか」と誘惑に駆られ鈴木さんは2件目、3件目と闇バイトを引き受けました。

「1件目は130万円ほど、2件目は700万円ほど引き出しました。自分の口座に入った報酬は合計で40万円ぐらいです。3件目で指示された家を訪問した時、私服警察に取り押さえられました。その地域で特殊詐欺が多発していたことから、警察が巡回していて僕の怪しい行動に気づいたようです」

現実逃避していた日々を振り返って

一般的に特殊詐欺の「受け子」は詐欺罪、「出し子」は窃盗罪が適用されます。鈴木さんも詐欺、窃盗などの罪で逮捕起訴され、執行猶予なし・懲役3年の判決が言い渡されました。

「逮捕されて、自分は何をやっているんだろうと後悔しました。当時はこのままだと生活ができないと思って、本当に追い詰められた状態でしたが……、被害者の方にも、親や職場の人、地元の人にも申し訳ない気持ちです」

2年7カ月間を刑務所で過ごした後、刑務所出所者や依存症者などの回復やサポートを行なっている一般財団法人ワンネス財団の回復施設に入所。現在は生活保護を受けながら、ギャンブル依存症の回復に取り組んでいます。

「ギャンブルでまた身を滅ぼすんじゃないかという不安があり、依存症者向けのカリキュラムを受けています。カウンセリングだけでなく、他のメンバーと一緒に遊んだり、外に出かけたりといったワーク(もしくは活動)などを通じて、自分のネガティブな面だけでなく、ポジティブな面にも向きあう機会を得られています」

【一般財団法人ワンネス財団】
2005年に薬物依存症者の回復共同体を開設。その後、ギャンブル依存症特化型施設などさまざまな法人や施設を設立し、2014年に各法人の活動を連携一体化するため「ワンネス財団」を命名。ウェルビーイングが低くメンタルヘルスに課題を抱える人たちの孤独の解消と自己実現を支援。罪に問われた人、ひきこもり者、薬物やギャンブルなどの依存症者の心身の回復と、その後の成長を支援している。 

ギャンブル依存症者は相談する勇気を

最後に、鈴木さんにギャンブルに依存しやすい人にはどんな特徴があると思うか聞いてみました。

「意外と真面目な人、リスク管理ができない人、目先のことだけを考えて行動するタイプの人が、ギャンブルにハマりやすいのではないかと思います。パチスロにのめり込んだ時の僕がそうだったので……。自分の行動に対する見通しが甘く、自己管理ではない人は依存しやすいのではないかと」

ギャンブル依存症から借金、犯罪に手を染めてしまった鈴木さんは、「もっと早くに依存症者を支援している施設や団体を知っておけばよかった」と後悔しています。

ギャンブルの依存に苦しんでいる人は一人で抱え込まず、支援に取り組んでいる専門の医療機関や民間団体に相談してみましょう。

取材・文/秋山 志緒
外資系金融機関で広報業務に従事した後に、フリーのライター・編集者として独立。マネー分野を得意としながらも、ライフやエンタメなど幅広く執筆中。ファイナンシャルプランナー(AFP)。X(旧Twitter):@COstyle
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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