教師が尊敬された時代からの変化
しかも、最近の学校事情はそうそう穏やかではない。校内暴力、いじめ、保護者によるパワハラなどの問題は韓国でも深刻で、それらはしばしばニュースとして取り上げられ話題となる。対応に追われる教職員の過酷な現場の様子を報道するものもある。2023年7月には保護者からの苦情に悩まされていたある教師の自死をきっかけに、全国の教師らによる大規模集会が開かれた。教師らが一丸となり、政府に対し、教育上教師が学生・生徒に対して持つ権力である「教権」の保護対策を求めた結果、9月には「小・中等教育法」や「教育基本法」、「教員地位法」などの改正案が国会で可決されるに至った。これは、韓国中を揺さぶった大きな事件だった。
また先日、校内で女子学生が教師と激しく言い争う映像が拡散され、女子学生の教師に対する態度の高圧ぶりに驚いたネット民の間で議論になったりもした。生徒が教師を小バカにする様子がおさめられた類似の映像は、これまでも問題視されたものがいくつかあり、たびたび“教権失墜”という言葉とともに話題になってきた。
韓国は「先生の日」なるものもあるほど、教師は尊敬されるべき人物であり、社会的地位も高かった。しかし、教師が尊敬の対象だった時代はとうに過ぎた。2010年に学生人権条例が制定され、体罰、行き過ぎた頭髪や服装の規制などが禁止された。この頃から急速に教権が弱まったと専門家は言う。子どもの数が減少すると共に、我が子に対する教師の指導の在り方を厳しく監視する保護者も増えた。また、学校の授業より、むしろ塾の時間を重視する保護者、学生が急増したことも要因のひとつに挙げられそうだ。
それでも人気な職業
それにしても、教師が1位に選ばれるからには、クラスに何人も「将来の夢は教師!」という子がいるわけだ。ランキングに結果として出ていてもまだ納得できない筆者、往生際悪く、知り合いの高校生に尋ねてみた。周りの友達で将来「先生」になりたいっていう子いる?と。すると「たくさんいる」とのこと。進路指導の授業で、将来の夢に関するアンケートを行った際、クラスの約4分の1ほどが「教師」と書いたそうだ。そうなのか……。今どきの学校現場の諸事情を思うと、そんなにたくさんの子どもが教職に就きたいなんておかしい……などと考えてしまうのは大人だけなのかもしれない。そして、それでも教師になりたいと思う子どもたちが多いのは、学校教育の現場にまだまだ明るい未来が待っているのかもしれないと、ふと思った。
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