Q. NISAを使うことのデメリットはないのでしょうか?
「新NISAは、調べてみると良い点ばかりが書かれていますが、そもそもNISAを使うことのデメリットはないのか不安に思う。物事にはいい面、悪い面、両方あると思うので、デメリットについても教えてください」(40歳・女性)
NISAのデメリットって?
A. NISAを使ってみて感じたデメリットは3つあります
投資のうまい人ほど「デメリットはないか?」「落とし穴はないか?」「ウラがあるのではないか?」と、リスクを避けようとするものです。質問者さまは、とてもよい着眼点をお持ちだと思います。ここでは「NISAのデメリット」に絞って書きます(投資全般のデメリット……たとえば、損をするリスクがある、などの話は割愛します)。
筆者自身、すでにNISAを5年利用しています。利用する中で「NISA、ここがダメだな」と感じた点は以下の3点でした。
デメリット1:「損益通算・損失繰越できない」という欠点
デメリット2:「ほぼリスク商品しか選べない」という欠点
デメリット3:「そもそも1年以上持てる個別株は少ない」という欠点
デメリット1:「損益通算・損失繰越できない」という欠点
1つ目は「損益通算・損失繰越できない」ことです。損益通算というのは「同じ年に確定した利益と損失を合算して、税金の支払いを減らす」ことです。
株式投資では儲けたお金の「約2割」の税金がかかります。たとえば、100万円の利益を確定したら約20万円の税金がかかります。
通常、株式投資などでは損益通算ができます。
2023年に「100万円の利益」と「50万円の損失」を確定した場合は、利益と損失を合算して「あわせて50万円の利益が確定した(100万円-50万円)」ことになります。これが損益通算です。
損益通算した場合、2023年に確定した利益は50万円なので、税金は約10万円で済みます。
しかし、たとえば「NISA以外で100万円の利益」を確定して「NISAで50万円の損失」を確定した場合は、確定した利益と損失を合算することができません。
損益通算できないため、2023年に確定した課税利益は100万円と扱われ、税金も約20万円とられてしまいます。
損失繰越というのは「過去3年間に確定した損失と利益を合算して、税金の支払いを減らす」ことです。
通常、株式投資などでは損失繰越ができます。
たとえば、2020年に「100万円の損失」を確定した場合は、この損失を2021~2023年の3年間に繰り越すことができます。
2020年に「100万円の損失確定」
2021年に「50万円の利益確定」
2022年に「30万円の利益確定」
2023年に「20万円の利益確定」
という場合は、2021~2023年に確定した「100万円」の利益は、すべて2020年に確定した損失(100万円)と合算して「あわせてトントン(100万円-100万円)」と計算できます。これが損失繰越です。
損失繰越した場合、2021年~2023年の課税利益はチャラなので、税金は払わずに済みます。
しかし、たとえば「2020年にNISAで100万円の損失」を出して「2021~2023年にNISA以外で100万円の利益」を出した場合は、損失繰越ができません。
損失繰越できないため、2021~2023年の課税利益は100万円と扱われ、税金も約20万円とられてしまいます。
つまり、「NISA口座内で儲かれば得だけれど、損をするとかえって傷が膨らむ可能性がある」ということです。
よって、NISAで投資をするときには「投機性の高い投資商品」……つまり「割高な投資商品」や「質の劣った投資商品」「運の影響が大きい投資商品」などは、極力避けたほうがよいでしょう。
デメリット2:「ほぼリスク商品しか選べない」という欠点
もう1つの欠点は「ほぼリスク商品しか選べない」ことです。新しいNISAの投資対象は、主に日本株や外国株そして、リスク資産を含むバランス型ファンドばかりです。日本国債のように「為替リスクも減配リスクもない」低リスクな投資先はほぼありません。
これにはやむを得ない事情もあります。たとえば、今の個人向け国債(変動10年)の利回りは年0.5%ぽっちしかありません。この利益が「非課税」にされたところで、雀の涙なので、使う意味がありません。
そのうち金利が上がったら買えるようになるのでしょうが、それまでは「為替リスクや減配リスクを取りたくない人」という人には、不向きと言えます。
つまり、「リスクを取れる人にとってNISAは魅力的だけれど、リスクを取れない人にとっては今のところほとんど恩恵がない」ということです。
今のところ、非リスク資産を蓄えたい場合は、NISAよりも個人型確定拠出年金(iDeCo)のほうが便利だと思います。iDeCoであれば、リスク商品を買わないでも所得税を繰り延べることが可能です(その代わり、iDeCoでは「原則60歳まで投資資金を引き出せない」という、別の制約があります)。
デメリット3:「そもそも1年以上持てる個別株は少ない」という欠点
最後に、成長投資枠についても触れておきましょう。新しいNISAには「いちど株を売ると、翌年まで非課税枠を再利用できない」という制約があります。つまり、「1年以上、保有できる個別株を買う」ことが前提なのです。
しかし、筆者の経験上「1年以上持てる個別株」は少ないです。
上場企業は3カ月に1回「四半期決算」を出します。決算は会社が出す通知表みたいなものです。
決算が良い会社は優等生で、見守っているだけで勝手に成長していきます。しかし、上場企業の半分くらいは問題児で「去年より儲かりませんでした!」という残念な結果を出します。
四半期決算は年に4回あり、4回すべてで好決算を出す会社は少ないです。景気が良いときは平気かもしれませんが、そうでもないときには2分の1~3分の2くらいは「おいおい、大丈夫か?」と心配になる決算を出すでしょう。
決算がビミョーな株は、損を確定させてでも「売ったほうが良い」ことがよくあります。
しかし、NISAを使っていると「でも、買ってからまだ3カ月しか経っていないのにな……非課税枠がもったいないな……」という雑念が出て、なかなか売るべき株を売れないのです(筆者がそうで、損切りが遅れて苦い思いをしました)。
こういう「中途半端な便利さ」が、正直ビミョーだと感じます。
結局、成長投資枠も「つみたて投資枠と同じ投資信託を買えば良いのでは?」と感じてしまいます。
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以上が、筆者が実際に使ってみて感じた「NISAのデメリット」です。
ここまで書いたとおり、NISAにも弱点があります。だから、なるべくその弱点が際立たないように「デメリットが出にくい」形で投資したいものです。