パイロット「フリクションシナジーノック」各275円(税込)。インク色は左からブラック、レッド、ブルー、グリーン、ブルーブラック、オレンジ、ピンク、ライトブルー。ボール径は写真の0.3mmの他、0.4mm、0.5mmがある
シナジーチップを搭載したボール径0.3mmのフリクションが登場
とはいえ、ボール径0.4mmのタイプしかなかった「フリクションポイントノック04」とは違い、今回は0.3、0.5mmのタイプもラインアップ。また、軸のデザインも大幅に変更しているので、ユーザー側からすると“新製品”というイメージです。実際、今回発売された「フリクションシナジーノック(0.5mm)」を使ってみたところ、従来の「フリクションボールノック」の0.5mmと比べて、ハッキリと違いが分かるくらいなめらかにスムーズに書けることに驚きました。
フリクションで0.3mmの激細なのに、かなりなめらかに、引っ掛かりなく書けるのは、シナジーチップならでは
つまり、これが「シナジーチップ」の威力なのでしょう。2016年にゲルインクボールペンである「ジュースアップ」で登場した「シナジーチップ」ですが、その威力を改めて思い知った気がしました。
極細字を滑らかに書くために開発された「シナジーチップ」とは?
「もともとは、2010年代に入って、特に国内で“細書き市場”がとても大きくなってきたという背景がありました。日本では漢字を書くということもありますし、スケジュール帳などの狭いスペースに書き込むシーンも増えたということもありました。当時、細い文字をボールペンで書くならペン先は『パイプチップ』が主流だったのですが、その構造上、『コーンチップ』に比べると、どうしてもインクの出が悪くなったり、パイプチップの耐久性に問題があったりしました。そういう背景から、細く書けるけれど、同時になめらかに書けて耐久性が高いものを生み出そうというところから生まれたのが『シナジーチップ』です」と解説してくれたのは、株式会社パイロットコーポレーション、グローバル企画部筆記具企画課主任で、「フリクションシナジーノック」の開発を担当された長田康暉さん。
「パイプチップ」は、細いパイプの先にボールを付ける構造なので、どうしてもインクの通り道が細長くなります。その分、ボールの手前までたっぷりとインクを供給できる「コーンチップ」に比べると、インクの流量が減ってしまうのです。また、パイプが曲がりやすいなど耐久性にも欠ける部分があるのです。
一方、「コーンチップ」は、インクの流量も多く、耐久性も問題ないのですが、ボール径を小さくすると、筆記時にチップが紙面に当たってしまうので、小さいボールを入れるのが難しく、極細字用にはあまり向いていません。 「そこで、『パイプチップ』と『コーンチップ』の長所を掛け合わせ、パイロット独自の『シナジーチップ』が生まれました。パイプを短くして、なるべくボールに近い部分にインクを溜めるダムのようなものを作るという構造です。ただ、染料系のゲルインクのように、インク自体の粒子が小さければ、パイプチップでもインクの出は良いのですが、粒子が大きいフリクションインキでは、『シナジーチップ』はより効果的です」と長田さん。
それなら、細字用のボールペンは全部シナジーチップにすれば良いのではとも思ったのですが、「シナジーチップを製造するのは、一般的なチップよりとても手間がかかります」という長田さんのコメントのように、コストや手間の問題もあり、そう簡単な問題ではないようです。
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