2024年松の内が明けてまもなく、目白の旧田中角栄邸の建物が全焼した火事は記憶に新しいでしょう。出火原因は仏壇の線香だそうです。後の取材で「昼ごろに線香を2本焚いた。ろうそくの火は消した」と、長女で元外相の田中真紀子さんのコメントがありました。
これに対して、「そもそも線香って、火をつけたらそのまま燃えるまで焚き続けるのでは?」「線香の火って、熱源が小さいし火事になるのだろうか?」と疑問に思った人も多いのではないでしょうか。
消えるまでそばを離れてはいけないのか? 線香が火災になるまで
火が消えるまで線香のそばを離れてはいけないのでしょうか?ライターやろうそくのように炎が直接目に見えるものは着火源となりやすく、可燃物に引火するとたちまち燃え広がってしまうため気をつける人は多いでしょう。しかし線香の場合は、自然に燃え尽きるまでそのままにしておく人が多いのではないでしょうか。
線香を香炉に立てて(または寝かせて)焚くだけなら、火災にはなりません。線香の火は「微小火源」といって、熱も光も小さく、ろうそくと比べてすぐに大きな火災につながる可能性は少ないのです。
問題が起きるのは、何かの拍子で線香が倒れてしまったり、香炉ごと落ちてしまったりしたときです。燃えやすいものに火が移ると、時間をかけてじわじわと広がっていきます。例えば、近くにあった紙類やカーテン、カーペット、和室なら座布団が引火しやすいものになります。
仏壇火災を防ぐには? 隣の線香の炎により途中で折れてしまうことも…
線香やろうそくを出火原因とする仏壇からの火災を防ぐためにできる工夫をご紹介します。■仏壇の周囲に燃えるものを置かない
仏壇の周りに燃えるものを置かないことが一番の対処法です。経本や過去帳などの紙類は、ろうそくや線香の近くに置かないようにしましょう。近年は、造花を飾っている家も多く見られます。しかしこれも素材によっては燃えやすいため、ろうそくや線香から遠ざけてお供えするようにしましょう。
■線香を何本も立てるときは要注意!
線香を何本も立てると、隣の炎が燃え移って途中で折れてしまうことがあります。そして、折れた線香が香炉の外に落ちてしまい座布団などに引火してしまうと、燃え広がってしまいます。一度に何本も焚いている場合は、必ずそばで火が消えるまで見届けるか、1本だけ残して他は消すようにしましょう。
■万が一に備えて、防炎グッズを使う
線香の炎がついて燃え広がることを防ぐために、万が一に備えて防炎グッズを利用しましょう。香炉やろうそく立ての下に「防炎マット」を敷くと汚れ防止にもなります。またろうそくが倒れてしまった場合でも、「防炎座布団」なら炎が広がらずにすみます。
■短寸ろうそくを使用 近年は仏壇も小型化しているため、ろうそくも短寸タイプが人気です。5分程度で燃え尽きる短いろうそくを使えば、万が一消し忘れてしまっても安心です。短寸タイプは市販されていますが、日常使いの線香を短く折って使用することもできます。
■安全性の高い仏具に変える 重心が低く安定性のある仏具に変えてみてはいかがでしょうか。なかでも一番火災の危険性が高いろうそく立ては、低重心のものがおすすめです。短寸のろうそくに合わせられるミニサイズのろうそく立てや、倒れてしまうリスクを避けるために線香を寝かせて焚く香炉を検討してもいいでしょう。またカップ型のろうそくは比較的倒れにくいのですが、安心は禁物です。
「LEDろうそく」や「LED線香」も活用を
消し忘れが心配な場合は、火を使わないLEDのろうそくや線香を使用してみてはいかがでしょうか。とくに高齢者世帯、小さい子どもやペットがいる家などにおすすめです。ちなみに介護施設に仏壇を持ち込む場合は火気使用が難しいため、LEDろうそく・線香を使用するケースがほとんどです。 また、仏壇の設置場所も確認しておきましょう。近年は小型仏壇が多くなり、安定感のない棚の上に置かれているケースもみられます。線香は小さな熱源ですが、地震で倒れてしまうことも考えられます。できるだけリスクを避けるための対策をしておくことをおすすめします。【参考】令和5年版 消防白書(総務省消防庁)