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円ベースのビットコインが史上最高値を更新、その背景とは?

円ベースのビットコインが史上最高値を更新しました。背景には、ビットコイン現物ETF誕生と為替の円安推移があります。計算上、円ベースのビットコインは960万円までは上がる余地が十分あると考えますが、ここまでいくと1000万円が見えてきます。

田代 昌之

執筆者:田代 昌之

資産運用ガイド

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円ベースのビットコインが史上最高値を更新

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円ベースのビットコインが史上最高値を更新しました。背景には、ビットコイン現物ETF誕生と為替の円安推移があります

主に国内で売買されている円ベースのビットコインが史上最高値を更新し、900万円を超えてきました。ドルベースのビットコインはまだ史上最高値手前ですが、円ベースのビットコインはあっという間に2021年に付けた史上最高値750万円水準を更新しました。

今回の上昇のきっかけは、年明け1月に承認された「ビットコイン現物ETF(上場投資信託)」と「為替の円安ドル高」にあります。

ニュースやSNSの情報などで、こうした話は「聞いたことがある」という方も少なくないと思います。ですが、耳にしたがよくわかっていないという方も多いでしょう。

今回は、この2点がどのようにビットコインの価格を押し上げたのかご説明したいと思います。

「ビットコイン現物ETF」って何?

東京時間の2024年1月11日未明、暗号資産業界が待ちわびたニュースが流れました。米証券取引委員会(SEC)が「ビットコイン現物ETF」の上場申請を「承認」したのです。

「ビットコイン現物ETF」とは、ビットコインを投資対象にした上場投資信託のことです。

今回承認された「ビットコイン現物ETF」は、申請が上がっていた11社分すべてでした。暗号資産関係者にとっては、「ビットコイン現物ETF」の承認は悲願といえるものでした。実は2013年から申請の歴史は始まっていたのです。

大手暗号資産交換所「ジェミニ」を運営する暗号資産億万長者のウィンクルボス兄弟が、最初にビットコイン現物ETFの申請をSECに提出したのが2013年です。承認されるまでに苦節11年かかったわけです。

これまでSECが却下した主な理由は、「価格操作の可能性がある点」「投資家保護策が整備されていない点」の2点でした。ビットコインの市場はまだ未成熟で、ほかの金融資産と比べても時価総額が低いことから、価格操作を行うことが容易であるうえ、法整備が追い付いていないことから投資者保護の施策が十分されていない、ということが理由でした。

が、今回、承認された「ビットコイン現物ETF」はひと味違いました。ETFを上場させるナスダック市場は、市場操作を防ぐ「監視共有協定(Spot BTC Surveillance-Sharing Agreement)」という制度を導入し、価格操作を防いだのです。

なぜ暗号資産業界は承認にこだわったのか?

では、なぜこれだけ暗号資産業界は、「ビットコイン現物ETF」の承認にこだわり、その結果に歓喜したのでしょう?

それは、新しい投資資金が暗号資産市場に流入する可能性が非常に高い点にあります。これまでビットコインに興味を持つ投資家が市場で手に入れるには、現物のビットコインを暗号資産交換業者が運営する取引所にて購入するしか獲得手段はありませんでした。

これが、「ビットコイン現物ETF」であれば、投資家はSECが監督する証券会社の口座を通じて売買しますので、証券会社が破綻しても、SECの管理下、投資家の資産は保護されます。また、ハッキングなどのリスクも抑えられますのでリスクは軽減されます。

ETF市場は7兆ドル(日本円換算で約1000兆円)ともいわれる市場規模があります。暗号資産市場の時価総額が1.6兆ドル(約220兆円)ほどですので、4倍強の市場規模です。ゴールドETFなどさまざまな種類を有するETF市場に、「ビットコイン現物ETF」が加わるという新たなETFが増えることで、新たな投資資金が暗号資産市場に流入する可能性は非常に高いと暗号資産業界は考えているのです。

現状、日本の証券会社ではまだビットコイン現物ETFを取り扱っていないことから、日本の投資家が日本の証券会社で購入することはできませんが、今後、取り扱うこととなれば購入も可能となるでしょう。

ビットコインの価格はどうなったか?

では、ビットコインの価格はどのように推移したのでしょうか。

実際、2023年6月15日に資産運用会社の巨人である「ブラックロック」が「ビットコイン現物ETF」の申請を行ったというニュースが流れたタイミングで、2.5万ドルだったビットコインは、6月24日には3万ドル台に乗せました。

その後、多くの資産運用会社が申請を行ったことで、暗号資産業界は「誕生」への期待感を高め、ビットコインの価格はじりじりと上昇していきました。期待感先行の地合いが続いたなか、いよいよ2024年1月にも承認される可能性が高い、とのニュースが駆け巡った2023年12月には4万ドル台に突入しました。

そして、年明けの誕生後、すぐに「ビットコイン現物ETF」の売買はスタートしました。スタート直後の数週間は様子見ムードが続いていましたが、投資家の売買が活発となったことを確認するとビットコインの価格は上昇を再開。東京時間2月28日22時には6.0万ドルまで上昇しました。

為替の円安推移という破壊力

ただし、ドルベースの史上最高値は6.4万ドルと、高値更新をしませんでした。では、円ベースのビットコイン価格が史上最高値を更新しているかというと、ここでもう1つの要因、為替の「円安ドル高」が登場するのです。

ドルベースのビットコインに為替レート(1ドル150円)をかけて円に交換しますと、6.0万ドルなら日本円では900万円という水準になります。ドルベースの史上最高値6.4万ドルだと、960万円という水準です。

これがドルベースのビットコインがまだ史上最高値を更新していなくても、円ベースのビットコインが史上最高値を更新している背景なのです。

ということは、為替が円高ドル安に進み、2012年頃の1ドル80円台になれば、ドルベースのビットコインが史上最高値を更新しても、円ベースのビットコインはいつまでたっても高値更新ができないこととなります。

今後もドルベースのビットコインの価格が伸びて史上最高値までいき、かつ現状の円安ドル高のままであれば、円ベースのビットコインも960万円まで上がる余地が十分あると考えます。さらに、ここまでいくと1000万円も見えてきます。

為替の影響力はすさまじいものがあります。味方となれば心強いですが、敵となれば怖いものであるということを、忘れてはいけません。
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