亀山早苗の恋愛コラム

独り暮らしの70代義母がつぶやいた「恋しているの」。だけど「嫌悪感が拭えない」と泣く理由(2ページ目)

夫と死別した後、生活をエンジョイしている70代の義母。しかしある日、おばあちゃん子の次男が義母の家に立ち寄ったら「どうも様子がおかしい」というのだ。急に心配になり、義母の様子を見に行くと……。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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恋してるとつぶやいた義母

ユキさんが玄関のチャイムを鳴らすと、義母が出てきた。

「でも元気がないんですよ。昨夜、カップケーキを焼いたから食べてと出しても、いつもならすごく喜んでくれるのに、ありがとうと気のない返事。次男が心配してたけど、具合が悪いのと尋ねると、義母は目にいっぱい涙をためて『ユキさん、私ね、恋してるの』とつぶやいたんです。私に言っているというより自分に確認しながら、その言葉を口にしたという感じでした」

義母の突然の告白と、それを言ったときの義母の妙な色気に圧倒されたとユキさんは言う。いくつになっても恋をするのはいけないことではないが、現実的にどこの誰とそういう関係になっているのかが気になった。

「少しずつ聞き出したところによると、相手は地域のサークルで知り合った1つ年上の男性で既婚者なんですよ。義母は奥さんの顔も知ってるそう。でも彼と義母は気持ちを確かめあったし、ホテルにも行ったと。でも苦しい、自分がしていることに嫌悪感が拭えないと義母は泣き出した。恋する心情っていくつになっても変わらないんだなあと、私は妙なところで感動していました」

どうしたらいいのと言われても、ユキさんにも答えが見つからない。もめごとにならないようにするためにはすぐに別れたほうがいいに決まっているが、恋する気持ちを自分が止めてしまうのもせつなかった。

「とにかく相手の奥さんに知られないようにするしかない。多くの場合、夫の携帯電話などからバレるから、その危機管理は徹底してくださいと、まるで不倫のアドバイザーみたいに事細かに注意しました。義母はいちいちメモをとりながら一生懸命聞いてた」

義母は恋に酔っているだけ?

「息子には絶対秘密にして」と頼まれたため、ユキさんは夫には話していない。それ以降、ユキさんは義母と頻繁にメッセージを交わし、ふたりの恋の行方を見守っている。

「義母は『彼に会ってほしい』というのですが、私は義母の恋に全面的に賛成しているわけでもないんですよね。でも反対だといえば義母を追いつめることにもなる。『彼に会うのはいいけど、とにかくお義母さん、恋に浮かれずに冷静になってね、これはみんなが祝福してくれる恋じゃないから』と正直に言いました。『そうよね、非難される恋なのよね』と殊勝に言うんだけど、なんだかそんな恋に酔ってる感じもする」

ユキさんは義父母は仲がいいという印象をもっていたが、夫によれば自分が小さいころはよく激しい夫婦げんかをしていたそうだ。年齢を経て穏やかな関係に変わっていったのだろう。なにより見合いで結婚したというから、義母にとっては初めての恋なのかもしれない。

「先日も、彼のことを思うと胸が苦しくなるのと義母が幸せそうに言うんです。この幸せが、妻バレで壊れないように、すんなり友だちに戻るなどの穏やかな着地点が見つかりますようにと祈らずにはいられません」

義母の恋を見守るユキさんは、毎日ハラハラしているそうだ。
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