教育とお金

東京都の高校授業料「実質無償化」でもタダではない!私立高の保護者負担はそれなりに重い?

東京都が、2024年4月から私立を含む高校授業料を「実質無償化」する方針を掲げて話題になりました。今までの助成制度とどこが変わるのか、保護者負担はどうなるのか、高校授業料の助成についてまとめてみました。

松浦 建二

執筆者:松浦 建二

医療保険ガイド

東京都の高校授業料実質無償化で何が変わる?

東京都の高校授業料実質無償化で何が変わるのか?

東京都が、子育て支援を充実させるために高校授業料の“実質無料化”を掲げて話題になっています。現行制度の所得制限を撤廃することで何が変わるのでしょうか。またそれに伴い、高校受験にどんな変化が起こるのでしょう。
<目次>

国の支援金制度は全国の約8割が利用

国の子育て支援策として「高等学校等就学支援金制度」があり、授業料を支援して家庭の教育費負担を軽減しています。高校等に在学する日本国内に住所のある生徒が対象で、現在全国の約8割の生徒が利用しています。

●公立学校に通う生徒
年額11万8800円(公立高校授業料相当額)助成で授業料負担は実質0円
※保護者の年収が約910万円以上は対象外

●私立学校に通う生徒
・保護者の年収が約590万円未満の場合:年額39万6000円助成
・保護者の年収が約590万円~約910万円未満の場合:年額11万8800円助成
・保護者の年収が約910万円以上の場合:対象外
 

国の制度に都道府県が上乗せ助成する

この国の制度(上記)に都道府県が上乗せして助成しています。例えば東京都の場合、「私立高等学校等授業料軽減助成金」として、下記の額が助成されます。

・保護者の年収が約590万円未満の場合:年額7万9000円
・保護者の年収が約590万円~910万円未満の場合:年額35万6200円
・保護者の年収が約910万円以上の多子世帯(扶養する23歳未満の子どもが3人以上いる世帯):年額5万9400円

国と東京都の制度を合わせると、【図1】のイメージになります。
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【図1】保護者の年収目安と授業料軽減額

保護者の年収が約910万円未満なら、国と都から合わせて最大47万5000円が助成されます。なお、授業料が47万5000円以下の場合は、授業料が上限になります。
 

東京都が実施予定の「実質無償化」とは?

現在東京都では、国公立の授業料は国の制度で無償化し、私立は都が国の制度に上乗せすることで、授業料平均に合わせて47万5000円まで助成していますが、年収約910万円以上の世帯は、多子世帯を除いて対象外になっています。

そこへ小池都知事の所信表明で、記者会見でも所得制限撤廃へ向けたコメントがありました。

「都として先行して、特に大きな負担となっている教育費、とりわけ、高校授業料の実質無償化や学校給食費の負担軽減に大胆に踏み出し、スピード感を持って子育て世帯を全力でサポートしてまいります」
令和5年第四回都議会定例会 知事所信表明

現状、国が所得制限を撤廃する予定はないので、年収約910万円以上の世帯に対しては、おそらく都独自で47万5000円まで助成することになるのでしょう。
 

授業料を無償化しても保護者負担はなくならない

高校の授業料を実質無償化しても、タダで私立高校へ通学できるわけではありません。

>私立校の学費はこんなに違う!

東京都「令和6年度東京都内私立高等学校(全日制)の学費の状況について」によると、都内私立高校(全日制)の令和6年度の初年度納付金(平均額)は97万1469円で、前年度から1万4551円増加しています。

そのうち授業料(平均額)は48万9343円なので、半分は授業料以外の費用になります。助成金は47万5000円が上限なので、授業料はほぼ無償化といえますが、残りの約50万円は各自で負担しなければなりません。

高校2年生以降は入学金が不要なので負担はさらに軽くなりますが、細かな費用負担は結構あります。以前の記事『私立中学に通うとかかる、意外なお金』で私立中学の場合にかかる費用を取り上げていますが、私立の高校でも似たような費用がかかるでしょう。

私立で授業料を47万5000円まで助成してもらっても、国公立と比べたらまだまだ保護者の負担は大きいですが、私立の中学校や小学校と比べたら負担はかなり軽減されています。
 

今後は私立校へ進学者が増える!?

高校から入学できない私立校も多い

私立校には、高校から入学できない中高一貫校も多い(画像は攻玉社中学校・高等学校)

授業料の助成によって国公立と私立の差が大きく縮まったので、高額な費用負担から私立回避を考えていた人たちの一部は、私立への進学も選択肢に入れるようになってきているでしょう。

来年度、都が所得制限を撤廃したら私立進学を選ぶ人はさらに増えそうですが、もともと私立を選ぶ人は富裕層が多いため、助成に所得制限があることを理由に私立進学を諦めていたとは考えにくいです。負担軽減を喜ぶ保護者は多いでしょうが、これによって私立進学者が激増することはないでしょう。

また、都内では多くの私立校が中高一貫化しており高校から入学できないので、多くの選択肢から進学先を選ぶなら中学受験をした方が選びやすいです。高校の授業料等の負担を軽減できても、私立中学校の負担はほとんど軽減されていないので、高校の授業料が実質無償化されてもそれほどの変化はないでしょう。

>こんなに違う!学費の高い学校、低い学校

助成は税金であることを理解する

高校の授業料の助成は、子育てをしていない人も含めたみんなの税金が使われています。助成を当たり前と思わず、感謝の気持ちをもって学んでほしいものです。

また、授業料を助成してもらうには必ず申請が必要であり、制度は国と都道府県に分かれているので、申請も国と都道府県の両方にすることを覚えておきましょう。

※国の助成制度詳細は文部科学省「高等学校等就学支援金制度」等で、都の助成制度詳細は東京都「私学財団の私立高等学校等授業料軽減助成金事業」等で確認してください。
 
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