老後2000万円問題、どう考える？
「老後2000万円問題は大げさな例であり、実際にはそこまで問題ない。ということを動画でみかけました。どう思いますか？」
今回は、この質問にお答えします。
老後2000万円問題は大げさなのか？
そもそもの話として「老後2000万円問題」とは、どのような問題だったのでしょうか。本題へ移る前に、まずおさらいしましょう。「老後2000万円問題」の発端は、令和元年6月3日に開示された金融審議会・市場ワーキンググループによる「高齢社会における資産形成・管理」という報告書です。
この報告書の中には「仮に老後に高齢者夫婦が平均的な生活費である月26万円で生活するとしたら、月21万円の年金収入では月5万円赤字」と書いてあります。月5万円の赤字が30年続くと、だいたい2000万円足りないことになります。言うまでもなくこれは「もしもの話」を試算しただけのものです。
中原もこの資料に目を通しましたが2000万円が不足するという試算結果を大げさとは感じませんでした。年金だけでは老後に2000万円足りなくなる人は出てくると思いますし、それ以上足りなくなる人も出てくるでしょう。
とはいえ、中原は2000万円問題が炎上したときは「だから何だ？」としか感じませんでした。定年後にどれくらい生きるかはほとんどの人には分からないし、老後にかかる年金額や生活費だって人それぞれで「どういう暮らしを送るか？」全く異なるからです。
そもそも年金は「社会保険」との名のとおり、「年金に頼っていれば貯金なんかしなくても老後は大丈夫」と、未来を保証するものではありません。
年金の役割って？必要最低限のセーフティネット
年金の役割は「老後に困窮する人を未然に防ぐため」に、必要最低限の貯蓄を促すセーフティネット的な役割で行われています。年金だけでぜいたくすることは想定してないでしょうし、むしろ年金が余りに余っていて高齢者が悠々自適に暮らしていたら批判を浴びそうです。そんなことは誰でも分かっているし、だから「年金だけを頼ると危ない」と多くの人は自前でも備えています。自分でも備え、年金でも備える。そして、老後は備えの範囲で身の丈にあった暮らしをする。これこそが健全な考え方なのですが、この報告書で試算された「2000万円」という数字にあまりにもセンセーショナルで、数字ばかり独り歩きしてしまったようです。
中には「どうせ貯めたって足りないんだから、年金を蓄えるなんて無駄だ」という考える人も出てきそうですが、論理的に考えるとむしろ逆です。
本当に年金だけで暮らすつもりなら年金をもっと蓄える必要があります。「いまの年金じゃ足りないなら、これからはもっと国に年金保険料を徴収してほしい」と考えるのが筋です。そんなことをいう人はほぼ見ませんが……。
自助努力が前提である以上、大切なのは「自分の将来を委ねることになる年金制度を早いうちからきちんと理解し、間に合わなくなる前に老後に受け取れそうな年金を試算して、いまから定年までにいくら蓄えておくべきか知り、備えられる範囲で老後に備えること」です。
年金の受取予定額が多い人の生活はラクでしょうが、ゆとりある生活を望むか年金の受取予定額が少ない人は、もっと生活費を切り詰めるか、年金以外にもきちんと貯蓄をしておかないと苦しいです。
さいきんでは、日本年金機構の「ねんきんネット」やさまざまな金融機関のホームページで、将来受け取れる年金額を無料で試算できます。こういうツールを使って、自分の家計を理解し、いまの暮らしを犠牲にしすぎず、上手に老後に備えるのがよいと思います。
