人間関係

「食事介助に1食2時間も?」数年ぶりの実家で見た老老介護の異常事態。孤立し、一家で病んで…(2ページ目)

【老老介護】数年前に高齢の母が転んで足を骨折、以来寝ついてしまった。父と兄とで面倒をみているのだが、久々に実家に帰ってみると様子がおかしい。40代女性が直面した介護の現実とは……。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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父は認知症、兄はうつ状態だった……

「父もいろいろ検査したら、やはり認知症がありました。兄は失職の余波でうつ状態だった。もうこうなるとふたりで実家に置いておくのも難しい。でもふたりは、母を施設に入れた私を恨んでいて話し合いに応じてくれない」

そこで実家にはヘルパーさんに来てもらうことにした。ケアマネが兄に病院に行くように勧めてもくれた。

「今は実家で男ふたり、なんとか生活しているようです。母は施設に入ってすぐは実家を恋しがって食事もとらなかった。体はどこも悪くないのだから今からでもリハビリすれば歩けるようになると医者に言われたのに動こうとしなかった。

医者は『生きる気力をなくしているのかもしれません』って。気力をなくしたら、体も弱っていく。なんとか元気になって、また私の自宅に遊びに来てよと励ましました。タブレットを買って母に送り、施設の人が助けてくれて母の顔を見られるようにもなった。顔を見て声を届けたら、少しずつ母に変化が訪れました」

秋には起き上がり、車いすを押してもらって外に出られるようにもなった。少しずつ歩行訓練も受け、年末には伝い歩きをしている動画が届いた。

「あのまま介護が家の中だけでおこなわれていたら、母も父も兄も全滅だったかもしれません。実家のことを兄に任せておいたのがいけなかったんでしょうね。とはいえ私にも私の家庭があるから、なかなか細かいことに気づくのは難しかった」

家にこもり、次第に孤立化していく介護

家族単位で家にこもり、外部との交流がなくなると、介護はどんどん孤立化していく。ユウコさんの場合、母の介護より看護からのリハビリのほうが大切だったのだが、そういう事実すらうまく伝わらないままに家族が内向きになり、終いには他の家族が病んでいく危険性さえある。

「本来だったら、父の認知症ももう少し早く気づけるはずだった。でも兄がうつに陥っていたから気づけなかったんでしょう」

意外なことに母には、ほとんど認知症は見られない。施設で元気になりつつある母は、タブレットでユウコさんに向かって「おとうさんは大丈夫かしら」と言っている。

「かといって母がスタスタ歩けるようにはならないから、実家に母を戻すわけにもいきません。父も家にいるのが難しくなったら施設に行くしかないでしょうね。ただ、そうなると費用の問題も出てくる。兄が働いてくれればと思いますが、それもかないそうにないですし……。頭が痛いです」

すでに親戚付き合いもほとんどないため、相談するのは公的機関だけだ。ケアマネも施設のスタッフもよくやってくれていると感謝しつつも、将来への不安は尽きない。

「両親を見ていると、自分たちの行く末も刻々と迫ってきているんだなと動揺しますね。今は目の前のことに対処していくしかありませんが……」

もうじき長女の大学受験が始まるから、私もしっかりしなくちゃと、ユウコさんは自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
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