価格が高騰する都内マンション……実は今が買い時なのか!?
地方の人口減少は止まらず、東京への一極集中がさらに深刻化
国立社会保障・人口問題研究所は2023年12月、2050年までの「地域別将来推計人口」を公表しました。同研究所では5年に1度、国勢調査が行われた年から30年間の地域別将来推計人口を公表しており、今回は2020年の調査に基づいて推計されたものとなります。この推計によると、2050年の日本の総人口は2020年と比べて2146万人減の1億468万人となり、東京都を除く全ての道府県で2020年の人口を下回ります。また、総人口に占める東京の人口割合は、2020年の11.1%から2050年には13.8%に上がります。
つまり、地方の人口減少が進行する一方、東京への一極集中は一層深刻化することになるのです。
東京の人口も2040年がピーク、都内マンションの資産価値は大丈夫?
もっとも、東京でも人口が増えるのは2040年までで、それ以降は減少に転じると推計されています。このことは都内でマンション購入を検討している人にとって、ネガティブな材料と思えるかもしれません。もちろん、マンションを購入して住み続ける限り、たとえ資産価値が減少しても、そのマイナスは現実化しません。しかし、そのマンションに住み続けることができなくなった場合、売ったり貸したりする必要が出てきますが、その際、資産価値の減少が売却価格や賃料に反映されてしまいます。
このため、将来的に資産価値が減少しそうな物件は避けたいと考えるのが一般的でしょう。
結論から述べると、需要と供給とのバランスといった観点では、これまでどおり、あるいはこれまで以上に、特に標準的な駅近のマンションであれば、東京で買っておけば、売るときにも貸すときにも心配ないと言えそうです。
なぜならば、少なくとも2040年までは、日本全体としては人口減少の流れの中でも、東京の人口は増えながら人口割合も増えているという状況にあるためです。
結局今は買い時なの? 資材費の動向がカギとなる!
それでは、今高騰しているように見える都内のマンションは今後もっと上がるのでしょうか。高そうに見えて実は今が買い時なのでしょうか。問題となるのは、マンションを購入するタイミングです。不動産経済研究所によると、2023年の1年間の東京23区の新築マンションの平均価格は、前の年より39.4%アップし、1億1483万円でした。また、東京23区で年間の平均価格が1億円の大台を突破するのも初めてのことでした。
平均価格を押し上げた要因として、港区などの都心部で富裕層向けの1億円以上の高額物件が多く売り出されたことや、資材費・人件費・マンション用地取得費の高騰などがあるようです。
ちなみに、バブル経済末期の1991年に付けた最高値(8667万円)を大幅に上回っていることにも驚きです。
それでは、コスト面からマンション価格の押し上げにつながっている、資材費・人件費・マンション用地取得費について着目してみましょう。
・資材費
資材費の高騰については、そもそも資材が不足していることに加えて、輸入材にあっては日米の金利差などを背景にした円安による大打撃があります。そのため、今後も円安の流れが続いたり、さらに加速したりすると資材費は下がらないでしょう。一方で、日本銀行がマイナス金利政策の解除を近く行うとの観測が強まっており、金利の上昇が円高を促すこともあり得ます。円高に流れが変われば、資材費が下がる可能性もあります。
・人件費
現在の賃上げの流れからも下がることはないでしょう。
・マンション用地取得費
地価自体が上昇していることに加えて、マンション用地の取得競争によってつり上がっています。まだまだ先のテーマにはなりますが、築50年以上などの築古のマンションについて、建て替えの要件が緩和されて、スムーズに建て替えが行われるようになれば、マンション用地が多く出回ることになり、結果的に下がる可能性もあるかもしれません。
これらを踏まえると、マンション価格が下がる可能性は、「日銀の政策修正による金利の上昇が円高を引き起こし、資材費の低下につながる」の1点だけで、しかもその影響は限定的なもののように感じます。
まとめ
住宅ローンを利用する方にとっては、住宅ローンの金利が上昇し始めた今が最後の買い時かもしれません。また、日本の不動産は割安と評価して流入している海外マネーも、円安の今が買い時となるのではないでしょうか。一方、現金で購入できる日本の富裕層は、住宅ローンの金利上昇で需要が減る流れや円高による海外マネーの需要が減る流れを期待するのもありかもしれません。
文:みちば まなぶ(ファイナンシャルプランナー)
大学卒業後、大手ハウスメーカーや不動産業者などを経て、住宅ローンを切り口に、住宅購入をはじめとしたライフプランニングを提案する1級FP技能士。