「個人向け国債と株、どっちを買ったらいいか迷っています。どっちがよいでしょうか?」
今回は、この質問にお答えします。
個人向け国債と株、どっちを買ったらいいか迷っています
(この記事は2023年10月10日時点の日本の経済状況を前提として書きました。また、投資判断は個々人のリスク許容度や考え方によって十人十色です。正しい投資判断は状況や人によって変わる点をご了承ください)筆者の答えは「私なら株を選ぶ」です。
大きな理由は3つ。
第一に、今の日本はインフレが定着しつつあるからです。
インフレは物価上昇のことで「見えない税金」とも呼ばれています。今の日本のインフレ率は「年3%」くらいで、年3%くらいのペースで物価が上がっています。
このくらいのインフレは「マイルドインフレ」と呼ばれていて、景気にはプラスに働くだろうと思います。
第二に、今の日本の長期金利はインフレに負けています。
2023年10月10日時点、日本銀行は日本国債の10年金利の上限を「1%」と定めています。これからすこしずつ上がっていくと思いますが、少なくとも今の状況だと「国債を買って金利を受け取っても、それよりも早いペースで物価が上がっていく」という厳しい状況です。
たとえば、仮に個人向け国債を買って年1%の金利を受け取れたとします(注:記事執筆時点では、年1%も受け取れません)。
100万円分の個人向け国債を買うと、1年で1万円の利子がつきます。来年には101万円です。しかし、来年の今ごろには、物価がさらに3%くらい上がっていて、100万円のものが103万円になっているでしょう。
そう考えると、個人向け国債は「タンス預金」と比べるとマシではあるものの、物価の上昇には勝てません。インフレとともにジリジリと資産が目減りしていく「幸先の悪い投資先」に見えます。
第三に、今の日本株は適正水準です。
2023年10月10日時点、東証株価指数(TOPIX)の配当利回りは2%くらいです。これは、個人向け国債の倍以上の利回りです。
配当利回り2%というのは、ここ20年くらいの日本株の歴史を見ると「可もなく不可もなく」という水準です。
「それでも、インフレ率よりも配当利回りのほうが低い」と言われたらそうなのですが、日本企業は配当と同額以上に事業再投資(内部留保)しています。内部留保と配当を合わせた株式の利回りを「益回り」というのですが、TOPIXの益回りは6%くらいで、こっちはインフレ率を上回っています。
経済が成長する、もしくは、増配することがあればこの配当は「これから増えていきそうだ」とも期待できますから、そんなに悪くない投資先だと思います。
また、投資対象を「個別株」にまで広げると、日本企業の中には、配当利回りが4%を超える会社もあります。こういう会社に投資すれば、インフレを上回る収入を稼ぐこともできそうです。
まとめ
要点をまとめると、◯筆者ならば「個人向け国債よりも日本株を選ぶ」
◯個人向け国債は「タンス預金よりマシ」だが「インフレ負け」している
◯日本株の値付けは「可もなく不可もなく」で「国債よりはマシ」だろう
◯個別株にまで手を広げればインフレを上回る配当収入も稼げるだろう
という4点に集約できます。
消去法的な選び方ではありますが、「現金より国債のほうがマシ」「国債より株のほうがマシ」という理屈です。筆者自身も、資産の大部分を日本株に投資しています。
筆者の場合は、非課税口座(iDeCoなど)ではTOPIXに連動するETF(上場投資信託)に投資していて、それ以外では、もっと収入を受け取れそうな個別株に投資しています。
投資とは「今あるお金を使って、収入を作ること」です。個人投資家である筆者は、なるべく少ないお金で、多くの収入を作れそうな投資先を、日々、模索しています。