先日、回転ずしに行ったときに、うなぎの握りと穴子(あなご)の握りを食べてみたのですが、「似て非なるもの」だと思いました。そのときにふと、穴子を蒲焼(かばやき)にしたら、うなぎの蒲焼と区別はつくのだろうかと疑問がわき、うなぎと穴子の食べ比べをしてみることにしました。
「うなぎ」と「穴子」、基本的な違い
基本的な違いを簡単にまとめると、うなぎはウナギ目ウナギ科で、穴子に比べると脂質が豊富で、旬は冬。下顎(したあご)が出ていて、尾ひれが丸いのが特徴です。
一方、穴子はウナギ目アナゴ科で、うなぎと比べるとさっぱりとした身の質感で、旬は夏。上顎(うわあご)が出ていて、尾ひれが尖っているのが特徴です。
外見の違いとしては、黒いのが「うなぎ」、茶色く白い斑点があるのが「穴子」です。
蒲焼にして実験!「うなぎ」と「穴子」の味の違いは分かるのか?
和食料理店で修業し、現在は鰻専門店である、埼玉県北葛飾郡松伏町の「川昌本店」で料理長を務める飯塚料理長のご協力のもと、うなぎは国産ブランド鰻「和匠(わしょう)うなぎ」、穴子は国産穴子を使って、「蒲焼」をご用意いただきました。
まずは「身」の見た目を比較
調理するにあたって、うなぎは「うなぎ包丁」、穴子は「出刃包丁」を使用されていました。普段は、鰻割き(うなぎさき)に慣れているので、うなぎと骨の形状が違う穴子は、包丁の入れ方の角度が難しいとのことでした。
写真は串打ちの工程です。写真の左側、串を打っているほうが穴子で、透明感のある白さで淡白な身の質感です。一方、写真の右側がうなぎで、脂感が分かるようなテカテカとしたこってり感のある、穴子よりは少し赤みがある白い身です。
身を触った感じも、穴子のほうが脂感が少ないと感じました。
「蒸し」の段階で違いに気付く!
関東風の蒲焼への調理手順はどちらも同じで、白焼きの後、蒸し、タレ焼きの工程となります。この蒸しの工程で、香りの違いに気が付きました。うなぎは川魚の澄んだような香り、穴子はほのかな潮の香りを感じました。いよいよ実食! どっちがうなぎで、どっちが穴子?
筆者は、最終工程の重箱に盛り付ける作業は見ずに着席しましたので、どちらがうなぎで、どちらが穴子か分からないまま(重箱の中身を知らされずに)、提供されました。これまで、うなぎ好きが高じて1000軒ほどの鰻屋さんを食べ歩いてきた筆者ですが、果たしてうなぎと穴子の違いが分かるのか?
さあ、同時に蓋を開けてみます!
みなさんは、どちらがうなぎで、どちらが穴子かお分かりになりますか?
残念ながら、見た目だけではまったく分かりません……。
食べる前に蒲焼の香りをかいでみます。ここで、蒸しの工程で気が付いた若干の「潮の香り」で、写真の左側の重箱が穴子だと分かりました。食べてみると、穴子の身は柔らかいのですが、うなぎの柔らかさとは違い、淡白な感じで筋肉質でサッパリとした食感でした。
写真の右側の重箱のうなぎは、国産ブランド鰻だけあって、脂のノリは程よく、良質な脂感でトロリととろけるような食感でした。どちらもおいしくいただけて、あとはもう個人の好みの差だと思います。
食べ比べをしてみて
寿司屋で「煮穴子」として調理され、握りで食べられることが多い穴子ですが、今回のように「蒲焼」にしても、ちょっと淡白なうなぎかなという印象で、おいしくいただけました。
今回は、初めから「うなぎ」と「穴子」の比較だということは分かっていましたが、もし、何も知らされず「うな重」として穴子を出されたら、どうだったでしょう。よほどのうなぎ好きで、うなぎを食する機会が多い人には分かるかもしれませんが、年に1~2回程度の人には、うなぎと穴子の「蒲焼」の味の違いはおそらくつかないだろうと感じました。
取材協力:川昌本店(埼玉県北葛飾郡松伏町)
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