ライフキャリア

「子育てするなら田舎か都会か」都会→石垣島へ移住した“3人の父親たち”で見る、実例3パターン

子育てをする上で田舎が良いのか?都会が良いのか?という問いは親であれば誰でも考えたことがあるはずだ。今回はあえて両方を体験させることを選んだ父親たちの3つの移住パターンを紹介しながら、ライフキャリアにおける子育てについて考える。

小寺 良二

執筆者:小寺 良二

ライフキャリアガイド

都会から石垣島に移住した3人の父親たち

都会から石垣島に移住した3人の父親たち。それぞれ移住パターンは異なる

「子どもが小さいうちは豊かな自然環境の中で子育てがしたい」という理由で、田舎に移住したいと考える子育て世代が増えている。一方で教育環境や親の収入面などで、都会に住み続けることを選ぶ家庭が多いのも現実だ。

「子育てするなら田舎か? 都会か?」という究極の2択を選択するのではなく、うまくそれぞれの良さをバランスよく享受することはできないのだろうか。

筆者自身は2021年に当時住んでいた埼玉県さいたま市から沖縄県にある石垣島に家族で移住した。まさに都会よりも田舎の子育て環境を選ぶ決断をした立場ではあるが、移住にはいくつかのパターンがあり、それによってどちらかを選ぶのではなく両方の良いところを得ようとすることも可能だと知った。

今回はあえて両方を体験させることを選んだ父親たちの3つの移住パターンを紹介しながら、ライフキャリアにおける子育てについて考える。

パターン(1)家族全員で丸ごと移住

まずは、家族全員で移住先に引っ越すパターンである。筆者もこれを選んだ。大変だったのは「子どもの転校」「住居の引越し」そして「仕事」である。

移住当時は長女が小学校5年生、次女が2年生、三女が年長だったので、やはり小学生の長女と次女は転校への不安があった。引越しは沖縄の離島の場合、家具を運ぶのは大変なコストがかかるので、ほとんどはリサイクルショップで売るか古いものは破棄し、島に来てから購入した。

仕事は移住初期のコロナ禍の間はオンライン中心で研修や授業ができた。今は対面に戻りつつあるので、家族を島に残して私だけ名古屋や東京に出張するという生活を送っている。

家族単位での移住は負荷は高いが、家族で移住先での生活を楽しめるというメリットはある。石垣島移住の1番の理由となった、島で唯一の私立小学校に3人を通わせることが出来たのは親としてもうれしかった。

今は年に1~2回だけ妻の実家の名古屋に帰省するのが、子どもたちにとっての都会体験である。島の豊かな自然環境にはもう慣れてしまっているので、今はもう海で遊びたいと言わなくなってしまったのは少々残念だが、逆に年に1~2回でも都会に出ることで島の魅力を再認識してほしい。

パターン(2)母と娘は都会に残り、父と息子だけ移住

長女の同級生の父親であるSさんは大手広告代理店を退職後に、妻と娘は東京に残したまま、息子と2人で石垣島に移住した「父子移住」という珍しいケースである。

元々仕事で石垣島に行き来していたらしく、当時小学校5年生の息子には自然豊かな環境で大好きなサッカーをやらせたい、しかし長女は私立中学に入ったばかりなので転校は難しいということで息子と2人での移住を決断したようだ。

東京ではずっと仕事で忙しく、あまり息子との時間もとれていなかったようだが、移住後は息子と二人三脚の生活で、お弁当づくりなども頑張っていた。時々奥さんが石垣島にも来ていたが、ほとんどが父と息子で協力し合い大変ながらも楽しそうに生活をしていた。

子育て環境は子どもの年齢やライフステージによってもニーズは異なる。家族単位での移住ではなく、あえて期間限定でそれぞれ別々の環境を選ぶという選択もある。

パターン(3)家族は都会に残り、父だけ移住

知人の紹介で石垣島で知り合ったNさんは、大手製薬会社に勤める会社員。アメリカに家族で海外赴任していたが、コロナ禍で帰国。首都圏に家族と共に住みながら、東京のオフィスで仕事をしていたが、筆者と同じ時期の2021年に新規事業の責任者として石垣島への転勤が決まった。

アメリカでの駐在で子どもたちにも海外体験をさせることが出来たので、石垣島にも家族で移住をと当初は考えていたようだが、生活環境の変化が続いてしまうので子どもと妻は都会に残り、父だけ石垣島に住む「単身赴任移住」というパターンを選んだ。

家族の生活の拠点は首都圏の自宅にあるので、子どもも習い事など都会の教育機会を生かしつつ、夏休みなどまとまった時間がとれるときに父が住む石垣島に遊びに来ていた。父が住んでいることで知り合いも多く、同じ短期滞在であっても一般的な旅行者よりも密度の濃い時間を過ごせているようだった。

都会で多様な教育機会を得ながら、年に数回自然豊かな環境に触れに来るというハイブリッド型の子育て移住のスタイルだと感じた。

大切なのは子育て環境選びよりも、親自身がその環境を楽しむこと

3つの異なる移住パターンを紹介したが、それぞれ家族構成や子どもの年齢や性格も異なるので、どれが最も子育てに適しているのかという正解はない。

石垣島に移住する前に屋久島や鎌倉、軽井沢など移住者が多い地域を視察したときに気づいたことがある。それは、どの移住者も子どもがいれば「子育てに適した環境」を考えた上での移住であることは前提として共通しているのだが、加えて子ども以上にまずは親である大人がその環境を楽しんでいることだった。

子どもは親の背中を見て育つといわれているように、親がその環境への不平不満を言いながら生活していたら、都会でも田舎でも子どもにとっては「不満足な場所」になりかねない。逆にいえばどの環境であれ、その環境で得られることに目を向けてそこに価値を感じるようなスタンスで生活できれば、それが子育てには最もプラスになるような気がする。

そういった点で移住者の親の多くはその環境を楽しもう!という姿勢を持っていると感じる。都会でも田舎でも、親子でそれぞれの環境の良いところを見つけて楽しむことが大切だ。

>次ページ:「パターン(1)家族全員で丸ごと移住」の筆者の石垣島生活を写真で見る
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